日常シーンがエロを立てるため奮闘しているのに、肝心のエロテキストが今一つ。脇役ヒロインが大健闘しているのに、肝心のメインが微妙。グラを中心に良かった部分も多く私的には楽しめましたが、この何とも残念クオリティなあたりが実にSkyFishですね。今回も良作になりきれないエロゲでした。点数はちょっと、というかかなり手心加えています。
なごむ可愛い猫キャラ達に毒気のないほんわか日常シーン。ヒロイン個性も独特ながら
不快感のない作り。システム面は例によって快適レベル。可愛い女の子とハーレム状態で
ヤりまくっちゃうエロゲの舞台としては、ほぼほぼ申し分ないクオリティです。
グラフィック関連もCabbit風な淡色基調で綺麗ですし、エログラも適度にはしたなく
おおよそ満足の良く出来でした。
なのに肝心要のエロテキストが微妙。どんな特殊エロ羞恥プレイでも、嫌がる素振りから
受け入れハマるまでが一本調子で、違うシチュを見ている気にはなれませんでした。
特に美華。野外・3P・アナル・親娘丼と多種多様なのにワンパだから、後半は飽きるし
何より興奮できません。グラは頑張ってるのにホント勿体ないなぁ、と。
ぺるしゃも終始主人公への姿勢を変えないため、やはりパターン化しています。
せめて美華に1つでも積極的な変則プレイがあれば、あるいはぺるしゃに嫌がりつつ
ハマってしまう描写があれば、それだけでアクセントになったのですが。
その点あめりは白黒でパターン分けされていたのに加え、セックスも嫌がる・喜び
受け入れる・最初嫌だけど後ハマる、と複数パターンがあり、いい具合にアクセントが
利いていました。(ただシロの初アナルだけは微妙。一気に堕ちすぎです。)
とはいえトータルで見れば、抜きゲーなのに抜き要素に難のある作品です。1シーンが
短かったり、使いまわしグラが多いのも気になりますし、もうちょい頑張ってほしかった
ところです。
◆美華
メインヒロインらしい王道展開まっしぐら。キャラ付けも真面目なややツンキャラと、
全てが鉄板で構成されたキャラ。エロシーンも含め予想外な動きを一切しない、安定した
作りといえます。
ただ私的な印象としては、悪い意味で予想外のないシナリオ。美衣也もありがちな
天才系ダメ母親ですし、せっかくの猫相棒も3人中最も出番が少ない。エロも前述の通りで、
テキストやシチュ・展開に魅力を感じません。
ゆき恵さんの原画やCGの塗りに助けられているなぁ、というのが正直な感想です。
◆ぺるしゃ
恋人3人の状態を作り上げた張本人ですが、クライマックスでの告白を見て、なるほど
そういう意図があったのかと。「はいはい主人公モテモテのハーレムスタートね」と
決め付けていただけに、シナリオ上でのギミックには完全に不意打ちを食らいました。
ぺるしゃシナリオは、ハーレム状態から始まり最終的に一人のヒロインへ収束していく
展開が見所です。
ハーレムから選択肢でヒロイン一人を選ぶのではなく、プロローグでハーレムにした
理由がエロ要素以外にしっかり用意されていて、物語がそこへ収束する過程で、結果と
してヒロインが一人だけになる、とでもいいましょうか。
商品としては当然エロのためハーレムスタートとしたのでしょうが、あたかも
物語を語る上で必要性があったかのようなプロットと見せ方は実に興味深く、
最も惹かれたシナリオでした。
ただ理由付けと決意の描写がもう一つ弱いため、そこまで魅力的なシナリオとは
成り得ませんでした。
子役時代の美華がどれだけ凄かったのか。ぺるしゃがどれだけ彼女に憧れたのか。
同級生として同じクラスになったとき、どれだけ衝撃を受けたのか。女優を辞めて
「自分」になろうとする美華を見たときの完敗感は、いかほどのものだったのか。
そして、競い合い勝つため、処女まで捨て去ったその決意は、どれだけの悲壮感を
持ったものだったのか。
この辺が物語の道中そしてクライマックスにおいて、より鮮明に表現されていれば
間違いなく面白いシナリオになっていたでしょうし、「真夏の夜の夢」の台本を
破り捨て去る描写とグラフィックに、更なる衝撃を受けることが出来たでしょう。
ですが惜しいかな、本作は抜きゲーあるいはキャラゲーであり、シナリオゲーでは
ありません。ゆえにシナリオに余計な時間を割り振れずに、中途半端な展開に終わって
しまったのかなと。
また、もう一人のメインヒロイン・あめりが全く絡んでこないのも残念。
純粋に恋い慕う美華・あめりに対し、彼女らの才覚に羨望し競い勝つために主人公篭絡を
画策するぺるしゃ、という状況を作り上げてほしかったところです。シロを使えばそれも
不可能ではなかったでしょうし。
抜きゲーで見せるにはあまりにも勿体ない筋立てですが、ハーレム開始はそれこそ
キャラゲー抜きゲーでなければ成し得ない状況です。
非常に面白い試みで、実際光るものはあった。しかし決して日の目を見ることはないで
あろう物語。それがぺるしゃシナリオです。本当に惜しい物語でした。
なおキャラ付けに関してはシロと並び、本作で最も魅力的でした。
さらりとエロ展開を提案し、時に邪悪な表情を浮かべるぺるしゃは、主人公への献身も
相まって非常に可愛らしい、素敵なライバルヒロインとして動いてくれています。
サブキャラ達もいい味を出していますね。
妹への変態発言がいちいち笑える虎寅や、ダメダメだけど家族を愛している父親。
そして、普段はまったり可愛く、時に悪い笑みを浮かべ、時にぺるしゃの騎士役を
務める相棒猫のモルシャ。みんなナイス脇役でした。
グラに関しては、髪はもうちょい丁寧に塗ってほしいなぁと。のぺっとしていて
ロールオーバーケーブルorきしめんにしか見えんです、アレ。
一方でクライマックスである、台本を破り捨てるCGは秀逸の一言。シナリオ運びも
相まって美麗な1枚になっていました。流石Cabbit、といったところでしょうか。
◆あめり
プレイ中まず目を惹いたのが日常テキスト。いかにもエロゲらしい文章に終始する
他2シナリオに対し、猫カフェを舞台にした日常物語を意識した文章で構成されています。
わかりやすいのが各エピソードの最後に添えられる締めの言葉ですね。
「ねこたま屋のみんなは、今日も元気です。」的なテキストからは、本作のほんわかな
空気が伝わってきました。変態・痴女的なエロシチュとはミスマッチですが、シナリオの
雰囲気とはいい具合に噛み合っていたかなと。
キャラの書き分けも上手くシロクロ共に十分な魅力を日出せていましたし、前述の
とおりエロ方面も大半が上手く書けています。地味ではありますが、抜きゲーとしては
十分良質かなと。退屈ではない安定感があって、とても好みのテキストでした。
シナリオはよくある二重人格モノですが、両極端な性格と外見で明確に差別化
出来ているのがポイント。引っ込み思案・人見知り・露出癖のクロと、天才・強気・
アナルスキーなシロ、それぞれがバランスよく魅力的に表現できています。
特にグラフィック関連は上々のクオリティです。
おとなしいクロにドロワーズ、活発なシロにスパッツとキャラに合わせておいて、
下着はクロにセクシー系、シロに可愛い系とギャップを持たせているのがグッドです。
猫相棒であるおはぎ・しらたまのポジも、クロは両肩に大人しく、シロは足元で
元気にぶら下がっていて、両者の特性を引き出しています。
配色の妙も見所です。例えば正座してPCに向かうシロのCG。
ピンクソックスがいい具合にワンポイントとなり可愛らしさを引き立てています。
右上で大人しくしているおはぎ・しらたまもポイントですね。小物や服装を上手く
使った上手いCGでした。
他にはシロ初エッチシーンもいいですね。下着のピンク・制服のワインレッド・
ルビーレッドの瞳・真紅のリボンが、シーツの白を下地に絶妙なコントラストを
作り出しています。実に綺麗な赤の使い方です。
とテキスト・グラの両面が良質なルートですが、それが最も生きてくるのが終盤の
2人が交互に入れ替わるシーン。
それまでに2人の個性を文と絵の両面で差別化できているため、色を変えるだけでも
どちらが主なのかがスッと頭に入ってくる。でもそれだけで満足はせずに、テキストが
声と心情を的確に使い分けることで、更に二人の差別化を計っている。
このキャラゲーシナリオゲー顔負けのキャラメイキングにはちょっと驚かされました。
あー上手く丁寧に作っているなぁ、と。
他2人に比べ地味サブヒロインで影が薄いあめりですが、その実最も出来のいいルート
です。文とグラ単体の出来もさることながら、お互いがバッチリ噛み合って魅力的な
ヒロイン像を作り上げている点が特に素晴らしい。前述の通り抜きゲーとしても比較的
よく出来たルートで、派手さこそありませんが十分名作たるクオリティです。
以上、出来の良さでいえば「あめり>ぺるしゃ>美華」の順ですね。あめりルートは
十分ハイレベルですし、ぺるしゃルートもテキストにグラにと見るべき要素はあります。
しかしメイン格である美華ルートの凡庸さと、ぺるしゃも加えた抜きゲーとしての
微妙さが長所を埋めてしまっている、何とも惜しい作品というのが正直な感想です。
抜きゲーとしては絵買いでない限りオススメできませんし、長所もそれ目的で購入を
推奨できるほどではありません。
ただOHPのあめり(白黒)を見てちょっといいかも、と思った人は購入に踏み切って
損はしないかなと。おおっぴらには推せませんが、興味を持たれた方には手空きの際に
ちょろちょろっとプレイしていただきたいエロゲです。