ブランドイメージとは裏腹にコメディ要素は薄め。可愛いヒロインとのイチャラブや脇役の魅力を堪能する純粋なキャラゲーです。ヒロイン毎のクオリティにムラも少なく安定して楽しめる良作ですが、反面ASaプロの特色は薄くなった気がします。
「コメディ要素が薄いって金髪いるじゃねーか」確かにりさはブランド旧作でいう
優由や乃希亜のポジションで、今回も大暴れしていました。でも今回、ギャグに走って
くれるのって彼女とマスターぐらいなんですよね。主人公も他ヒロインも全体的に
大人しく、キャラゲーの枠を踏み越えた笑いは見せてくれません。
例えば『アッチむいて恋』の美奈子だと変な歌にすっ呆けた外道行為。朱にしても
個別ではメタネタぶち込んで主人公とボケツッコミを交互に担当しています。
『恋愛0キロメートル』も矢崎・木ノ本両家が総出で笑いを取りにきていて、どこから
何が飛んでくるか予想がつきませんした。
しかし今回はりさとマスターぐらいで、他メンバーは美少女ゲームの枠を超えない、
一般的な範囲でしかコメディアクションを起こしません。主人公も常識レベルのボケに
ツッコむばかりで、自らネタを提供するのはごく稀です。ネタを上手く拾って貰えない
りさがちょっと可哀想ですね。京一・乃希亜のコンビネーションを知っていると尚更に。
顔芸枠が一人はしゃいでいるように見えますが、そうさせているのは周囲のキャラ。
ボケキャラだけにすべてを任せ、他ヒロインや登場人物を綺麗に書きすぎたことが
コメディとしての本作を微妙にしているように感じ取れました。
そのぶんメインヒロインは可愛さ重視で書かれていて、美少女キャラゲーとしては
良好でした。りさもここ一番では可愛らしい1枚グラを複数貰えていて、ちゃんと
ヒロインしていましたし。ASaプロらしい彩色鮮やかなグラフィックスも良いですね。
ちょっとエッチの尺が少ない気もしますが、用途にも十分足るのでは。
なので私の本作所感は「コメディ傾倒のキャラゲー」ですね。アチ恋や恋0は笑いが
メインとして差し支えなかったのですが、今回は逆ですね。ヒロインの可愛らしさを
前面に押し出す、最近のエロゲらしいエロゲとして作られています。
それに個別ルート毎に大きな格差がないのですよね。どのルートも冒険せず基本に
忠実に作られていて、旧作のようなクオリティのばらつきが少ない。展開や作風の
好みはあるでしょうが、基本的に外れ・当たりルート的なものはありません。みんな
可愛く、オチも綺麗に纏まっています(りさルートはさすがにコメディ寄りですが、
それでも恋0のような格差は感じられませんでした)。
以上からキャラゲーとしては良作と評するに十分かと思います。総じて丁寧に作られて
いて致命的な欠点もありません。ですが恋0のような面白さを期待すると物足りなさを
感じるかなと。良くも悪くも手堅く丁寧に作られた作品です。
◆本作サブキャラの扱いと、プレイヤーの捉え方
メインヒロインも食うレベルの魅力を持った紅と阿知華。「なんで攻略できないの!」
と憤った方が多数いらっしゃったことは想像に難くありません。しかし攻略できては
コンセプトが全て台無しです。間に身内を置いての恋愛模様こそが独自要素ですから
して。
しかしキャラゲーとして見ると、あれだけのサブヒロインを攻略できないのは、理由
ありとはいえ片手落ちです。加えてASaプロは、メテオに氷室屋と同じ行為を既に2度
繰り返しています。またかよ!と憤慨されるのにもまた納得がいきます。
それにコンセプトが作品の面白さに直結していたかというと、ぶっちゃけそんなことは
なかったと思います。普通のキャラゲーとして良質なため、コンセプトを無視しても
魅力が減じるとは思えませんし、逆に「ひとつ飛ばしの恋愛を楽しめた?」と問われても
YESとは答えにくい。
千乃やメグはサブのままに、紅と阿知華が分岐攻略できても(各種コストを無視すれば)
より満足度の高いエロゲになったんじゃないかなと。企画自体によほどの魅力があって
サブルートが蛇足と思える作品だったならまた別なのですけどね。そこまでの域に達する
どころか、忌憚なくいえば有っても無くてもどちらでもいいコンセプトでしたので。
ですがユーザ側としては、その上で作り手の意図を斟酌したいところです。
あれだけ作中で「サブ攻略はあかん!」と連呼するほどです。魅力的なヒロインを、
サブにおいた理由を考えてみるのも一興かと。そうすることで初めて見える良さ、
というモノもありますから。
残念ながら本作は、プレイヤーに新たな面白さを提供するまでには至っていません。
ですがその意図は明確に伝わってきますし、狙いが外れても楽しめるクオリティに
仕上がっている点は見事です。紅・阿知華を攻略対象にしなかったのは惜しいけど、
サブキャラとしてもキャラは立っていた。致命的な欠点ではないんです。
何より新たな試みを取り入れる姿勢は見事ですよね。画一的な作品が増えている中、
守りに入らず挑戦するブランド/制作陣はそれだけで貴重。次作以降に期待を
持たせてくれます。ましてや批判を食らうとわかりきっている代物でしたからね。
あのASaプロがその辺理解していなかったとも思えません。
であれば、サブキャラの扱いとコンセプトの失敗(とコメディクオリティの低下)に
言及しつつも、作品自体はキャラゲーとして好評価すべきものと私は捉えます。実際
良質でしたし、欠点改善がモアベターにはなれど現状ままでもマイナスにはならない
ので。
もちろん無理にいいとこ探しする必要はありませんし、本作を批判するなというわけ
でもありません。サブヒロイン問題は残念ではあるけれど、ないからといって作品自体の
評価は下がらないし、意図を鑑みれば納得もできる。であれば批判や低評価する必要は
ないのでは、という私の所感です。
そして自分の好み以外をすべて退けるのではなく、前向きに受け入れる姿勢を改めて
確認したという話です。どうせなら悪態つくより楽しんだ方がいいですからね。再び
意識させてくれたという点だけでも、本作をプレイした価値がありました。