エロゲの移植作品ですが、プレイ後の印象はよく出来たギャルゲー。傑出した面白さはありませんが、テンプレートに沿ってバランスよく手堅く作られています。クセの少ない無難なギャルゲーを遊びたい方に対してオススメできる作品です。
過去に縛られ、夢に向かって進み出せない主人公。
そんな主人公を応援する、元気なピンク髪メインヒロイン。
クールで主人公を邪険にする、青髪のメインヒロイン親友。
怪しい日本語を使う、金髪外国人お嬢様。
大和撫子でどこか抜けたところのある、黒髪ロングのお姉さん。
普通の人とどこか雰囲気の異なる、紫髪の不思議少女。
お調子者で関西弁を使う親友キャラ。
どこをどう見てもギャルゲーのテンプレートですね。
ゆかりも赤髪こそ珍しいものの、元気で口の悪い後輩キャラはやはりお約束。
そんな鉄板構成で作られている事こそが「星空☆ぷらねっと」の特徴です。
シナリオ構成も奇をてらうことはなく、実にオーソドックス。
過去の事故が原因で夢を失った主人公が、ヒロインとの交流を通じて立ち直り再出発
する物語です。ヒロイン側の物語も同様で、主人公を応援し続けたり、自分の好きな
ことに対して苦悩したり、三角関係に陥ったり、身分の違う恋に燃えたりと
王道展開ばかり。佳多奈シナリオはやや異色ですが、5~6人いるヒロインの中で
毛色の異なるキャラが一人いるのも、ギャルゲーではよくある構成といえます。
作品全体の作りも非常に手堅く作られていて、感動、理不尽なキャラへの怒り、
見ていて辛く悲しくなる場面、コメディパートと、喜怒哀楽の要素がバランスよく
取り揃えられています。
内容も濃すぎず薄すぎずで、プレイヤーに不快感を感じさせないレベル。
プレイ時間も20時間前後と、こちらも長すぎず短すぎず。
あえてエロゲギャルゲーのテンプレートを狙ったかのようなバランスです。
ここまで鉄板だと普通は平々凡々な作品になってしまいますが、そこは流石の山田一氏。
不快にならない程度に読み手の感情を煽り、物語に上手く引き込んでくれます。
お笑いとシリアス、情熱さと静けさといった緩急のつけ方が上手く、テキストにも無駄が
少ないので、中だるみもほとんど感じません。
また感情が一方向に流れ続けないため、長時間読み続けても疲れを感じないのも
特徴ですね。肩の力が抜け切ることなく、逆に力み続けることもなく、程よい
テンションで読ませてくれます。
と、欠点らしい欠点のない本作ですが、安定感を持つ代わりに傑出した良さもないので、
尖ったゲームを遊びたいときや、ボリュームある作品で満足感を得たい時遊ぶと、
物足りなさを感じてしまうでしょう。
癖のないオーソドックスなギャルゲーを遊びたい。大長編などを読み終えた後、
一息入れたい。後味スッキリでほんのり爽やかな感動もある本作は、そんな時に
プレイすることをオススメします。