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amaginoboruさんのスイートロビンガール -Sweet Robin Girl-の長文感想

ユーザー
amaginoboru
ゲーム
スイートロビンガール -Sweet Robin Girl-
ブランド
Chuablesoft
得点
75
参照数
415

一言コメント

ロリエロゲというよりは大人と少女達のふれあいを綴った物語で、世界名作劇場のそれに近しい感じ。優しい世界の中に大人の苦味がほんのりと含まれていて、ただの癒しゲーでは終わらない独特の妙がありました。欧州を彷彿とさせるグラフィックやBGMも良質で雰囲気ゲーとしても楽しめます。ただシステム面にやや難があり、長文前半はネタバレなしでそのあたりに触れています。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

母親が流行り病で他界し、薬の代金で多額の借金を背負い、婚約者にも逃げられた
主人公。酒に溺れ借金返済もできない怠惰な生活の中、住家を持たない4人の少女と
出会う的なお話です。喫茶店のマスターなので経営モノの側面も少々あります。

方向性としてはシナリオ・雰囲気ゲー寄りですね。欧州をモチーフとした中都市の
空気を大切に扱っています。中でも弦楽を基調としたBGM群が作品のイメージを
しっかり定着させていますね。物語の補助としても単独BGMとしても秀逸で、プレイ後も
曲だけ聴いて雰囲気に浸れるレベルの代物です。BGMにこだわりのある方にはぜひ
一聴いただきたいところ。

物語は序盤で主人公が立ち直り喫茶店再開、後半で少女たちの問題を紐解いていく
オーソドックスな組み合わせ。それぞれ大きな悩みや問題を抱えている彼ら彼女らが、
ふれあいを通じて前向きに進む様はひたすらに優しく穏やかな気持ちにしてくれます。

加えてルート毎にもう一味アクセントが用意されているのも特長かなと。単純に話が
重いものもあれば、主題こそ比較的軽くとも僅かな心の機微にほろ苦いものがあったりと
読後感は千差万別です。ただ雰囲気を重視してか話の起伏は決して大きいものではなく、
わかりやすい物語を期待される方には4ルートとも凡庸に見えるかもしれません。


なので穏やかな作品を好まれる方にオススメですね。同じく雰囲気を大事にした
『いろは』や『木漏れ日の並木道』といった作品群がお気に入りの方なら楽しめる
のではないでしょうか。穏やかで起伏が少ない物語も近しいですし。この手の作品は
存外本数が少ないのでありがたいかぎりです。

逆に派手さを好まれる方には当たり前ですがオススメできません。同じ雰囲気ゲー
でも煌びやかさのある、例えば『プリズムリズム』のようなエロゲとは傾向がかなり
異なります。絵より物語による空気の創出が重視された作品です。

あと主人公が少々ヘタレなのも人によってはひっかかるかも。事情を鑑みてなお抜けて
いる節があり、渋イケメンな見た目とかなりギャップがあるので。フィオナやエレンが
逆に年齢以上にしっかりしているのもあって、プリス以外はあまり歳の差を感じさせ
ません。その辺りにもまた独特な妙があるので、善し悪しではあるのですけどね。


そんな本作の欠点はシステム周り。ゲーム内にある用語解説「glossary」はプレイ後に
読んでください。平気でネタバレをかましてくる困ったちゃんです。名前が判明する前に
教えてきたり、酷いときは立ち絵や背景から以後の展開が連想できたりとやりたい放題。
伏線が大事な物語ではないとはいえ興を削がれることには違いありません。

あとこれは私の環境のせいかもわかりませんが、立ち絵の変更エフェクトが非常に
重い。テンポがもっさりとした印象を受けました。私の購入したのがDL版で、かつ
修正パッチが当たっていなかった(バグが顕在している)のが原因かもしれません。
他の諸感想ではそのような指摘は無いようですし、何よりエフェクトオフを選べば
解決する話ではあるのですけどね。



以下ネタバレ込みのキャラ別所感。










◆フィオナ
正体が判明した時点で予想のできた個別ルートですが、他3人が「泊まり木」から
去る流れは見事でした。シドが再びダメになっていく様も合わせて上手く惹きこめて
いたように思います。それだけに最後がありきたりだったのはちょっと残念。でも
こうするしかなかったよなーとも思えて何ともかんとも。

ただフィオナに関しては作品のバランサー的な役割もあって、その上であれだけの
お話が広げられたのだから十分かな、とも。資金援助はもちろんのこと、ヒロイン
4人のまとめ役だったり、メグルートで機転を利かせたり、エレンルートで早々に
退場したりと上手く立ち回っていましたから。メインながら脇役としていい仕事を
した娘でした。

あとフィオナに限ったことではないですが、エンディングへの選択肢がヒロイン毎に
異なるのは良いですね。最後の展開が読めず楽しむことができました。


◆メグ
ジョナサンの余計なひと言やプリスの無邪気な指摘で話の動くことが多々あり、少々
脇役を都合よく動かしすぎかなと。2人とも他ルートではそこまで空気の読めない個性
ではなかったので。特にプリスはサ○エさんのタ○ちゃんのような、いわゆる何も
知らないで振り回す正論が鼻につきました。もう少し脇役を大事にしてほしかったです。

メグ自身は可愛らしかったのですけどね。グラフィックもメグの静と動を上手く引き
出せています。レベッカへの焼きもちは我慢できたり、けれど懐中時計を見つけた時は
感情に飲まれて後悔したりと、葛藤がメグルートの見どころだったように思います。


◆プリス
共通パート終了時点ではまったく期待していなかったのですが、まさか一番渋みが
あるとは予想だにできませんでした。

お話自体はダメな父親とのよくある云々ですが、見所は間違いなくプリスの成長でしょう。
「みんなで暮らせたらいいね!」無邪気な笑顔で語っていたのに、クリスマスの一件で
無理だと実感させてしまった時の「純粋無垢な娘を汚してしまった感」たるや。憂いを
秘めた諦観の笑みしか見せないプリスが痛々しい、渋みのあるハッピーエンドでした。

ロージーの扱いも絶妙です。特に最後、あえてニアミスで終わらせるのがニクい。
シドと面向かわせるのではなく、あえてプリスに父親への感情を語らせるに止め、
未来を想像させる運びは本当に上手かった。もう1エピソード作れるのに、あえて
そのまま読み手へ渡すライターさんの器量を評価したいですね。


◆エレン
最も重い展開と大人びた性格から、フィオナ以上に歳の差を感じさせないヒロイン
でした。強気系キャラの可愛らしさが十分引き出されていたところに真島ゆずさんの
元気ボイスが見事にマッチングしていますね。非情な現実と立ち直らせるシドのカッコ
良さの塩梅も絶妙で、平均風速でいえばもっともクオリティの高いルートでした。

エロも妙に気合が入っていたような。構図によってはあばら骨の塗りわけもなされて
いましたし。ただロリ系というよりは細見貧乳ヒロインの良さって感じでしょうか。