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amaginoboruさんのカスタードクリームたい焼きの長文感想

ユーザー
amaginoboru
ゲーム
カスタードクリームたい焼き
ブランド
アクシス
得点
70
参照数
104

一言コメント

主人公の家に3人のヒロイン+αが押し掛けるキャラゲー。グラの彩色がブランド前作より劣化している点と、ラッキースケベから主人公をボコるパターンの多さは気になりましたが、それ以外は登場人物を余すことなく用いたキャラゲーとして悪くないクオリティでした。プレイヤーの目につきやすい場所ばかりにマイナス要素が噴出していなければ、世間からもう少し良い評価が貰えたんじゃないかなと。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

◆所感
エロスケでデータ数20台、平均約55点と散々な評価をされている本作ですが、
プレイした感じそこまで酷い内容ではありませんでした。本作オンリーワンの要素がなく
全体的に薄いというか起伏の少ない内容ではありますが、主人公達を仲良しグループとして
捉えたお話としては十分な内容であったと思います。

まず主人公⇔ヒロイン以外の会話が十分に盛り込まれていること。
キャラゲーは主人公とヒロインの恋愛進捗やイチャラブを書くだけではなく、彼らを取り巻く
登場人物達との関係性を表現できているかが重要です。というか主人公⇔ヒロインの
やりとりを書くだけのイチャラブゲーならぶっちゃけロープラでもいいわけで。

その点本作はヒロイン3人だけではなく、久耀やしずくといったヒロイン側の家族、
親友である秀水、先生であり謎をほのめかす東五といった脇役達との関係もしっかりと
表現できています。各ヒロインの個別においてもそれは生かされており、
わけても秀水・東五はあいら・綾華の両個別ルートで立派に役割を全うしていました。

他にも金さん、あいらパパ、綾華パパといった男性陣をしっかりと個性づけていた点も
特徴的。ただ役割を与えてテンプレートな動きをさせるのではなく、キャラを丁寧に掘り下げていて
彼らがどう思って行動していたかがしっかり伝わってくる。だからこそ主人公の道標や壁となっても
そのやりとりに自然と入れ込めるようになっていました。
(書かれすぎていてヒロイン達の掘り下げと大差がなく、そこはエロゲとしてどうかなとは思いましたがw)

そんな丁寧に表現された脇役達と主人公・ヒロインが会話を重ねていったことで、既視感のある
ストーリーも別個の新しいお話として楽しむことができました。
上辺っ面だけ見ると本当にテンプレ展開なんですけどね。しっかりと差別化されています。

また かなえの個別ルートでは久耀が、あいらの個別ルートでは しずくがサブヒロインとして
とてもいい仕事をしており、どのキャラも空気になるようなことはありません。
登場人物を総動員し、各個別ルートでも余すことなく役割を与えてシナリオを構成したからこそ、
彼らに愛着を持てたのでしょうし、また最後まで楽しめたのだと思います。

以上が本作に対する大まかな所感です。
私が本作につけた点数は平均よりかなり高めなのですが、上述の理由に加えて
おまけシナリオのTS要素が非常に良くできていたことを加味しての点数です。


◆低評価となった理由について
では何故ここまで低評価となってしまったのか。それは本作の悪いところが全て
ユーザーの目につきやすいところに集中してしまった点にあると思います。

まずグラフィックの塗りと彩色が低クオリティであること。ブランド前作『くるくるくーる』も
お世辞にも最高レベルのグラフィックではありませんが、その前作と比較してもクオリティが
下がっています。塗り自体の技術はもちろんのこと、配色も似たような色しか使っておらず、
エロゲなのに目で楽しむことができないんですよね。

制服の色がオレンジというなかなか奇抜な配色なのですが、3ヒロインの髪色が金・黒・赤と
寒色が全く用いられておらず、サブヒロインの2人が登場しないと寒色はほとんど登場しません。
この配色バランスの悪さが、萌えキャラエロゲに必須ともいえる鮮やかさを本作から
取り上げてしまっているように思います。

また和服ヒロインのかなえは肌の色が色白を通り越して土気色のような、病的な体躯に
見えてしまっています。病弱ヒロインでもないのにこれはエロシーンでちょっと使いづらい。
というか彼女、病弱どころか本作でも一二を争う武闘派なわけで、グラフィッカーの技術的に
難しかったのであれば無理に色白とする必要もなかったのではないかなと。

エロゲなわけですから見た目やエロシーンは大事なわけで、そこが微妙とあれば
低評価となるのも仕方ありません。発売当時の最先端とまではいかずとも、前作レベルの
質を担保できていたのであれば、せめて見た目だけでも評価されたのではないでしょうか。


次に序盤のラッキースケベがくどすぎた点。
ヒロインが3人居候することになって発生するラッキースケベが何度も発生し、そのたびに
久耀やしずくからお仕置きを受けてフルボッコにされるのですが、これがちょっとくどすぎます。
この手のエロゲは序盤にエロシーンを持ってこれないため、サービスとしてちょいエロシーンを
用意したのでしょうが、そのたびに同じ展開を見せられたとあればさすがに辟易します。

また(弄り込みとはいえ)ラッキースケベの制裁をするヒロイン達にもちょっともにょります。
お前らが強引に居候を始めた結果こうなったんだろうと。なのに主人公ばかり吊し上げて、
エロゲお約束展開とはいえ少しやりすぎかと。
主人公も主人公でウソをつけないという設定から誤魔化しきることができず玉虫色な
回答ばかり。こっちもこっちでちょっとイラつきます。

これの何がマズいかって、序盤で面白くない共通パートを、面白くない天丼芸で
見せられるから切られる可能性が非常に高い。シナリオ面白くないからエロだけ拾って
終わりにしよう、って思われてしまいます。学園での昼食シーンやお祭りの手伝い、
体育祭などのシーンは良くできているだけにスルーされてしまうわけです。

エロゲだから早くエロを入れないとまずい、というのも理解には及びます。
(だからヒロイン脱落式の選択肢となっているのでしょうし。)
ですがその結果、他のクオリティを下げてしまいユーザーからつまらない評価を受けてしまうのは
実に勿体ない。中盤以降はそう思わせるだけの内容であったと私は思っています。


最後に発売時のトラブルですね。
聞けばパッケージ版が発売された際、ゲームを起動するのに必要となるプロダクトコードが
パッケージ内に同梱されていなかったらしく、購入済みユーザには公式HPでコードを記載し、
未購入分は回収になったとかなんとか。

正規手段でエロゲを買ったのにプレイできないという体を張りすぎたギャグをかましてしまい、
そのインパクトがエロゲユーザーの印象として深く残ってしまったようです。
こうなると多少内容が良くても最初のインパクトでバカゲークソゲー扱いされてしまうことも
少なくありません。
(インスコするとCドライブが初期化される名作エロゲも存在しますけどw)


この3つの欠点、1つずつであればそんなに問題にならなかったと思います。
しかし本作はリリース直後に揚げ足を取られるような大チョンボをかましてしまい、
共通の序盤が面白くない&くどすぎたことでテキストは微妙と判定されてしまい、
ならエロだけ楽しもうとしたのに塗りのクオリティが低く使い物にならなかった結果、
クソゲーとしての烙印を押されてしまったのだろうなと。

しかし中盤以降も内容を読みこめば最低限以上のクオリティであることはわかりますし、
おまけシナリオの量も「こんなにあるの!?」と驚かされる数です。
エロにしても数はキャラゲーとして十分でハーレムルートも搭載、更におまけシナリオの
TSシチュは良好と、良い部分も悪い部分以上に存在します。

そこまでユーザーを引っ張ることができなかった結果、クソゲーと判定されてしまったのが
『カスタードクリームたい焼き』なのでしょう。
ですが世間の評価ほど酷い内容ではなく、良い部分はちゃんと良い部分として
楽しむことのできる作品です。

幸い今ならDL版でもワンコインで購入できます。
キャラゲーが好きで時間も十分にある方であれば、爆死覚悟で手に取るのも
悪くないのではないでしょうか。



◆TS要素について
ブランド前作『くるくるくーる』は本人の性転換を扱ったお話ですが、
本作のTS要素は主人公とヒロインの入れ替わり。心と体が~ってやつです。
ハーレムルートを見た後のおまけシナリオとして登場し、3ヒロインに各2エロずつ。
グラフィックは上述のとおりあまり期待できないのですが、テキストがとにかく
頑張っていますね。

あいら、かなえルートは心が身体や脳に引っ張られて男に旨キュンしてしまうシチュが多数。
体育時の着替えで他の女の子に欲情できなかったり、逆に主人公の体となったヒロインには
もちろん、秀水・東五に対しても胸キュンしてしまい「男なのに!」と葛藤するシーンは
素晴らしい。さすがAxisです。よくやった。

対して綾華ルートは東五のシスコン設定を上手く使ったヒロインなりすましシーンが
コメディとして面白いですね。本編で常に上手を取られ続けた東五をおちょくれるのは
爽快感もあってナイス。鉄板のトイレオナニーも綾華ルートだけですね。

他にもあいらルートであればお風呂シーン、かなえルートであれば欲情して悶々と
耐えるシーンと、3ヒロインそれぞれで独自の面白さを仕込んでいるんですよね。
只々TSエロを入れるだけでなく、要点を分散してそれぞれ楽しめるように仕込んであり、
おまけとは思えないクオリティです。こっちでも本編と同じぐらいの分量を作ってほしかったまであるw

そして3ヒロインとも最後は逆転エッチ。女の子として堕とされる主人公が実に良い。
本編所感ではキャラゲーとして楽しめると言いましたが、TSエロゲスキーであれば
本編を全部すっ飛ばしておまけシナリオだけ楽しむのもアリだと思います。
グラに難ありとはいえ、ワンコインでこの質と量ならTSエロゲとしては十分すぎますから。