「シナリオ系TS作品で勝負をしたい」という想いは伝わってくるものの、肝心のフェチ要素が皆無でエロゲーとしては見事な落第点。シナリオも閑ルートは良質ですが、夕陽ルートはクセが強すぎて万人受けするものではありません。以下、長文は主に夕陽ルートのあらすじと感想。
薬で女体化した主人公が、1年後に女として元の学校へ復学。クラスメイトの
夕陽と仲良くなるも、男時代の悪友だった巌に正体がバれてしまい「バラされ
たくなければ夕陽を自分の女にするために協力しろ」と脅迫される。
泣く泣く協力するも結局正体をバラされてしまい、夕陽から拒絶される主人公。
そんな折、1人の女性を犠牲にして男に戻れる装置を手渡され、現状に絶望した
主人公は力欲しさに、夕陽を犠牲にして男に戻る。
以上、夕陽ルートのあらすじです。
ダーク系のTS物語というには、主人公があまりにも微妙なんですよね。
ただの気弱な女の子が弱みを握られ協力させられる展開で、TS娘である必要性がない。
男に戻るために夕陽を犠牲にするのも、無力な自分に絶望し、力が欲しいから親友を
売っただけですし、性転換ネタを持ち出してまでやるシナリオではないな、と。
作り手は「性転換した自分の無力さに絶望する主人公」を書きたかったのでしょうが、
そんなネガティブ要素のみの作品は、TS主人公を自分として認識する人、ヒロインとして
認識する人のいずれも望んでいません。
アンチのベクトルで読ませたいのなら、フェチ要素を見せつつアンチ要素を
出していかないと、TSに変態チックな夢を見ている買い手の理解は得られないかと。
期待はずれの作品としか評価して貰えないと思います。
あるいはエロゲではなく、性転換を題材にした物語として特化するのも手ですね。
例えば主人公を巌に据え、TSヒロインを第三視点で見せる手法であれば、より説得力の
あるシナリオ運びができたはず。
いずれにせよ「シナリオの試みは趣深いが、読ませ方を間違えた作品」というのが
夕陽ルートへの評価です。TS要素を無くすなり、TSヒロインの見せ方を変えるなりしないと、
面白くなり得ない物語かと。
その他の部分について。
エロシーンは残念ながら両ルート共にTSの旨みはありません。夕陽の陵辱、
閑の机角オナニーと性器観察、巌・閑・主人公の3Pなどシチュこそ多数ですが、
どれもTS娘が活躍しません。ごく普通のエッチシーンです。おかずとしては
ほとんど使い物にならないでしょう。
唯一良かったのが閑ルートの主人公。いい具合に心が男女間で揺れ動いています。
加えて終盤は「気持ち悪い存在なった自分の居場所」を求める主人公の葛藤が、
なかなかに上手く表現されています。こちらは読み物としてもなかなかに面白かった
ですし、なにより主人公が可愛く書かれていました。
惜しむらくは1.5Hというプレイ時間の短さ。このノリでせめて3時間ほどもあれば、
ロープライス作品として悪くなかったのですが・・・。
以上、夕陽ルートは微妙。美味しいエロシーンも皆無。閑ルートは見所アリですが、
1.5時間にお値段2kはコスパが悪すぎと、購入はオススメできない作品です。
「フェチティッシュなシーンが無しでもいい！」という方ならアリでしょうか。
まぁそんな人がTSゲーに手を出すとは考えにくいんですけどね。