魅力的なキャラクターデザイン、最新のイラスト技術と比べても遜色がないほど美麗なイラスト、冬の舞台にマッチした優しい音楽が素晴らしい。イチャラブキャラゲーとしては最高峰の一角。しかし、とあるヒロインルートで見過ごせない展開があり、ここで評価を落とすことになった。
攻略したいキャラを選び続け告白する選択肢以外は一本道。告白出来るようになってから放置すると逆に告白されるヘタレムーブも楽しめる。
砂糖が吐けるくらいのイチャラブと主人公とヒロイン達の成長を見守るゲーム。シナリオは平凡だが、不器用で未熟な学生らしい恋愛模様を丁寧に描いている。
まず原画家のピロ水氏が素晴らしい。ライティング、色彩、デッサン、デフォルメのどれをとっても一流。立ち絵、劇中CG、エロCGの全てがハイクオリティ。コロコロと変わる可愛らしい表情とE-moteも相まって完璧。原画だけで評価するなら満点。告白シーンも魅力的だがこはるルートかまくらのCGが一番好き。
音楽は主題歌や劇伴を含め作品の雰囲気にマッチしていて良かった。良すぎて良かったしか言うことがない。OP『snow crystal』が特にお気に入り。
お楽しみシーンはアペンドも含めボリューム満点。キャスト、演技、テキスト、シチュエーション文句なし。
主人公は絶倫で量も凄いので笑ってしまうほど汁まみれになる。ぶっかけ好きには堪らないだろうが苦手な人は注意。
アナザービューというヒロイン達の独白が場面ごとに短く差し込まれ、その時々のヒロインの心情を知ることが出来る。テンポが悪いという意見もあるが個人的には評価が高い。
主人公。圧倒的善人。人生3周目くらいの思いやりと優しさの持ち主。
優しさが高じて抱え込んでしまいがちな部分もあるが逆に言うと欠点らしい欠点はこれだけ。
温厚で理路整然とした立ち居振る舞いだが、他人を傷つける相手に対しては後先考えずに行動してしまう感情的な一面もある。性への興味は男子学生さながらだが驚異的な自制心の持ち主。付き合ってからの方が鈍感という珍しいタイプ。
ヒロインは全員顔良し、主人公に勝るとも劣らぬほど性格良し。彼と彼女たちは相手を大事にするあまり抱え込んで思い悩むことはあるが、それは後ろ向きではなく常に前を向いていて、互いに悩んで想いを伝え合って成長して歩調を合わせてリードし合える関係性を築いてくれる。
こはる。エロい、可愛い。一切不満な要素がないキャラクターで共通から個別ひっくるめて一番楽しめた。
聖。デレ始めてからのギャップが魅力。誕生日プレゼントのシーンが好き。フラグが立ってからの特殊会話やアナザービューが多く最も心理描写に力が入ってるキャラクターだと感じた。他ルートで焚き付け役をしてただけあって欲望に忠実。
紗雪。ビジュアルドストライク。ある展開(後述)のおかげであまり集中してプレイできなかったが、共通から告白までと1月5日以降は良かった。高2(大人の事情的には成人)とは思えないほど初心だが淫語を操るようになる。ボボとかマラとか言い出さないかハラハラしていたが杞憂だった。
めっちゃいいな思った点はヒロイン毎に破瓜時の反応が違い、その違いがキャラの解釈にマッチしていたこと。ヒロイン全員「初めてなのにイっちゃう~」も別に嫌いじゃないけど、こういうのがたまにあると堪らないっすね。
サブキャラクターもいい人ばかりだが、紗雪ルートに登場する紗雪の父と『試練』を発端にした主人公の人格面にブレを感じた点が本当に残念だった。
紗雪の父について。
雪に埋めたり倉庫に閉じ込めたりは百歩譲っていいとして、屋根から突き落とすのは一歩間違えれば大怪我をする可能性があった。自らの手を汚さず他人にやらせているので尚更性質が悪い。神職という特殊な環境、それを継ぐ娘を並大抵の男には渡せない親心とはいえ明らかにやり過ぎである。その後の持病を騙った狂言は別に酷いことをしているわけではないが、このシーンの直後なので印象は悪い。それ以降は不快な点もなく、紗雪の言う「厳しくも非常に尊敬できる父親」という人物像に遜色のない立派な人格者として描かれるが最後まで違和感は拭えなかった。
一連の展開を知って憤慨した紗雪は父を激しく糾弾する。言いたいことは紗雪が全部言ってくれるのでプレイヤー目線ではすっきりする。氏子達は主人公に謝罪をして結果的に良好な関係になり、紗雪の父も素直に非を認めて謝罪をしたことで主人公は許してしまうのだが...。
申し訳なさそうにしているとはいえ実行する氏子達もどこかおかしくはあるがそれはさておき、彼らも巻き込まれた被害者であり、これについては主人公や紗雪が許す許さないの問題ではなく、紗雪の父が氏子達に謝罪すべき問題である。紗雪が父を糾弾するシーンはこの点についても触れているが、氏子達に対しての謝罪をする描写はない。
そこで問題になるのは、前述のような卑劣な行為に「他人を巻き込んだ事」について言及をせずに紗雪の父を許してしまうことは見方によっては氏子達を蔑ろにしているとも捉えられ、主人公の人格的に不自然な解釈が発生してしまい、間接的にその善性を損なってしまったと言わざるを得ない。心根が真っ直ぐで思いやりに溢れた善人というキャラクターであるならば、紗雪同様にこの件について言及するシーンが必要不可欠だった。
「紗雪ためならどんな試練でも乗り越えてみせます。俺は気にしてません。だけど、氏子さん達を巻き込んだことは許せません。彼らに謝ってください。」くらい言わせてくれれば、試練に一切屈せず紗雪の父を恨む事なく許し切る度量、その源泉となるヒロインへの愛情、善人という評価に恥じない清廉潔白さといったものを最大限引き出した上で気持ちよく一連の展開を丸く収めることが出来ただろう。
以上の事柄が歯に挟まって仕方がなかったので、描写がないだけで裏でちゃんと氏子達にも謝罪をしていて、主人公はそれを知っているというスーパー脳内保管をするしかなかった。
作品全体としては欠点らしい欠点はなく、ブランドデビュー作としては驚きの完成度でアマカノという作品のファンになった。舞台、キャラクター、恋愛模様は魅力に溢れていて、神社といった設定面をお飾りにせずしっかりと深掘りしていて作品に対する熱量が感じられる。それだけに前述のような僅かなテキストのディティールが惜しい作品ともいえる。紗雪ルートについては発売当時批判があったようで「今後このようなことがないようにする」という旨が公式で表明されていた。FDと続編での改善に期待したい。