ErogameScape -エロゲー批評空間-

aksakaさんのヒマワリと恋の記憶の長文感想

ユーザー
aksaka
ゲーム
ヒマワリと恋の記憶
ブランド
MORE
得点
89
参照数
1666

一言コメント

これは、あなたが忘れてしまった青春を取り戻す物語

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

体験版やって茜にビビっときた人には超おすすめ。茜のためのゲーム。
彼がこの世界を見せたかったのは、主人公だけではなく青春を忘れてしまった私たちプレイヤーではないか。あの時のあの選択は間違っていなかったか。その選択に後悔していないか。もし、二度とない青春をもう一度過ごせるとしたら。まさにテーマにぴったりの作品でした。


ここからはネタバレ満載の感想が続きます。



















始めはただの学園恋愛ものかな?と思っていましたが違いましたね。タイトルなどから察することはできますが。良いところも悪いところもたくさんありましたが、ヒロインと主人公の恋愛がひとつひとつ丁寧に書かれていました。テキストがとても良く、キャラクターの心情の変化やその情景が手に取るように思い浮かべることができました。また、主人公からヒロインへの視点の切り替えも絶妙なタイミングで行われていて、とても感情移入しやすかったです。他ルートでは選ばれなかったヒロイン達の葛藤、特に茜に関してはかなり丁寧に描かれていて心を揺さぶられました。個人的にかなりグッときた、とても好みなストーリー展開だったため点数は少々高めについてしまっていると思います。

そして、間違いなくこの作品は茜のための作品です。茜が自分の好みにドストライクだったので自分はかなり満足していますが、なかなか人によって好みが分かれそうな作品です。それでも、これぞまさに青春!と言える作品ではないでしょうか。

以下、各ルートでの感想。
攻略した順番に書いていきます。

【汐莉ルート】
本来は優の記憶には存在しなかった少女との恋愛物語。天使にとっても予想外のエラーだったようです。この造られた世界に存在してはいけない彼女は日に日に周りの人間からその存在を忘れられていきます。最後に彼女の姿は完全に無くなり、優も汐莉のこと完全に忘れてしまい、そのままエンディング。
そして、汐莉は病院の一室で目覚めます。そしてそこにはなぜか優が。何か伏線を見落としたのかもしれませんが、ここはまだ謎のままです。話の内容から察するに、この優は大学生??この世界はどのような扱いなのでしょうか。正直、汐莉ルートはあまり覚えてないので(汗)、ここのところが詳しくわかる方、教えてくださると助かります。幽霊とはいったい・・・?
学園に通えない少女の夢物語、という感じでしょうか。汐莉自体は奥手でありながら、恋に目覚めると意外と積極的で可愛らしい女の子でした。

【カナルート】
不慮の事故によって幼馴染の1人を奪われ、ギクシャクしてしまった優、隼人、カナの3人の関係を元に戻す物語。
正直このルートは微妙でした。4人の関係を描写している場面があまりに少なく、これから、というところで終わってしまいました。エピローグでHシーンを回収して最後にそれらしいセリフをつけて終了。本来は戻ることがなかった3人の関係をやり直すためのルートでしょうか。

この二人のルートは正直蛇足というか、物語の本質には迫らないためか、ストーリーも短く、あまり印象には残りませんでした。共通の早い段階で亜衣と茜に心が奪われてしまったことも大きな原因でしょう。

【亜依ルート】
ヒロインの中では唯一の、この世界の真実を知る少女(汐莉は曖昧だったようなので)。彼女は青春をやり直しに、優との恋愛をするためにこの世界に来ました。彼女もまた、クリスマスイブの夜に天使に拾われたのでしょう。本当に知っていたのか、と思うような見事な演技っぷりでした。初Hの際に彼女は泣いていましたが、優と結ばれたことによる喜びの涙、それとも茜から優を奪ってしまったことによる悲しみの涙、どっちでしょうか。真実を知ると、もう一回やり直してみたくなるルートです。また、茜との三角関係がとてもよく描かれていて、うるっときました。亜依より茜のほうが輝いているように見えるのは私だけでしょうか。

【茜ルート】
この作品の正史。優が選ぶべき正しい選択肢。茜の魅力を存分に楽しむことができたルートでした。いろいろ書こうと思っていましたが、収集がつかなくなりそうなのでやめておきます。

【TRUEルート】
世界の真実が明らかになるルート。茜ルートのその後に犯した主人公の行動が犯した過ち。その3年後のクリスマスイブに現れた怪しい自称天使。その天使が造った世界で、優が茜との想い出を思い出すまでのストーリー。その世界で亜依と付き合っていた優は、亜依の手助けもありその記憶を取り戻す。元の世界に戻れた優は、なんとなく地元へ帰ろうと、クリスマスの日に地元行きの新幹線のホームで待っていると、偶然同じく地元へ帰ろうとする茜と出会い、復縁。
と、人によってはご都合主義満載の展開だと言われるような展開ですが、結構くるものがありました。あの回想シーンは反則です。心から素直に応援できる二人でした。

前半二人の扱いや設定が曖昧だったことなどを除けば、かなり満足できる内容でした。文化祭後から卒業までの回想をもう少し多く、詳しくして、その後の生活をさらに描写していたらさらによかった。

CGに関しては文句なしです。特に立ち絵の服の皺や、髪の質感がとても良かったです。
BGMは作品の雰囲気にとてもあっていて、かなり良いです。主題歌はもちろん、他の曲もレベルが高かったです。

次に、不満点です。箇条書き
・汐莉のその後や、カナルートでの4人の過去などを詳しく書いて欲しかった。
・あまりにも誤字が多すぎる。茜ルートでの初デートでは数クリックするたびに見たような気がします。(ver1.01)結構大事なシーンでも目に余る誤字があったので、何とかしてほしかった。
・あの世界の設定が割りと杜撰。

【総評】
茜が好きな人にはかなりおすすめできるゲームではないでしょうか。プレイ後には私も立派な茜信者になりました。他のヒロインのルートでも、付き合うまでの過程がたどたどしくも微笑ましく描かれていて、まさに青春と感じました。真っ当な恋愛ものでうるっときてしまう作品は久しぶりなので、とても印象に残りました。はっきりいってしまうと、この作品には上質な伏線が散りばめられているような凝ったストーリー性(シナリオ性?)はほとんどないと思います。しかし、遠い昔に忘れてきた何かを取り戻せた気がします。たまにはこういう作品もよくなくない?いいと思います。