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akasa@さんの腐り姫 ~euthanasia~の長文感想

ユーザー
akasa@
ゲーム
腐り姫 ~euthanasia~
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
95
参照数
686

一言コメント

ライアーの大作。感想は長文感想へ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

樹里を腐らせようとし失敗した主人公と時空を超えて感情を手に入れた創られた樹里とが出逢う物語。
タイトルからも分かる通り安楽死をテーマにした作品だが、腐らせるという行為が安楽死ではない。
では安楽死や、腐らせるという行為はどういうことなのか?
問いに答える前に・・。
多世界解釈という言葉がある通り、全ての事柄に対する謎、疑問は、個が導き出した答え全てが正解なのである。
つまり私は、めてお氏、他ライターの創った世界から得た感想、いわゆる私が捉えた世界観を書いているだけに過ぎない。
しかし、ライター達の世界(物語)は絶対の中の曖昧であるため、彼等が私の世界(物語)はこうだ!と世界を断言してしまわない限り、絶対世界は曖昧なのだ。
つまりは、多世界解釈が成り立つため、私(個)が導き出した答えは私(個)にとって絶対なのである。
私の感想(答え)は他人が見ればえ~違うよと反論もあることだろう。それは世界観は見る人によって多種多様だからである。
個が導き出した答え(世界観)は個でしか理解できない。この感想は到底理解できないだろうが少しでも共感してくれたら幸いである。
さて、自分の問いに対する答えだが、腐らせる行為とは、ずばり食事の結果なのである。理由は後に。
では次の問いの安楽死とはなんなのか?その答えは樹里達が一時の幸せな幻影(歓喜、狂喜)を人に見せる所にある。
じゃあ、幻影を見せるのは食事のためなのか?それともギブアンドテイクみたいなものなのか?私の答えは前者であるのだが、それも後の、食事の問いとして答えるとして
先に、なぜ一時の幸せな幻影が安楽死につながるのか?その問いに最初の青年を例に挙げ答えるとしよう。青年は樹里(幼い娘)とSEXをする事で性的快感を得ていた。その一時の幸せな快感(幻影)の中で彼の精神、魂は肉体から別離した。
樹里達が見せる幸せな幻影というのは、人の欲望、又は願望そのものなのだと考えられる。
つまり青年は自分の欲望が叶っている最中(卑猥極まりないモノだが)肉体と別離(死んだ)していったのだ。
腐り姫では、これを(欲望の中で死ぬ事)安楽死というのだと私は考える。まぁ彼(青年)の場合腹上死なのかもしれないがw
さて、次は食事に対する答えだが、樹里達(安楽死を司るモノ)の生きる糧(食べ物)というのは人間の精神、魂なのだ。そこで食べ物の対象は人間の魂、精神、そして欲望は味。
欲望は黒い程美味しく、お腹もふくれる。つまり樹里達が一時の幸せな幻影(欲望)を人に見せるのはギブアンドテイクでは勿論なく、味を出し、食べ物(人間の精神、魂)を美味しくするためなのである。
そして、見事一人の人間を食べ終えた結果、対象の人間は腐る。
つまり、一時の幸せな幻影を見た時から「腐り」は始まっており、欲望の中で肉体が死んで(安楽死)、そして最後に肉体から別離した精神、魂が樹里達に食べられ腐るのだ。
物語中では「腐り」を赤い雪で表現されているがこれはただの演出みたいなモノだろう。
残る問い、樹里はなぜ青年だけを食べたのだろう?そう確かにあの場面には青年の他に禁忌を侵そうとした年輩者もいた。
彼はなぜ食べられなかったのだろうか?その時樹里はお腹がいっぱいだったのだろうか?
私は樹里には感情が芽生えていたのだと考えている。人を無闇に食べてはいけないという気持ちがあったのだろう。
そして、その他にもう一つ考えられる答えは一定量以上の欲望でないと精神、魂を食べる事ができないという事だ。
つまりは、青年の欲望は一定量以上であったが、年輩者の欲望は一定量以下だったと推測される。この考え(答え)の場合、物語中で樹里が言った事にも納得できる。
そして最後の問いとして主人公を取り巻く彼女達になぜ手を出したのか?に答えると。
まず最初に、主人公五樹に関してだけは樹里は食事のためだけに行為に及んだのではない。
1に、樹里を創った五樹が自分(樹里)に気づかない事に対しての怒り、2に、五樹が自分以外に向ける想いへの嫉妬。
3に、これが一番の理由なのだが五樹に自分と同じモノだと気づかせる事。
つまり、彼女、樹里は樹里同様、人を殺しちゃうくらい五樹が大大大好きだったのだ。


やはり、世界を上手く書くのはライターとしての腕がいいからだと言っても、もちろん過言ではない。
天下の山田一(田中ロミオ)然り、伝奇物の奈須きのこ然り、燃えの虚淵玄然り、そして星空めてお然り。
これほど考えさせられる作品は並のライターじゃまず書けないだろう。
そんなこんなで「腐り姫」やっておいて損はないゲームだと断言しよう。