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aiko1122さんのRe:LieF ~親愛なるあなたへ~の長文感想

ユーザー
aiko1122
ゲーム
Re:LieF ~親愛なるあなたへ~
ブランド
RASK
得点
78
参照数
632

一言コメント

minoriに匹敵する演出で魅せるブランドが生まれた作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

考えられたシナリオと妥協のない演出の相乗効果により生まれた素晴らしい作品

シナリオ 48/60
キャラ   13/20
音楽・歌 08/10
CG     09/10
その他   0/0

総合評価 78/100


■シナリオ

良く練られたシナリオではあると思いますが、シナリオ単体だけで見ると諸手を挙げて絶賛できる程ではない印

そこを演出を効果的に使うことで1級品まで押し上げています
成長物語で地味なテーマ―性の点なども相まって、手法としては『minori』作品に限りなく近い感じがしました

ただ大きく違う部分として恋愛描写の扱いでしょうか、非常に薄いです
テキスト面の大半は設定の説明やシナリオ展開描写に割かれてしまっているので普通のノベル作品の様相になってしまっているのは残念ですね
ヒロインとの恋愛よりも考察系のノベルを読みたいという方にはうってつけでしょうが、エロゲーというジャンルである以上やはりこれは良くないのではないかと思います
当然ながらHシーンへの入り方も唐突でかなり雑に感じました
巷ではHシーンの少なさに不満が多いようですが、個人的にはこっちの方が問題だと思います
魅力のあるヒロインも多いのですが、これでは魅力も半減してしまいます
同様に日常シーンについてももっと惹きつける物が欲しいとこですね、終盤は面白くても中盤は中だるみが結構厳しいかなと思いました

また「日向子」√のEDのおかしさや「ミリャ」の扱いについてなど、複数ライターの弊害のようなものも随所に出ています
特に「もも」√では主人公が完全に別人になってしまっていてよろしくない
このような伏線回収系の設定が重要な考察タイプの作品では、できるだけ単独ライターで仕上げるべきとは思います


■キャラ

上述したようにヒロインとして見ると魅力面は微妙です
反面、目まぐるしくザッピング視点が多用されているので全員が主人公のように扱われていてキャラの掘り下げは割としっかりしています
ただ、その分実際の主人公の影がかなり薄くなってしまっているのは問題でしょうか
一般的な作品と違い、ヒロインではなく主人公がシナリオの鍵になってしまっている性質上仕方ないとも言えますが,,,


■音楽

主題歌や挿入歌の出来はすごく良かったと思う反面、BGMについてはとても残念な印象
クライマックスのピアノ2重奏も割と単調で期待していたほどの良さは感じませんでした


■グラフィック

この作品の肝ですね、素晴らしいかぎりです
特に背景の書き込みや演出は芸術レベル、『minori』にまったく引けを取りません
ただあの肋骨や胸骨など骨格すらも、はっきり表現する陰影の塗りはあまり好きにはなれませんでした
2次元キャラにあそこまでリアルに描きこまれるとはっきり言って気持ち悪いです


■システム

テキストウィンドウとテキストの読みづらさ、特にテキストが小さいのはどうにかしていただきたいです
イベントCGの時のテキストは割と見やすいのでずっとあの状態を維持できなかったのかなと思います


■総評

昨今では安易な中身のないお手軽萌えエロ作品で参入するような新規ブランドが多い中、妥協のないシナリオと演出を武器に、純粋にクオリティで勝負する意欲には敬意を表したい
こういう尖った作品が生まれてこそこの業界だと思いますので、ぜひ他メーカーも見習ってもう一度情熱を思い出していただきたいですね
次作もできるだけ予約購入して応援させていただきますので、不満点を解消して品質落とさず頑張って下さい




◆最後に惜しくも良作まで届かなかった要因であるキャラ評価の大幅減点について◆

本来ならキャラ評価点は16~17点はあったと思いますので、総合点は間違いなく80点を超えていたはずなのですがどうしても納得いかない事があり大きく減点してしまいました

それが「アイ」と「ユウ」の扱いについてです

そもそも「アイ」がヒロインしかもTrue扱いである必要性をまったく感じません
「ユウ」のアドバイザーとして存在がいる事は理解できますが...なぜにヒロインにしたのか理解できない
シナリオそのものも「ユウ」がメインヒロインであることを全面に押し出しているにも関わらず、なぜにこの扱いにしたのでしょうか?
そうまでしても『友達』に拘りたかったのかだろうか?なんにしてもこの1点だけはまったく納得できませんでした