今こそ、劣等なる連邦の愚民どもに正義の捌きを下す時が来た! 立てよ国民! ハイル・フィーナ!!
いいかね諸君、この物語は形こそ異なるが、宇宙世紀を描いたものなのだ。
満弦ヶ崎中央港市の丸いクレーターは、いかにも大質量物質の落下跡だが、宇宙世紀を語る上で外す事のできないオーストラリアのコロニー落着跡と非常に酷似している事は語る必要のない事だが、何より連邦政府と聞いたら思い当たるものは一つしかないハズだ!
もちろん、このゲームには巨大人型兵器など、微塵も登場していないように思えるが、おまけストーリーに隠されたヒントがある!
この中でも「玉座に君を」の中で、強襲宙艇部隊という単語に着目すると、これは所謂宇宙から惑星への降下兵の事だと推測できる。
そう、スターシップトルーパーズのことなのだ!!
このスターシップトルーパーズといえば、邦題「宇宙の戦士」であり、このSF作品に登場するパワードスーツは、巨大人型兵器による宇宙戦争を描いたアニメでも人型兵器の名称に“スーツ”という単語が残っているほど影響の濃い作品なのだ。
月の王国という設定にしても、ヒゲが主役メカの特徴となった問題作にあり、さらにはこのヒゲメカ作品での設定は、文明が後退するほどの戦争の黒歴史を経た遥かな未来の話ということで、設定の類似性はハッキリしている。
王女様、小柄なメイド、義妹、隣の幼馴染、従姉妹のお姉さんといった萌パーツで巧みに諸氏の眼を欺いているが、あえて言おう。
そんな表面的な欺きに誤魔化されているような者どもは、カスであると!
真の宇宙世紀叙事詩を読み解くことを多くの諸氏に期待したい。
と、まあ、超理論はさておき、こんなフザけた長文を書いたのは、当初、このゲームをプレイした最初の印象から、このゲーム、なんでSFベースな設定にしてある必要があるのかと首を捻ってしまう内容だったからである。
このゲームのソフトハウスは、過去の作品でもSFな設定でありながら、ほとんど投げっぱなしで設定放置な作品を出しており、この作品もまたか…。と感じた故に、SF作品に拘りのある自分としては、このくらいフザけた文章を書きたくなってしまったのだ。
だが、オールクリアした時には印象が一変していた。
気になる点は幾らかあるが、物語としては見事に纏めてあり、伏線の回収も概ね完璧で、以前の設定放置なゲームがウソのように思えるほどであった。
先にも書いたがメインヒロインは月の王国からホームステイしにきた王女様と、その御付の小柄なメイド、家事を担当する義妹に、隣の幼馴染、そして両親代わりに姉として保護者となってくれている従姉妹に、隠れキャラ的に無愛想なロリ少女という手堅い萌パーツで構成されている。
この手のゲームで良くあるパターンは、主軸となる王女のルートは非常に良くできており、他のヒロインはどうしても主軸ではない事から物語がおざなりであったり、王女様のルートよりかなり見劣りしてしまうパターンや、主軸の話ではないことから幾らかブレた印象を感じる場合が多い。
が、しかし、本作では他のヒロインのルートでも非常に良くできている。もちろん、義妹や幼馴染のルートなどは王女様のホームステイなどがなくても成立する話ではある。
それ故に最終で出現する王女のアフターストーリーをプレイするまでは、このゲームはなんでSF設定なのか疑問に感じてしまう普通(現代)な物語でしかなかったのだ。
アフターストーリーがなければ、王女様でさえ、欧州の架空の王国のお姫様にして、現代モノとしても何も不都合がないレベルである。
逆に言えばあまりにSFらしくないので、月に移住できるほど未来らしさは感じない。
確実に言える事は、王女様のルートと、他のヒロイン(特に幼馴染と義妹)のルートは軸が異なり、別々で独立しているからこそ、ブレを感じないのだろう。
それは、残念ながらそれぞれのヒロインのルートは独立しており、関連がほとんどないとも言える。
全くないわけではないが、必要が感じられるほど絡んではいないというしかない。
例えば、幼馴染や義妹のルートでも王女様のホームステイをきっかけに、主人公への秘めた想いを顕著にする気持ちになったというようなきっかけと思える関連付けが感じられればある程度お互いのルートの意味合いは出てくるのだが、王女様にせよ幼馴染にせよ義妹にせよ、秘めた想いはかなり強いはずなのだが、それぞれのルートではそんな感じは微塵も感じさせない。
いわば、そういう想いがあったなら諦め切れずに三角関係や主人公争奪戦となるハズなのだが、そういうドロドロした人間関係を描くのを避けたともいえるだろう。
さて、SF好きなヲタクはいわば設定マニアであり、細かいところが気になるタイプなのだが、御多分に漏れず自分も重箱の隅が気になるタイプなのだが、その点では色々ツッコミどころは満載である(苦笑
・地球は連邦として1つの国家に統合されたらしいが、言語や慣習は非常に日本的で、まるで日本を中心に纏まったかのよう。
まあ、百歩譲れば連邦政府でも日本州という地域の話だからと解釈できなくもないが、唯一の外国である月王国の唯一の玄関口になっているのがその日本州であるし、中央港市という地名からしても“日本州”が中央という呼び名になっていることから未来の日本は世界の中央になれるらしい(笑
・文明が後退するほど荒んだが、そこから復興したことになっているが、非常に現代の状況を忠実に復元できている。
現代に照らし合わせれば、文明の後退として、江戸時代レベルになってしまうとして、その江戸時代の文化や文明を忠実に再現できるとは思えない。
電気やガスが失われてもちょんまげや和服を再現する必要はないわけで、文化と科学技術は必ずしもイコールではないものなのだ。
・月の王国制度は未来には考えにくい制度ではないだろうか。
地球が1つの国家に統合できるほど社会制度は改革が進み、人々の意思は統一できていると考えるなら、王政・貴族階級などという著しく非民主的な制度が成立するのは不自然であろう。
もっとも、月に移住するには優秀な人材を選別して送り込んだとしたなら、優秀な人材だからこそ月の優位性を感じて地球から独立しようとする意識が生まれる可能性はあるが。
そうなるとますます宇宙の戦士というより機動戦士といった趣だが(笑
他にも細かいことを上げればキリがないが、これも本作が非常に面白かったが故に気になってしまうマニアな性分と考えていただきたい(苦笑
自分としては100点満点をあげたいとも考えた作品なのだが、満点という意識からすると、こうした些細なことでも残念ながら幾らか減点せざる得ない。
SFをジャンルとするならやはりSFらしさをもっと感じさせて欲しいという点と、各ヒロインをある程度の有機的な関連を持たせた物語であったなら、些細な点には眼をつぶり、満点を上げられたと思う。
・フィーナ
実に魅力的な王女様キャラとしてキャラが立っている。タイトルに“プリンセス”を冠したゲームは数あるが、エセ王女が多い中、非常に王女様らしさも感じられる。
物語としては前半はオーソドックスに身分違いという王女モノでのテーマだが、結果も実に上手い落とし所で決着させている。
後半は実にSFらしく、興味深く、スリルもあって少年冒険SF小説を彷彿させられた。
ぇちは回数も多く、意外に濃厚で、お風呂やドレス、学生服などバリエーションもなかなか。
特にタイトルに関係する夜明けの黎明を一緒にベッドから迎えるさまは非常に浪漫ちっくで印象的。
・穂積さやか
魅力的な優しいお姉さん。実際は従姉妹で、自身の家庭は崩壊しているらしい。それだけに家族の絆を強く意識し、大切にしたいと思っている。
主人公は彼女に子ども扱いされ、対等な恋人になりたいと背伸びするというストーリー。
最初のぇちがかなり強引で、正直にいえば減点対象になっているほどにやや無理がある。
エロシチュとして、博物館の館長室で、制服の彼女とぇちがあって悪いわけではないが、告白→キス→濃厚なキス→そのまま押し倒しという流れはやや性急過ぎて純愛とは感じにくかったのが減点対象。
他は一緒にお風呂や別離を前に忘れないように想いを込めてというのは濃厚で良好。
・朝霧麻衣
義妹だが、ルートに入らねば義妹というのも判明しないというのは中々面白い。その秘密と家族の絆がテーマで、さやかさんも大いに関わることとなる。
実の兄妹のような二人の関係が恋愛になるというタブーをテーマにしなかったのは、やはり重過ぎるテーマだからだろうか? まあ、義妹との恋愛というファンタジーをエロゲーでは定番化しているわけだから、そのテーマは不向きなのかもしれないが、やや周囲が理解力があり過ぎる気もする(笑
ぇちは私服で自宅や学生服に体操服で野外と、バリエーションはあり。
・鷹見沢菜月
隣の幼馴染というオーソドックスな定番キャラ。お約束にも自宅の窓まで隣り(笑
幼少時の約束を忘れた主人公と進学によって遠距離恋愛になってしまうという別離がテーマ。
実は幼少時の記憶を忘れたというシチュはフィーナとも重複し、別離というのはさやかとも重複している。
が、両方とも違う結末をみせており、趣の違いは中々面白い。
ぇちは学生服にウェイトレスの制服や雨でずぶ濡れになってそのまま野外でと意外にアブノーマル。
・ミア
フィーナの従者であり親しい家族のようなメイド。王女への献身と主人公への気持ちで揺れる板ばさみな心情が良く描かれている。他者に喜んでもらうのがメイドの喜びという健気さを体現しているようなキャラで、おとなしいわけでもないが控え目な一歩後ろに控える様なタイプ。
ぇちはもちろんメイド服に裸エプロンなど、中々マニアック。
・リース
正体不明なネコのような少女。無愛想で可愛い容貌の幼さがギャップになるほど言動は大人びている。孤独を常としながらその実、心の奥底では家族愛などに飢えているよう。
詳細は激しいネタバレになるので触れないでおくが、SFらしい話ではある。
ぇちは正直にいえばやや無理がある。主人公との関係も恋愛というよりは父娘のような兄妹のような家族愛が感じられるだけに、好意が行為に直結するのが強引な展開を感じさせなくもない。ミアも十分未発達なロリ体形だが、さらに激しいロリ要員なのだろう(苦笑
全体としてやはり、フィーナ姫を中心としたオムニバスというより、バラバラな短編の集まりという感じが強く、それがもう少しオムニバスっぽく各ヒロインルートをクリアする毎に背景設定が明らかになったり、物語の全体像が見えるようなゲーム的な面白さがあったなら満点にできたと思う。
また、ゲームとしては個別ルート後は一切の選択肢がなく、完全に読み物となってしまうのもゲーム好きには物足りない。
個別ルートでもバッドエンドがあってもいいので、主人公の選択をプレイヤーにも楽しませてもらえるならゲーム性としても満足できたと思う。