全然フツウじゃねーよ！
発売前のタイトルはFUTSUNO FANTASYだったが、直前に変更された。恐らく大人の事情があったのだろう。
この作品を語るにあったって語ることを避けられないのは体験版との相違である。タイトル変更とともに体験版は差し替え、その変更は本編にも影響した。誰もが知っているだろう国民的RPGからのパロネタが大量に修正になったのである。本作の売りでもあったパロ要素がごっそり削られてしまい、フツウのエロゲーに成り下がってしまったと思う物も多いだろう。
さて、肝心の本編であるが、フツウのパロとキャラ萌えだけのエロゲーを期待してプレイする多くの人を裏切る作品であるといえるだろう。まず、とにかく話の盛り上がりが多い。一つ一つの物語シナリオを攻略していくというRPGにありがちな盛り上がりが話のテンポと盛り上がりを常に維持する。そして、話の途中で何度も、物語の核心に触れようとし、シナリオを執着させるのではないかと思わせる部分がやってくる。「ここからクライマックスか！」と思わせて置きながら、そうならない場所が何度もあるため、何度も興奮を味わえると言えるだろう。
次に感じることは「メタ要素への言及」である。登場人物自体が、物語の世界そのものへと干渉しようとする。それはRPGをプレイするプレイヤーが何度も感じるであるだろう「これは現実には起きない」という感覚をキャラクターにも持たせたものである。この感覚を持ったキャラクターは、世界そのものへと干渉を試み、物語そのものの壮大さを演出し、さらにタイトルにある「フツウノファンタジー」とは何か？をプレイヤーに説明させるものである。
以上のように、非常に読み応えのあるシナリオをベースに、ギャグを大量に織り交ぜた作品である。また、CatSystem2の強みを最大限に活かしてRPGのような戦闘のインターフェイスをデザインしたのも本作の面白いところである。しかし残念ながら、この戦闘のインターフェイスは物語の進行に必要なフラグではなく、スクリプト上の選択肢として存在していることに、物足りなさを感じるものも多いかもしれない。
シナリオは基本的に一本道であるが、それなりのボリュームがあるため、十分に楽しめるとおもわれる。またエロシーンに関しては、後から回収するのが手間（シナリオは基本的に同じなため）ではあるが、十分なクオリティとボリュームで提供されていると評価できるだろう。