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adiemuseaさんのサフィズムの舷窓 ~an epic~の長文感想

ユーザー
adiemusea
ゲーム
サフィズムの舷窓 ~an epic~
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
90
参照数
1411

一言コメント

推理ゲーとしては60点。だが百合ゲーとしては100点。女の子どうしの愛を真剣に描いた傑作。百合作品だと敬遠してる人もぜひ!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

最近はアニメでも漫画でも作品の中でいわゆる『百合要素』が登場することが多く、人気を博しているが、
純粋な『百合作品』についてはまだまだ偏見と忌避が拭えずにいるように思う。
エロゲでもそういった作品が出てこないのがなによりの証拠。
今作はその数少ない百合ゲーの中でもトップクラスの名作。


さて、このゲームは推理ゲーたる「本編」とオマケたる「幻想編」の2つに分かれています。
なので負けじと(?)感想も分けていきましょう。

■本編
「耽美推理アドベンチャー」と銘打ってありますが、推理ゲーとしては出来が良いとは言えません。
そもそも主人公でなくパートナーのかなえさんが勝手に推理してくれるので推理ゲーという感じがしないw

ソヨン√はまず犯人がすぐ分かってしまう。
ソヨン√を担当したライターは星空めてお(らしい)ですがこれに関しては出来がよろしくない。
アイーシャ√はとにかくヒロインに魅力を感じない。
一番気に入らないシナリオですが、推理ものとしての出来は一番ましかも。
アルマ√はエンディング後の後始末に納得がいかない部分もあるが、
ヒロインの成長を上手く描き、このシナリオの裏ヒロインたる鼎さんのエピソードも良い味を出していました。
本編では最も出来が良いシナリオではないでしょうか。


ちょこっと上にも書きましたが、このゲーム「メインヒロイン3人が魅力に欠ける」のです。
いや、ちょっと語弊が。「サブキャラに存在感を食われてる」と言った方が正しいかもしれません。
アイーシャは空気そのもの。幻想編でそれを散々ネタにされてましたw
ソヨンはいまいちヒロインとしては好きになれず。
アルマも幻想編ではニコルなど他キャラとのからみもあって良いキャラになってるのですが本編では鼎さんにスポットが当たりすぎて……。
個性的なサブキャラの面々の影に隠れちゃってます。

そんなこんなで本編が終わった段階では「うーん、70点くらいかな」と思っていたのです……。

が!!


■幻想編
このおまけシナリオ群にて評価が一変。
推理ものという垣根が取っ払われキャラ同士のからみが多くなると、真価を発揮し始める。
どこかで「このゲーム、本編はキャラ紹介にすぎない。おまけシナリオこそが真の本編」
と言ってる人がいましたが実に正鵠を射ていると思うw

お気に入りシナリオは、杏里がちっちゃくなる「ひと夏の蜃気楼」。とにかくちび杏里が可愛い。
カジノ対決が見ものの「頑張れニコル!」。アルマがすごくいいキャラに。
アンシャーリーの可愛さ株がストップ高の「ラズベリー水」。
あとは、鼎さんの卒業式「晩春賦」と海賊の出てくる「瓶の中の乙女達」。本当にメアリが男の娘なら(ry
最後のシナリオが終わったときには思わず溜息が口をついて出た。
これでサフィズム世界ともお別れか……。
この辛さは名作特有のものだ。

■キャラクター

・杏里
主人公。
浮気しまくりだけど「みんなを一人一人真剣に愛している」という言葉に嘘はない。
……だって3Pやハーレムないしw

過去話でのお姉さんとの初体験がものすごくエロかった。
あと“ちび杏里”の可愛さは犯罪級。
でもどうして日本育ちなのに口調がフランスかぶれなのか。

・鼎さん
杏里の親友。だがヒロインではない。
鼎さん自身は強く杏里を想ってるが一方通行なのが辛いとこ。
おまけでは「そんなに年下がええのんか!」と茶化されていましたが、
そんな理由でないことは本編が終わった人ならば説明不要のはず。
妹の「縁」が可愛すぎるので縁メインでシナリオ作ってくれないかなぁ……。

・ソヨン
メインヒロインその1。
イマイチ覚えていない。
こういう年下元気娘はヒロインじゃなく脇役としての方が好き。
幻想編ではサブキャラとして良い味出してたし。

・アイーシャ
メインヒロインその2。
でも空気(笑
本編で犯人だわ、幻想編でもイロモノ扱いされるわ、パーティに参加出来ないわと散々な扱いw
あまりの不遇さに後半へ行くごとに自虐ネタがw
褐色娘は好きなので惜しいなぁ。

・アルマ
メインヒロインその3
本編では最後以外見せ場はなかったものの幻想編ではその魅力が開花。
特に「頑張れニコル!」での活躍はよかった。
メインのなかでは一番好きです。

・クローエ
子猫ちゃんその1。
オトナのふいんきを醸しだす女学生。
しかしその実態はお兄様大好きの淫乱っ子だったのです(ジャーン
良いキャラなのでもっと見せ場が欲しかった。

・ニコル
子猫ちゃんその2。
がさつで粗野な振る舞いをしているようだが実は繊細で気遣いが出来る子。
ニキにとても懐かれていることからもそれが判ろうというもの。
普段も髪を上げたときもどっちもイイ!
なんといっても「頑張れニコル!」での姿が印象的ですが、
他シナリオでの奥ゆかしいニコルも捨てがたい。

・ヘレナ
子猫ちゃんその3。
よいではないかよいではないか役。要はエロ。
しかしどうにもインパクトが薄い。
世話焼きだけど実は押しに弱いという設定もニコルに食われちゃってるし。

・アンシャーリー
子猫ちゃんその4。
電波娘。薬はいらんかねー。
どうにも謎が多い。昔は神童だったらしい。
でも特殊条件下のみで栽培されるお花のせいでダメな子に。
結局ボゲードンって何物だったんだ。
実在する……んだよね? ちび杏里や鼎さん助けてるし。
うーむ、この作品一番の謎かも。
おまけでのアンシャー・リー先生が面白かったが、
とにかく「ラズベリー水」での振る舞いが反則級の可愛さ。

・ニキ
子猫ちゃんその5。
ロリ巨乳。
けど貧乳であって欲しかった。
それ以外はクリティカルだったのにィ!
膝の上に抱きかかえて、ひねもすなでなでしていたい。
ジェスチャー時の可愛らしい目に脳天打ち抜かれた。

・イライザ
子猫ちゃんその6。
堕ちたメイドさん。こう書くとエロい。
個人的にいちばん過去を書いて欲しかったキャラ。
明らかに足りない。高飛車なイライザさんも見たかったよ。



■最後に
本編を除けば不満は見当たらない。
もう少しキャラの過去話を書いてくれたらなぁと思う程度。
百合に興味がない人でもぜひ手にとってもらいたい名作。
作品全体の完成度としては80点台ですが、幻想編や〆の素晴らしさ、
キャラクター・世界観の魅力に自分の好みも加えて90点ということで。

いつか縁をヒロインにした2がでないかしら。
ライアー作品の中で最も続編を待ち望んでるシリーズです。



最もリメイクを待ち望んでいるのは七橋だがな!!


テキスト:◎ ストーリー:◎ 構成:◎ 設定:☆ キャラクター:☆ 音楽:○ エロ:○ 得点:90点