比類ないスケールと、壮大なドラマで送る稀代の傑作。ひとつの、CSテキストADVの到達点。
†1000年、好きだった――†
今ではベタにさえ聞こえる、この言葉。
込められているのは時の重みと想いの深さ、でしょうか。
思い出補正はあるかもしれません。
しかしながら、圧倒的なスケールで展開する物語の迫力に驚愕し、
巧みな演出のもとで展開されるドラマに心を突き動かされたことは確かです。
そんな記憶の中にあるこの作品が、どうしようもなく好きでした。
この作品、登場人物ひとりひとりの存在感が際立っていますね。
ベタな言い草ですが、そうとしか思えないです。
それぞれの思惑が、想いが交錯する描写がどこまでも丁寧に描かれており、
いわゆる確立された「個性」からなる物語が読み手にダイレクトに伝わり、
鮮明な記憶となって脳裏に焼き付く、そんな印象を受けました。
岸上大策氏のCGの美しさもさることながら、
風水嵯峨氏の音楽の透き通るような冴えがまた、素晴らしい。
陳腐な言葉を並べるようですが、旋律を耳にすれば、映像が、言葉が、記憶の海から引き上げられるかのようです。
時代考証の甘さや言語描写に関する疑問など、気になる点はなきにしもあらず。
DC版から追加された「再臨詔」も蛇足といわざるを得ないでしょう。
しかしながらそれも『久遠の絆』という完成された作品の前には瑣末なことです。
コンシューマ屈指の、比類ないスケールで送る傑作であることは今なお、
疑いがないと信じてやみません。
まさにすべての人に読み、聴いていただきたい、CS-ADV作品のひとつの到達点です。