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a103netさんの君が望む永遠の長文感想

ユーザー
a103net
ゲーム
君が望む永遠
ブランド
âge(age)
得点
100
参照数
1810

一言コメント

発売から10年を機に。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

私にとって、君が望む永遠は、18禁美少女ゲーム暦9年の中で、唯一の100点、
ライトユーザーだった私の生活が一変した作品です。
ある意味、人生を変えた作品かもしれません。


ESでつけている点数は、2011年8月3日時点で、232作品にもなりました。
これだけ、このジャンルのゲームを最大の趣味として続けているのには、
「君望」以降もいくつかの当たりを引いたことも影響していると思いますが、
それ以上に、月並みな言い回しをすれば、

【今でも、あの日の感動を探し求めて、私は18禁美少女ゲームをしているのかもしれません。】

というくらい、この作品から受けた衝撃が大きく、思い入れがあるからだと思っています。


初プレイのことを簡単に3行で書いてみると、

午前中、人気のありそうな作品を調べて、買いに行く。
→昼過ぎ、君が望む永遠を最初から開始。
→明け方、水月ルートクリア。物語・ゲームで初めて涙を流した自分に気づく。

これが、私が18禁美少女ゲームにはまった1日です。

もう少しだけ、書いてみると・・・・・・

昼過ぎにプレイ開始して、18時頃1章終了。
OP曲が流れている間呆然とするも、とりあえず夕食をとり、続きをプレイ。
(1周目は水月ルート)一番感動したのは、遥にお別れをするところで、
その後のED曲・絵本(中身がどうとかはまあ…)や茜の水泳も良かったのですが、
その時点では感動のメーターが振り切っていました。

また、「この作品がすごい」と思ったのは、
8/19の「究極の二択」時の感情移入とそこまでの引っ張り方、
そして、「もうそろそろ終わりかな」というところからの
ボリュームと退屈しない中身でした。


私は、この感想文で「君望」の自分流解釈を展開するつもりもありませんし、
「万人におすすめの傑作」と言うつもりもありません。むしろ、
■序盤で(その周の)攻略ヒロインを決め、そのヒロイン以外は気にならなくなる人
■↑のプレイヤーの判断と比べて、優柔不断な主人公にイライラする人
■長い話が好きでない人
には地雷となるのではないかと思っています。

一方で、↓に当てはまる人で未プレイの人には、とてもおすすめです。

■三角関係の物語が好きな人
■序盤は水月の方が気に入ってて、1章(体験版)をプレイしている間に、
 段々と遥が好きになった人
■主人公に(≒プレイヤーに)選ばれなかったヒロインの魅力が発揮される物語が好きな人
■「失われた幸せな日々」と「これからでも始められるもの」といったテーマが好きな人
■「学園時代にしか得られない友情」というのに、何か感じるものがある人

*「この作品がなぜ好きか?」という問いに対する、答えとほぼ同義になります。
 基本的には、「後付け」の理由です。


中でも、私の中で一番をキープし続けている理由は、

(☆)本編で書かなかったこと、書けなかったことがあるのに、ハッピーエンドとして満足していること

だと思っています。(まあ、だからFDや追加シナリオが出るわけですが…)

いくつかの気に入った作品のレビューでも似たようなことを書いてきましたが、

■「書かれていない」のに満足している。
 →プレイヤーの脳内補間(や巷に溢れるSS)による
  「幸せなイメージなどが溢れる」作品であるということ。
 →前記に至るに足りる説得力のある描写が本編でなされているということ。

■成り立っていたはずの1つの(幸せな)物語を踏み台にして、広がりのある話を書いている。
 →踏み台となって書けなくなってしまうことに感慨深くなるということは、
  それ自体も結構良い話であるということ。
 →満足しているということは、踏み台になった良い話より、
  さらに良い話になっているということ。


といった作品は、実に素晴らしいと思うのです。


私が90点以上をつけている作品は、本作以外に十数作品あり、
その全てが君望より後にプレイした作品です。
(点数の目安は、100点:今までで一番、90点以上:個人的殿堂入り、80点以上:お気に入り、70点:標準点)
100点の判断は、作品同士を比べて「どちらが気に入っているか」に尽きるわけですが、迷ったのは2~4位の3作品くらいです。
ただ、正直に書くと、自己紹介のところに書いている採点項目で考えるならば、
2,3位の作品と君望には、ほとんど差がありません。


そんな中で、一番とそれ以外の作品を分けたものは、前述の(☆)に書いた理由だと思っています。
*プレイ時の経験値が低かったとか、思い入れもあると思いますが。


ですが、皆様ご存知のとおり、(ifとしてしか)書けなかった物語(の一部)は
2004年6月に、満を持して(?)FDの「君が望む第1章」として発売されています。
そして、2008年には2章の後を書いた3章も出ています。


(ここからは君が望む第1章の話ですので、蛇足です。)
(3章の感想は、別に投稿済みですので、ここには転記いたしません。)



このifのお話だけで考えれば、
特に意外性や見所のある場面が多数存在するということはなかったです。

ただ、告知されていた通りの分岐と場面、
そして、あの方向へ誘導しなければ見られたであろう、
普通(思いつきやすい、読みやすい)の展開を見られただけでとても感動しました。

*思いつきやすい、読みやすいというのは、FDの場合では、
 プレイヤーが期待していた内容に近いということにもなるので、
 結構ポジティブな意味で使っています。


遙ルートは(雑な言い方をすれば)、あの事故がなく、
デートができてHしてエンディング、となるのですが、
本編2章に思い入れのある私にとっては、待ち合わせ場所にいる遙に声をかけて、
デートができるだけでかなり感動しました。
デートイベントが無事に行われるだけでこれだけ感動したのはこの時以外にありません。


水月ルートについては、シナリオがいい、というわけではないのですが、
「1章の水月と付き合える!」というのと、4人の友情の話だけで、
まあ、良かったかなという感じです。告知通り、遙の告白を断る場面もありましたし。


茜ルートについては、孝之が茜のことを「遙の妹」と知って付き合うのか、
そうと知らずに付き合うのかがポイントだと思っていました。
ルートは後者で、孝之が正体に気づいたときと、
水泳大会のインタビューの場面が面白かったので、そこそこ良かったです。

このルートで一番のシーンと感じたのはエピローグ。

学園生の茜と実業団へ行った水月が選手権で4,5レーンで対決…という、
あの夏を無事に過ごせた後の「幸せな未来」として、
プレイヤーの多くが思いつくであろう場面。
飛び込みのシーンで終わるところもいい締め方だと思います。


なんで、本編にない、「君が望む第1章」まで振り返ったかというと、
2章のあの感動には、たとえば、こういう話を「踏み台」として、
という思いが利いてくると思うからです。


長文、お読みいただき、ありがとうございました。
最後に、OHPにある、10周年記念のメッセージを一つ。


10年って長いから、いろんなことがあったよね。
でも、私はほら、こんなに元気です。みなさんはどうですか?