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a103netさんのD.C.Dream X’mas ~ダ・カーポ~ ドリームクリスマスの長文感想

ユーザー
a103net
ゲーム
D.C.Dream X’mas ~ダ・カーポ~ ドリームクリスマス
ブランド
CIRCUS
得点
70
参照数
1552

一言コメント

萌えの「お約束」を守った、安全運転の内容。D.C.シリーズに思い入れのある方、特に(OHPにある粗筋のとおり、)ⅠとⅡのキャラがクリパで出逢うという話に興味がある方やサンタ服でのキャラが見たい方にはおすすめ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ここの最大の長所と思っている、萌えの「お約束」を守った、安全運転のシナリオ。
とはいえ(OHPでもわかる)粗筋自体は、D.C.ファンでも
「4年待った!」「それはやめてくれ!」「そんな話興味なし」に割れそうな気もする。

ⅠとⅡのキャラが出逢う、という点については、
純一と音夢が彼らの孫である、音姫・由夢におじいちゃん、おばあちゃんと言われたり、
杉並(Ⅱ)が音夢を朝倉祖母と言ったり、音夢と由夢の料理が惨劇になったり、
ことりとななかの関係がわかったり、美春と美夏がバナナ対決をしたりと、
想定していたつながりは殆ど見せてくれたと思う。

また、ことりがミスコンで告白するなど、ファンがニヤリとする小ネタも多かった。
(悪い言い方をすれば、新しいネタがなく、それに頼りすぎている感じ。 )
杉並の「番号!」(点呼)で花咲茜が2回返事するのも、狙っているのだろうか。

欲を言えば、ⅠとⅡのキャラがクリパで出逢う、という話しかなかったのがちょっと残念。
特に朝倉姉妹編と杏・ななか編がほぼ同じ作りなので、オチが読めてしまう。
(音姫・由夢、杏・ななかが少々の差分のみ、というだけでなく、
 両編が、キャストを入れ替えただけで、話の流れも仕掛けも同じ。)

そして、萌え一本かと思っていると、かなりライトではあるが、
「家族との生活による幸せ」とか「未来は自分で作り出すもの」みたいな話が
入っていて、ハッとすることもあった。

3D音姫やダンジョン(ミニゲーム)は、おまけと思えば…という程度。



(以下、音夢ルート感想・メモ。ネタバレ注意)


このルートが一番、期待通りの内容。

まずは、全ルートに共通している、ⅠとⅡのキャラの出会い。
このルートだと、純一と音夢が彼らの孫である、音姫・由夢に会うことになり、
名前を伏せるのだが、音姫には最初で気づかれている様子。
(後で判明するが、最初の日から気づいていて、由夢と一緒に気づかないフリをしていた。)
また、彼女たちが純一の孫であると、誰との子孫か?という話も。

それぞれが別の世界・時間から来た、という設定も面白い。
萌・眞子・工藤の純一への意識、音夢の嫉妬の場面だけでなく、
■音夢のいた世界では、二人は恋人同士だった。
■驚かせるアイディアはないかって色々考えて、サンタの格好をしていた。
につながっている。

これは、結ばれない兄妹の劇、劇のラストと屋上での告白の後、
元の世界でも恋人になれるかって思うと怖い、先日のは嘘、
サンタの格好で押しかければ、少しは自分のことを見てくれるか、と思ってのこと、
という想いにつながってくる。

もう一つ、53年後の世界でも姿が変わらないと言われた、さくらの想いも印象的。
クリパの準備中に、純一は音夢とさくらの話を聞いてしまう。
(さくらの世界では純一と音夢が付き合っていて、さくらは諦めたという話。)

初音島の名物、枯れない桜の木の話も絡んでいる。
序盤、「どうすれば戻れるのか?」という話について、
「みんなの願いを叶えたら帰れるかも?」と言っていたが、
杉並が「誰かさんの願いは叶えたのかもしれんな。」という通り、
純一は願いを叶えたのであった。

そして、一番の「お約束」はラストシーン。

それは、戻る前の夜、結ばれた二人が一緒に風呂に入っているとき、

 ──元の世界に戻ったら、ちゃんとその世界の私に好きだって言ってくれる?
 ──また兄さんに好きって言わせてみせるから。
 ──実は同じ世界から来てたら面白いね。

こう音夢が言ったときに浮かんだ場面そのもの。
告白時の「この未来が、私たちの未来になるといいね」に向かって、
二人が一歩を歩み始めた瞬間であった。