「日常・死生観」という、書き手の数だけ伝えたいことがある主題。前作同様、プレイヤーが自由に感じ取れることができ、そして、実際に感じ取るものがある作品になっていると思います。
OHPの作品紹介にて、↓のように書かれる本作の主題。
「日常・死生観」という、恐らくは、万人が納得する正解のない主題
人それぞれに違う正解を持つであろう、この主題。
まさに、書き手の数だけ伝えたいことがある主題であり、
前作同様、プレイヤーが自由に感じ取れることができ、
そして、実際に感じ取るものがある作品になっていると思います。
例えば、去る者について。
突然、未来を絶たれたときには、何を考えるのか。どう生きるのか。
「誰でもいつかは死ぬ」と考えられるのか。
「生きるためには何でもする」と考えられるのか。
生きた証とは何か。どうすれば、何が残せるのか。何を残したいのか。
生きているとは、誰かに必要とされるとはどういうことか。
最期に、残す者に笑うことができるだろうか──
残される者について。
7Fに行く者に対して、周囲は何ができるのだろうか。どう接すればいいのだろうか。
家族や恋人だったら、友人だったら、医者やヘルパーだったら。
去る者にとって、どうすることが幸せなのだろうか。
その「幸せ」は残される者自身のためにもなるのだろうか。なっていいのだろうか──
そして、そんな去る者と残される者の願いとすれ違い。
あるいは、日常の大切さ、
突然、前触れもなく訪れる、日常から切り離される日は誰にでもあるかもしれないこと──
など、色々と考えさせられる作品でした。
テキストは、4人のライターの持ち味はそれぞれあるところですが、
セリフ(文章)にその本来の意味以外に、暗示している内容があるものが多く、
むしろそちらの方が心を打つというのは前作同様の長所と感じました。
また、構成面でも、いくつか良いところがあったと思います。
ナルキ1,2の登場人物や出来事が関わってくるのはもちろんのこと、
ナルキッソスを育てている花壇、「友達は作ってもいい」といった7Fのルール関係など、
各ライターが書きたいことだけでなく、今までとのつながりも感じられる構成でした。
プロローグが仕掛けになっているものもありましたし。
最も印象に残った台詞は、チサトの
「…それじゃあ、死んでくる」
7Fへ行くこと、それにより別れを選ぶことに対するストレートな言葉。
この一言に衝撃を受けました。
それまでは、この話、他に比べたら序盤が軽く、
期待していた雰囲気とは違うかなと思っていたのですが、
ラスト付近で十分な感動がありました。
あとは、Productにある「1993」。
ラムネのスタッフコメントにある「1980」もそうですが、
こんなバックグラウンドのある人の描く世界だからこそ、
「読み手の感じるままに」受け入れられるものになっているのかなとも思います。
「死」や「死生観」を書く物語が数多くある中、
言葉にはできない独特の世界観があると思いますので。
プレイ時間は約10時間(1,2を除く)。ナルキ1,2が好きな人にはおすすめです。
(もっとリンクが強い作品を期待していた方には期待と異なるかもしれませんが。)