「感動ではなく共感を与える物語。」 こういうの、もう出ないのかなぁ・・・
どこにでも在りそうな田舎町の、どこにでも居そうな高校生カップルの、どこにでも有りそうな恋愛模様のオムニバス三篇です。
「癒し系」というと、自分が疲れてると白状しているようなもので、こっぱずかしい限りなのですが。
このゲームのテーマである「共感」ですが、あまりエロゲの評価の指標にはなっていない気がします。最近の流行りだと、「泣き」「鬱」あと、「ロリ」あたりですか。そもそも「共感」て何だ、ということですが、自分としては世界への共感ではないかと思います。自身のリアルな記憶へのシンクロ、という意味ではなく。
この「フォークソング」は、ティーンの恋愛が主軸となってるという点では、他のエロゲと変わらないのですが、何より優れていて、今更僕が感想なぞ書くのは、描写の巧さにあるように思います。単にテキストにおける情景描写という意味ではなく、絵、SE、BGMが非常に効果的に用いられており、作品世界の存在感では他の追随を許さないものだと今でも思います。
学校からの帰り道。蝉のいる夏。蛙が鳴き、せせらぐ小川。長い石段と「女坂」のある神社。古い町並み。春には花見、夏には七夕、プール、夏祭り。こういう当たり前の日常を、しごく丁寧に描いている作品て、そうそうないです。そんな優しい世界でゆっくりと流れる時間の中で、無邪気な恋に悩み、友人と語り合い、等身大の青春を謳歌する少年少女の物語は、確かにドラマティックな感動はないですが、しかしそれ以上に語っていることは小さくありません。最近流行りのスローフードではないですが、これは「スローゲーム」と言ってもいいような気がしますね。
どこにでも有りそうだけど、有り得ない世界。戻ろうと思っても、もう戻れない時代。でも、有ってもいい世界。これもまた良質のファンタジーには違いないです。このゲームやってホッとするのは、おそらく相対的なものなんです。ちょっと一休みしてみては、如何でしょうか。