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Yamさんのいちょうの舞う頃の長文感想

ユーザー
Yam
ゲーム
いちょうの舞う頃
ブランド
Types
得点
80
参照数
591

一言コメント

思わず赤面しそうな「こっ恥ずかしい青春時代」を真面目に取り上げ、現実的なエピソードを丁寧に積み重ねている。派手さはないが、その真摯な態度が成功を呼んだ好例。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「しょうがないよ、青春だもん」

主人公の母親が作家で、これはその本のタイトルなのですが、この作品の全てを物語っているような。
このかーちゃんが異常にいい味出してまして、ぶっちゃけ惚れそうです。毎朝起こしてくれる妹もいて、家族の心温まる描写にけっこうな量のテキストを割いてます。
攻略キャラは4人。先輩二人と後輩二人の組み合わせで、どう進めても三角関係に陥るように作ってあります。と言っても、もれなく鬱がついてくる最近の修羅場ゲーのように無体なまでに殺伐としてるものではなく、まさに「しょうがないよ」。無理のないEDはとても後味がよい上、当事者の心の機微がとても丁寧に書かれているので素直に泣けます。
ところでこの作品、とにかく弁当やら手料理やら買い食いやらがよく出てきます。モノを食べるという行為にはその人の人格が出る、というのは有名な話ですが、ことエロゲにおいてはキャラの日常性を演出するのに最適だと思います。「柏木家の食卓」とか。違うか。
かたや万能の幼馴染。かたや学園一の才女。この二人が主人公に「自分の」弁当を食べさせる為に繰り広げられる火花はまさに一大スペクタクル。あと、お好み焼き屋での一幕はもはや戦争。ラブコメ万歳、主人公逝ってよしてなもんです。こんなに「嬉しい悲鳴」な二択は今だかつて見たことがありません。

音楽がまた重厚に作ってあって思わず聞き惚れてしまいますが、ちょっと雰囲気にそぐわない感じです。というか、エロゲの音楽としては明らかに異質のような。
原画が泣き所みたいですが、私はむしろ好きです。デッサンは狂ってないし、これは確かな技術に基づいた独自のカラーだと思います。所謂流行りの萌え絵ではありませんが、こういうオリジナルを描ける人はぜったい必要です。

まぁ、「2」は黒歴史ということで。ホント吃驚しましたけど。