絵やシステム周りの古さはいかんともし難いが、ことシナリオに関しては今でも充分な訴求力を持っている。思い出に残る名作があるということは、幸福なことだと思う。
ニヒリストの主人公は、世の中の暗部に潜めく魔物を滅ぼすために、所謂、強姦をします。人間の女の形をした魔物にとって、人間の精液は猛毒という設定。ああ、これはエロゲのお約束、サービスカットなんだなと思いながら、プレイしてました。
輪廻転生をテーマにしたストーリーは、章仕立てで非常にドラマティックに展開します。否が応でも盛りあがるBGMや、練りこまれた世界観と伏線、個性豊かな登場人物。そして、嫉妬や疑念といった人間感情の描写もまた秀逸でした。だからこそ、主人公のレイプという行動は、いっそう浮いていたように感じたのです。
しかし、物語も終盤、主人公が心の底から愛したヒロインといざ結ばれる時に、彼のモノは使い物にならない。今まで多くの女を無感情に犯してきたそれは、本当に機能されるべきときに、沈黙をする。
泣きました。
いや、おかしいとは思うんですが、ここの下りはいつやっても胸を打たれる。つまり、暴力としての擬似セックスを重ね、多くの女を殺してきた主人公の、これは罰なのだと。今まで自分が冷ややかな目で見ていた「お約束」が、すべてこの為の伏線だったのだと気づいたときの衝撃。
勿論、他に見せ場はいくらでもあるのですが、自分はここが一番思い出に残ってます。エロゲて、こんなことも出来るんだと。どこかでエロというものを見下していた自分が、この世界に首まで浸かってしまうきっかけになった作品です。感謝。