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WireCodeさんの智代アフター ~It’s a Wonderful Life~の長文感想

ユーザー
WireCode
ゲーム
智代アフター ~It’s a Wonderful Life~
ブランド
Key
得点
97
参照数
899

一言コメント

鍵作品の中でも最も密度の濃い作品。良い意味でも悪い意味でもゲームの枠を超えてしまったのかもしれない。ユーザーの捉え方次第で評価が大きく変わるのにも納得がいくが、心を動かされる事には変わりないと思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

メッセージ性が強い。強すぎる。そして結末が(おそらく敢えて)曖昧になっている。
それ故に評価する人の捉え方が違い、様々な議論が出てきて当然の作品だと思います。
そもそも、この終わり方は『バッドエンド』なのでしょうか。
この作品を『ハッピーエンド』と捉える人は少ないだろうし、自分もどっちかといえばバッドに限りなく近い終わり方なんだと思います。
傍から見ればこれほど残酷な終わり方はありません。智代は一人で背負うには重すぎるものを背負って生きているように思います。
しかし、この傍からみた残酷な人生を智代自身もそう感じているのかどうかはわかりません。 
永遠の愛を、永遠に続いていく愛を感じられた事が智代の人生の宝物であるとするならば一概にバッドだと決めつける事はできないのでしょう。
そして、個人的にはこの作品が賛否両論になったのはメーカー(麻枝氏)の意図だと思います。
アフター以前のシナリオは朋也や智代の意思がはっきりとしていて、説明もしっかりされているので
方向性を見失う事がないと思います。例えば、とものシナリオで、もう後が長くないお母さんとともが一緒に暮らすべきか、という問題に、朋也はYES。智代はNO(最終的には朋也を手伝いますが)と言いました。
しかし、アフターでは重要な事はほとんど説明されていません。
朋也は手術後どのくらいまで生きたのか、記憶は取り戻せたのか、等です。
これらは敢えて曖昧にする事により賛否両論の作品にしたのだと思います。
そもそもラストが単なる説明不足なのか敢えて曖昧にしたのかという所さえ議論の余地がありますね。(笑)
また、この作品を単体として見るかとCLANNADの続編、あるいはFDとして見るかというのも重要なところ。 
それによって評価や考え方も変わると思います。
とにかく本作品は奥が深い。とても考えさせられる、熟考する価値のあるシナリオである事は間違いありません

あと、補足的になってしまいますが...

音楽のクオリティーは個人的にCLANNADを上回りました。old summer daysは神です。
あと、クリア後のミニゲームはちゃんとやりましょう。
ストーリー中のギャグもハマれば結構面白いはずです。最初のほうはややスベリ気味。