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Weather reportさんの水月 -すいげつ-の長文感想

ユーザー
Weather report
ゲーム
水月 -すいげつ-
ブランド
F&C
得点
87
参照数
925

一言コメント

PLAY時間は14時間40分。ダウンロード販売使用(GAME999) 雰囲気重視作品のほうが近いかもしれない。考察するのも一興だがそっち目的の場合はたぶん考察に確かなものはあんまりないように思える。だけど舞台装置としてみた場合はたいていのものが魅力的な素材に映る。あと雪さんがかわいい。その点だけでもやってよかったかな。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

水に映った月は掬えず ただそこに在り続け いつか消える






































◎あらすじ(OHPよりわずかに追記)

海辺に立つ少女。夢から覚めるために手にした矢を離し、
自分を旦那さまと呼ぶ彼女を射抜いた。
病室で目覚めた瀬能 透矢は、記憶を失っていた。
自らを自分のメイドだと名乗る雪や、花梨らの励ましに支えられつつも
記憶は依然として戻らない。

退院しいつもの日常に戻ろうとする透矢の前に、夢の中で射抜いた少女に似た少女、牧野 那波が現れる。

◎全体的な概要と感想

・購入について

ダウンロード販売(GAME999)にて購入

・システム

セーブ/ロード枠は20ではあるがしおりが3つあるので実質は20×3で60枠
クイックセーブ/クイックロード枠は5×3 オートセーブ枠はなし
でも正直セーブ枠60でいい気はするなあ…

ゲームエンジンはADWIN、F&C謹製のゲームエンジン。

名前変更システムあり(デフォルトネーム「瀬能透矢」でかえず)

ゲーム期間は夏期間(7月からかかって9月くらいまで?)日付は気にしなくてよい。

選択肢選択式のビジュアルノベルという形式。
ちょっと変わっているのは文字中で赤い文字で表示されるところを押すと
会話が変わる(主にキーワードに関する説明に入る)という仕様
攻略にも非常に左右される

PLAY時間に関して:

選択肢がほぼ序盤で分岐するようで
明確な個別ルートというのがあまりはっきりしてない感じはあるが
1周は4~5時間程度。SKIPは2周目以降かなり飛ばせる。
(経過時間:雪→約5時間 那波→2時間50分 和泉→1時間半 花梨→2時間20分
 アリス&マリア→1時間半+15分+25分 ?→40分ちょい なお2周目以降は既読SKIPした分飛ばして計測)

難易度は相当むずかしめ。
通常の選択肢のほか赤の専門用語をクリックするところはむずい。
あと選択肢ひとつでCG埋まらなかったりバッドいったりHなかったりするのでコンプは困難
素直に攻略サイトのお世話になったほうがいいかと思う
攻略順は香坂姉妹は最初にやらないほうがいいだろう。花梨のあとにやるとわかりやすい。あとは自由

一度クリアして開くもの:CG及び回想、音楽
全てCG埋めるとタイトル画面が変わり新たにメニュー増えます

○音楽

BGMは20曲

OPはメインテーマ「水月」 歌じゃなく曲

OP映像はキャラクター紹介が中心。ただし幻想的で曲ともマッチングしているので悪くはないと思う。

EDは「未来」 同じく曲。こっちは落ち着きながらも明るいトーンの曲。

ED画面はスタッフロールとイベントCGのスライド。

○声

声なし。2002年あたりなら
ADVゲームでも声使ってなくても不思議でもないか、という思いもあるが
ただF&Cは90年代後半から声優さんを使ったゲーム製作してたはずなので
声なしと知ったときにあれ?と思ったのも確か。
まあ声のあるなしにこだわりないので点数考慮は当然してないが、留意はしておこう。

○絵

CGの数は104枚
ただし立ち絵のアップがCG枠に入ってあるのでそれを抜かすと70枚ほど
(イベントCGの内訳は那波13 花梨12 和泉11 雪11 アリス&マリア10+4 ?6 そのほか3)

画☆野朗氏の担当。非常にロリ~な画風。だが整っているほうではないかと
F&Cの塗りはいいと思うのだ。

○キャラクター

・ヒロインの印象

ヒロインは公式には6人紹介されている。
特に雪さんと髪整えたあとの花梨がかわいいですね。

…隠れヒロインがいる。
出現条件がかなり難しいので注意。だからこその隠れヒロインだが…

・主人公の印象

記憶喪失の少年。記憶をどうにか取り戻そうとするが
肝心なところを忘れたりという、焦りと不安の描写が多めに描かれてる。
記憶がないというのは真っ白な状態ということ。
ひとついえるのは記憶喪失とその弱さがあるからこその主人公ではないか。
雪ルートはぐだぐだしっぱなし。…でもだからこそいいとも思う。

・サブキャラの印象

気のいい親友役の男がひとり。よいポジションではある。

○設定、テキスト及びシナリオ

・テキスト及びシナリオ

正直深く突っ込めるほどは見ていないし
その辺は他の方々のほうが的確だろうから概要程度に記す。

民俗学から来る薀蓄話各種、童話の物語、そして夢と現実風景を交え展開される。
全てを読み取るのは難解かもしれない。

ストーリーの道筋は面白い。
私的には考察という部分を最初からあまり考えないほうが楽しめるのかもしれない。
タイトル通りこの作品は水に映った月である。
綺麗だと思い幻想的な光景に浸ることはできても
水に映った月そのものを掬うことはできない。掬えるのは水滴だけ。
そういうあいまいなもので出来ている感覚がある。

個人的にはシナリオ主体というより薀蓄話を肴に味わう
雰囲気ゲーといった感じのほうが合っているのかもしれない、と思った。
ただこのゲームのイメージには符号している。
あとは魅力的なヒロインがかなりいるので作品としては充分なほど成り立つ。
結構よくできた物語なのは確かであとは好みだろう。
もう少し散らばっている材料に考察の手ごたえができれば最高ではあったが。

「じんわりと怖いが、儚い」 ただ、それだけではなく
青春模様や恋愛模様についても描かれているルートもありそこに伝奇的要素の部分を
アイテムやキーワードとして幾重に絡ませたりほのめかしていくことにより
上手く物語を引き立たせている印象もある。
舞台装置や小道具の使い方、作中キーパーソンとなる人物との絡みなどが光る。

Hシーンは1枠から3枠ありだが本番1回のみの子もある。
尺は全体的には短め。ただ一回にCG4枚使っている子もいるし絵もよい。
ただし尿成分が強いのは個人的にはかなり微妙。
ライターのトノイケダイスケ氏の特徴らしいのだが…。
Hシーンがそれこみばっかだと属性なしの身には辛い部分がある。
…見も蓋もない書き方で恐縮するがそればっかだと汚いんだな…。
まあこのへんは割り切る。

○おすすめの向き及びまとめ

小難しい話および薀蓄から考察したい方、世界観や青春模様にとにかく浸りたい方。
あとは雪さん目当てなら迷わずどうぞ。

逆に小難しい話が邪魔なら向かないかもしれんし
手ごたえは薄いのが気になる方もいるだろうし、だが。

現在はGAME999でよく紹介されて出ているようだ
もしも雰囲気が気に入ったならどうだろうか。損はしないはず。


ちなみに水月弐はPLAYもまあCSでできないわけだがまったく違うようだし
私の中ではすまぬがひとまず存在しないことになっています(汗


以下ネタバレ感想(弱いが雪はやや多いか)、一応注意。


















個別感想

琴乃宮雪(92点)→

主人公の家のメイドさん。非常にかわいい。記憶喪失の主人公を徹底的に甘やかす。

このルートが表しているのはやわらかな堕落。
かなりヘタレの主人公になってても包み込むように接してくれる雪さん。…正直いい!と思う
こんな子なら堕落してもOK。人気キャラクターのようだが確かにそうだ。

ある意味雪との関係は一途なのだと思う。…しかしあまりにも周囲がかわいそうではあるが

雪の正体は終盤で分かる。何故雪が存在しないものなのかはちょっと分からなかったが。
どこまでも幸せな夢にいたいか、何気ないが辛いこともある現実がいいのか…。

雪との生活そのものが
マヨイガみたいなものだったのでは、と考えることもできそう。
幸せな夢は、本来は醒めなければならないものでもある。

・雪を護れと言った際のシーンで父の書斎の引き出しの中のことが触れられていたが
なにが入っているのかは不明。なにがあるのだろう。

・スノードロップの花言葉は「希望」「初恋」という意味のほかにもうひとつ「慰め」という意味もあるようだ。
ほかの全て捨ててでも選んだ雪という希望。そして、慰めてくれるのは雪のみ。
…なんていうか、究極の自堕落シナリオのような。
だけどそれを許せてしまえるだけの魅力が雪さんにはある。
その分主人公がヘタレすぎてるのは仕方ないんだろうけどな…。

・「異常ってね、伝染病なのよ。異常と接し続ければそれが常識になる。
そうなったらもう、以前の生活には戻れない。そして以前の普通を持っている人から見たら、
あなたも異常ということになるのよ。分かる?」

これは香坂姉妹と知り合った場合の那波について評した感想だがややきついものいいながら
那波に、そして雪さんのルート内容にもそっくり当てはまるのだった。
このへんのほのめかしは上手い。


ちなみに。最後の選択肢で別を選ぶとルートが雪から花梨になります
ノーマルEDのつもりなんだろうがあまりにもったいない。
回想枠やCGいれてくれよ…と思う。
花梨は欠点も多くあるんだけど明るさと脆さが共存しているところに惹かれる。



牧野那波(78点)→

主人公とはクラスメートらしい謎めいた少女、というか電波系ヒロインというか…
第一印象があんまりいい子ではなかった。目が見えない。天然。
物語全体の大事なキーパーソン役でたいていのルートで絡む。

ルートだが雪さんのより難解で一応通して見たもののよく分かってないという(汗
私が書くより考察サイトのほうがよほど詳しいみたいなんで
そっちを探して参照したほうがよさそうなのだが、
問題は考察サイト見てえ?そんな目的があったの?と戸惑ってたわけだから
たぶんいまだにわかってない。

那波はよくいえばミステリアスなんだと思うが
悪く書けばよく分からない存在のままで留まっているように思える。
もうひとつ魅力度は個人的には雪さん>>那波ということはいえる。

ラストもなんか濁したっぽいような気がしてならない。
可能性のひとつ、という感じに受け取るわけで。
バッドエンドがあるのだがそっちのほうがバッドとはいえ
物語的にはまとまっている気もする。

香坂姉妹が終盤あたりなんか那波ルートに関わってくるのかと思ったが
途中からまったくでてこなかったみたい。

あと父親については真相を知ったあとだと少々かわいそうかも。



新城和泉(81点)→

めがねっ子。花梨の親友(若干振り回されているが)
性格はおとなしめ。家以外のことではにこにこ笑ってることが多いやさしい子。あと若干ドジ。
父は住む町の有力者兼社長。だが家での境遇及び父親については快くおもっていない。

和泉シナリオで描かれているのは
伝奇的要素(海の下の遺跡についてと涙石について)を絡ませつつ
花梨との友情関係のほうを重視している印象。
割合わかりやすいテーマで描かれているのでルートの中ではとっつきやすい。
ここでも花梨はちょっとつらい思いをすることになるが…
まあでも救われているし雨降って地固まる印象なのでこれはこれでいいだろう。

箸休めっぽいルートに映ったが悪くはない。
ただ花梨に比べると魅力度や作りこみの点において劣るのも確か。



宮代花梨(88点)→

主人公の幼馴染で家は宮代神社の巫女。弓道部所属。
性格はがさつさと繊細さが共存しているタイプ。
あいさつがわりに思い切り背中叩いたり思い切り蹴飛ばすのはどうかと思うが…。
アンバランスな子の印象がある。

不遇さが和泉以上に気になる設定。
全ルートで本番になると何一つ成功できず大失敗というそんなキャラクターである。

花梨シナリオは主人公の弓道に関してのトラウマを荒療治で克服させる流れから入る。
やりかたはどうあれ一途な子ではある。

途中までは花梨と和泉は同じ流れの構成(三角関係風味というか)となっている。
プラス部活のことや伝奇部分を混ぜた感じの構成。
部活の弓道の流れがこうつながるのか!というのもあるし
あと那波との絡みとかも上手いと思う。
なかなかよくつくられている。

このルートはきちんと終わればだが後味よくできている。
花梨の性格のアンバランスさを受け入れればやってみて損はないだろう。
ただヒロインの魅力については雪さんにはちょっと劣るか。
変身後の彼女のみだったら雪さんより上かも。

あとは主人公がPLAYしていて
なんか初めてちょっとかっこいいように思った。



香坂アリス&マリア(全部あわせて79点)→

教会で知りあった子。妹のマリアは控えめでドジ(和泉に似ている)、
姉のアリスはぶっきらぼうで勝気で花梨より乱暴で現実的。
他ルートだと途中からほぼ出てこなくなってくるのでイマイチ存在感がない。

この2人なのだがなんかいきなりレズっぽいシーンになる。
他ルートで出ない理由なのかもしれないが。

最初は2人との交流から入るが
本題は那波を「怪」とアリスが称した件の説明から
那波の父親が2人の秘密基地と称する
廃校舎敷地の防空壕の中でなにかをやっている?というところへ触れるかとおもいきや
餌を与えてたキツネについての話がメインで分からずじまい
正直ぼかしているとは聞いててもこのへんは消化不良のような気が
廃校舎はいいとしても那波の父親が死体みたいなの
掘り起こしてた理由ってどこかで出ていましたっけ?

EDがアリス単独、マリア単独、二人同時攻略とある。
どちらかといえば二人同時攻略ルートがメインっぽいような気がした。

作りこみとしては浅いかな、という印象はある。まあ、ロリな子目当てならどうぞ。
展開で魔女とか出てきてトーンがなんか他のルートとは違ってたような感があり
正直途中まではいい印象はあんまりもっていなかったのだが、
涙石との兼ね合いで飲み込める部分はある程度できた。

この姉妹の家系的には母親はここの街出身で父親のほうがジプシー、といったところか。



大和鈴蘭(85点)→隠しヒロイン。出現条件が難しい。アリス&マリアよりさらにロリーな子。
これは、実際にやってもらったほうが早いだろう。CGは立ち絵こみで9枚。

このルートはあくまでおまけみたいで短いとはいえ
一箇所水月の雰囲気に大きく石投げておきながら
同時にこれはありだ、と思わせてしまうような箇所がある。

彼女は間違いなく見えないものが見え、直感でなんだかんだで
いい方向に持っていく力があるようだ。
先天的に霊的な部分が自然に備わっているのかもしれない、と取れる
割とこういう展開は私的には新鮮でいい意味で斜め上だった。

まあ人により電波かもしれんが
おそらく容姿から小学生高学年程度かと思われ幼いのはよく分かる。
あんまり行動については気にはしていない。


お気に入り順

花梨(変身後)>雪>>那波>和泉=アリス=花梨(変身前)>>鈴蘭>マリア


点数はそれぞれのヒロイン個別の点数から出した平均点に
雰囲気や世界観などで楽しんだ分を若干加点(+3)したもの(端数切り上げ)
Hシーンのこととかは割り切ったので考慮していません。


以上感想終わり