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Weather reportさんの猫撫ディストーションの長文感想

ユーザー
Weather report
ゲーム
猫撫ディストーション
ブランド
WHITESOFT
得点
81
参照数
574

一言コメント

PLAY時間は21時間。ダウンロード販売使用。言葉と認識、行為と現象、心と体、そしてQuale。TRUEシナリオと認識した琴子ルートのシナリオが一番難解な感じがあり微妙に消化不良ではあるが…まあなんだかんだで面白かった、とはいえるんだろうなあ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

人は「形の無いもの」を見て、そこに世界を創りだす






















◎INTRODUCTION(OHPより)

星がいっぱい落ちてきて、満天の空に光が瞬いた夜--。
開けられないはずの扉を開け、俺は見てしまったんだ。

それは幻にも似た、幾度も繰り返す夢?
それとも、二度と現れない唯一無二のもの?

ただ分かっているのは、あいつらが俺の家族で、
俺の場所はここにしかないということ。

父さんと母さん。

──言葉と認識。

姉さんと妹。

──行為と現象。

そして、猫とあいつ。

──心と身体。

「水面に生まれた波が重なるように、きっと私たちも……」

だけど、その時が来たら、
俺は何を見て、誰と一緒にいるんだろう?

小さな街の、どこにでもあるような小さな家。
手が届くのは、ちっぽけな時間と空間。
そんな場所で始まった、俺たちの不思議な日々。

星屑の輝きが雪の結晶に変わる時。
光の向こうに待つのは、永遠に愛する人なのか、
それとも……。

















年末年始のDlsiteセールで半額になっていたのを1900円で購入。初WHITE SOFT。

◎全体的な概要と感想

・システム

セーブ/ロード枠は100 クイックセーブ/クイックロード枠は10 オートセーブ枠は10

ワイドスクリーン採用 テキストメッセージが短い可変式ウインドウ表示形式

ゲームエンジンはLucifen Library
これはスタジオライン系(teriosやCALIGULAなど)やNavel系でよく使われるタイプのゲームエンジン

WHITESOFTはもともとはTeriosにいたスタッフたちが(分かれてはいるらしいので全部ではないが)が
クリアブルーコミュニケーションズのほうへ移ってきたブランドみたい。
Purpleとは親戚のような関係のブランド。

ワイド画面採用 演出に関してはかなり立ち絵が動いたり
アニメーションだったりいろいろ演出効果出してたり 式子ルートは特に面白く思った
あと各ルートの最後の章前に各ヒロインのポートレイトが
イベントCGとともに挿入されるちょっと変わった演出がある。

ゲーム期間は12月11日からの3週間。ただギミックはあるが。

選択肢選択式ADV。

PLAY時間の内訳:

オープニング~OP:18分
共通ルート:1周当たり約4時間45分くらい
七枷結衣ルート:約2時間15分
七枷ギズモルート:約1時間55分
七枷式子ルート:約5時間40分
柚ルート:約3時間10分
七枷琴子ルート:約2時間05分

1周当たりのPLAY時間は7時間~11時間 難易度はやや低め。選択肢はそこそこあるが
普通に選んでいたらとりあえず誰かのルートにはたぶん行くだろう。ヒロインよりの選択を心がけるとよい。
既読SKIPできるところはそんなにないがスキップ箇所はわかりやすい。

一度クリアして開くもの:回想ギャラリー、CGギャラリー、BGMギャラリー

○音楽

I’ve担当。

BGMは歌まで含め18曲(ただし音楽モードには歌は登録されてないことを留意)
音楽がとてもいい。ストリングスとピアノなど、耳に染み入る曲が彩ってくれる。
これ聞くだけでもやってよかったかもしれぬ
ただし若干デフォルトより音量絞ったほうがいいかと。そのままだとBGMが勝ちすぎている。

OP主題歌はOuter「Bullshit!! Hard problem!!」 ロックンロールタイプの強い歌
OP映像はキャラクター紹介、イベントCGに字幕テロップを多く取り入れムービー化したもの、かな
かなりめまぐるしくカット絵が変わるしインパクトはあるかと

EDは詩月カオリ「永遠~小さな光~」 バラード曲。ED映像は基本的にエンドクレジットのみ。

○声

良好。特にギズモの声は非常に感情豊かでいいものがある。式子と琴子の声もよい。

○絵

CG数は71枚(結衣14 ギズモ14 式子15 柚15 琴子13)

ミヤスリサ女史、月音氏、みやま零氏の担当。

一人一人の原画家がそれぞれ単独で描けるように思うが、トーンの違いからかばらけてやや奇妙にも映る。個々で観るならかなりかわいいほうだろう。非常に不思議なトーンの画風、とみる


○キャラクター

・ヒロインの印象

ヒロインは5人。

主人公の(おそらく)望んでいた結果通りに現れたヒロインたち
琴子は亡くしたときのそのままの姿で、式子は若々しくおっとりした姿で、
結衣は傍若無人っぽく見え以前の面影を残しながらも姉御っぽくなり…
そして猫のギズモにも影響を及び…といった具合か。

・主人公の印象

なかなか痛々しい奴。…まあでも、そうじゃないとこの物語は成り立たないのだけど(苦笑

不登校児。性格はナイーヴ(アメリカでは悪い意味で使われる)
妹の死を受け入れられない結果心の成長を止めた状態である。
この主人公を見ると見て世話焼いてる柚は辛抱強い子ということはよくわかる気がする。
電卓が科学者として優秀だったときのなごりは主人公にも受け継がれているようだ。

・サブキャラの印象

父親(?)の電卓は微妙。名前ネタについてはひでえと思うが
このへんは最後までみて少し気持ちは分かった気はした。

電卓は学生時代の性格だと自己主張が強く我を通す性格だったのが
意思疎通のなく何もいえない半分死んでるような…は
いいすぎだが一人で黙々とこなすような人物になっている。
果たして前のと今のとでどっちがいいのだろう、とはいえない

蜜柑の性質は柚にもほぼそのまま受け継がれているのは分かった。

○設定、テキスト及びシナリオ

・設定

あんまり理解してないけどシンクロトロンについて

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%B3

・テキストおよびテキスト

最初からそこまで深く考えるのは放棄し(整理くらいはして)
物語の流れにゆだねる、という形でPLAYしてみた。
そもそも量子論とか語れる頭は持ってないし。

話の概要的な部分:

普通とどうみても違う押しかけ「家族」のお話。
それは琴子がやってきた日に起こった大きな地震をきっかけに起こった出来事。
「世界」と「世界」がある夜に重なり合って、とても不思議な家族の形態が生まれた。
原因についてはサブシナリオにある原子力研究所のシンクロトロン棟の研究日誌にも伺える

自分が見えていたものが前日までとは違っていたら覚える感情は恐怖だが、
主人公にとって琴子たちがやってくるまえに見えていたものは姿や形に残るものではなかった。
琴子が死んでから形式的なやりとりを繰り返す中で心をずっと開かずふさいでいて、
親や家族の顔を見ないですごし基本的に孤独でいたわけだ。
だから、今の状況に混乱していても主人公は根っこの部分でおかしい、と思えない。

そんな新しい「家族」の中にもまあいいか、琴子と
性格変わってるっぽいけど結衣がいるなら…と馴染んで行く中で
柚のみ七枷家におきた出来事を唯一外から明らかにおかしいと認識でき、
なんとか主人公樹の正気を取り戻そうと奔走(空回り)する、といった感じ。

ギズモの成長過程に関してはなかなか面白いと思う。そしてギズモや琴子がかわいい。

はたから見れば異常だが、家族のあり方といったところは考えるような余地はある。

ここに書かれているロジックや哲学はちゃんと考えられるひとがはまればいい。
たぶん、個人的には覚えたところでそんなに意味がない。
まあ、小難しいことを語られる間は得した気分にはなるかもしれぬ。

哲学的なところをあえて考えなくても
とりあえずは成立はしているんじゃないかな、とは思えた。
わからなくても面白いと思えるかどうかが鍵になってくるんだろう。
「Don’t think,Feel」を体現している作品である、とはいえる。

ただし。電卓がかなりうざいのに辟易ではあった。
仕方ない部分もあるんだが、キャバクラ行くくだりとかが微妙である。
あまりに奔放すぎて結構きつい。

もうひとつ、恋愛関係については
唐突でイマイチよくは分からないところがある
こういうのも近親相姦的な、ともいうんだろうか。
そうであってそうでない、ともいえるような不思議な関係である。

回想枠は各ヒロイン5
Hシーンは実質1~3回。その1回を分割したり着替えやED部分を回想枠に登録しているタイプ
尺はそれなりに長めで濃い目である。2回戦もある

○まとめ

家族の切り口を一風変わった見方から捉えた作品。

量子学論とかの用語がかなり出てくるのでそういうのが楽しめるひと向けなのかな…とも思う。
哲学はライターの癖以上でもなく癖以下でもない、と私個人は思った。
その癖を楽しめる方にとっては満足できそうではあるし
まあそこまで長くない分、なくていいということにはならないとは私も思う。

テーマだけ抜き出して考えるなら理解はなんとなくは伝わるし
好みのキャラクターもそれなりにはいる。まあそこそこ面白かったかな。

以下の場合向かないと思われる。

・家族と恋愛する、という形式が不条理に思う場合。
このへんはこの作品の不思議な部分である。このへんどう捉えるか。









章のタイトル(個別ルートに関してのみ)

○結衣

時間とはなにか?
美しい世界
影絵
亀裂
家族の形
凍る世界
絶対零度
意味の共有

○ギズモ

猫の一日
意識のハードプロブレム
猫の世界
発情期
ギズモの形
望まれたもの
花束
ディストーション・エンド

○式子

クリスマス・プレゼント
治癒
特別な意味
新しい呼び名
ストンプボックス
終わりを回避する方法
エンドレス
「1月1日」~?
グレイテスト・ハピネス

○柚

当たり前の朝
ディスコミュニケーション
確信
AUTOMATON
SNOW ANGEL
受け入れる強さ
bye bye,world
ideal
曖昧なまま

○琴子

柚の訪問
悪夢再び
逮捕

消える世界
消える世界2
父の観た世界
Quale
家族


以下感想。整理するだけしてみたがそれ自体かなりネタばれなんで未PLAYの場合注意
















個人感想

主人公について

・二つの自分がなんらかの原因で存在している(らしい)

ひとつはあの奇妙な家族(ヒロイン)と逢える世界(共通部時点) そのなかで誰を「観る」かでルートは分岐される

もうひとつ、七枷家は流星群の晩に起こった
局所地震で全て消えていることになる、そんな世界もある。
その中の主人公は、誰からも観てくれなくなった存在となる。

「七枷家の現象」について

昔あった3本の鉄塔が関連している。
一本はショッピングセンター「クアレ」の脇の駐車場に今もある、電波をカバーする鉄塔。

一本は公園内にかつてあったもの。昔は原子核研究所だった場所。現在公園になると同時に記念碑が立てられている。
ただし電卓によるとずっと移転せず研究所がそのままにある、という世界(並列世界)がある、らしい。
そこでは12月31日になんらかの実験がある。

一本は警察署にあった。昔はなにもない原っぱに鉄塔だけあったところらしい。
琴子と星を見、結衣と雪の中一晩語った場所。近年に再開発された場所のひとつのようだ。
3本建っていた時代にはいろいろと超常現象らしきものが発生し騒がれた、とある。
その時期は1999年。オカルトブームのさなかの話。

3本の鉄塔のほぼ中心に七枷家がある。
実験(研究所シンクロトロン棟による電磁波共鳴システムの実験、とある)の効果範囲もそこ。

もうひとつ。全ルートで12月31日には世界が止まる。
客観的、つまり外からみれば七枷家は消えている、という仕組み。

それらの全ての事象は主人公の樹次第で変わる。





たぶんだが全体の骨組み及び結衣、式子、琴子ルートは元長氏で
共通の一部とギズモと柚ルートは藤木氏の担当かと思われる。
元長氏は哲学と論理を元に話を構築し
藤木氏は家族関係、という部分を重視しているのかなあ、とか(違ってたらごめん




七枷結衣ルート

人物:

主人公の「姉」 
琴子がやってくる前と姿は一見変わってないように見えるがやはり別人。
性格はわがままというか奔放。

両親が二十年前の姿に「飛ぶ」のに対し
結衣は琴子同様「三年前」の姿に飛んでいる(柚の指摘で気づく)

ガラクタや使われなくなったものを拾いあつめコレクション化している。
定まっていないものを好まない。だから人か猫か不明なギズモとは距離を置いている。

物騒な能力を積極的に行使しようとする
(物を元素変換し修復したり生命を別のかたちにつくりかえたり)ようで
一応穏やかには描かれているがおそらく怒らせたら相当怖い存在なのだろう。

結衣は最初のオープニングのときはうざったい存在にしか描かれていないが、
家族の中での立ち位置を見てそのへんの事情は理解することはできた。

結衣のideal synbol(理想とする象徴、と訳するべきか)は「eternal(=永遠)」
結衣ルートでは「形のないものを永遠にするということ」を主に語る。



感想:

話的には中盤から柚の言葉をきっかけに「ある疑念」をはっきりと持ち、
それでも結衣といっしょにいたいと願う…という下り(と捉えてみた)

主人公が結衣といることで導かれる世界は
ここで表現される「時間の矢」というものが壊れた、いわばエントロピー0の世界。
それがかなった瞬間この現実世界からは消え、無機物の鉱石に変化する結果となる。

結衣は一言で書いてしまえば周囲に「時間の死」を与える存在である。
その行為を「悪魔」だとあるひとは呼ぶかもしれないが
結衣本人はそういう概念である、と言ってあった。

さて、感想を述べると
短いのだが必要なことのみを伝えようとするように見える。
これは全ルートにいえるが理解しているかは整理はしてても自信はないけれど。

恋愛関係という意味ではこれも全ルートにいえるがイマイチ分からない。
…論理で書ける範囲、とはちと別の部分でつながってるのかな。
過程がじっくりと描かれていく印象はなく
物語同様ここも伏線(結衣と交わした約束)とそれによる結果がある感じ。
恋愛ものとしては弱い印象か。

結末についての結末は予想は途中からは正直ついたものの
とりあえずは個人的にはありかな、と思う。
結衣にファムファタールとしての魅力があったかは多少微妙ではあるが。

…結構不満点ばかり書いてる気はするが、そう嫌っているわけではないことは記す。

・「時よとまれ、君は美しい」という言葉を思い出す、そんなシナリオ。
♯ファウストと契約したメフィストフェレスの言葉。




七枷ギズモルート

人物:

主人公の「ペットの猫」 
1年前に大きな流れ星が一個だけ流れて消えた晩に公園で拾ってきた猫。
やってくる前はねこではあるが頭自体は賢く、話はなんとなくわかるのが伺える。でも猫ではあるのだが。

端的には琴子たちがやってきた瞬間に
主人公が深層心理で願ったことが具現化した状態になったようだ。
その結果猫耳をつけたメイド姿に変わって出てくる。
いわばやってきた七枷家の家族にとってもイレギュラー的な不確定存在である。

初期設定では言葉をしゃべることは当然できない。
言葉を教えるのは「主人公の役目」と琴子は言う。
主人公が教え込むことで、だんだんギズモは人間らしくなっていく。
とはいえ、お風呂とトイレの世話については支障があるので
そのへんは琴子や式子が面倒を見て主人公は食事の世話という形で面倒をみている。
結衣以外はたいてい好意的である。

ギズモとの出会いの回想(流れ星)から「観る」ことにした結果がこのルート

冒頭はギズモ自身の行動を知る流れから入るが
すぐに意識の問題(猫と人間の違い)にぶちあたる。
人間になっても猫の習性がそのまま残っているギズモ。
ギズモと接し主人公が望むことでギズモがどう変わっていき、
そして自分自身を最終的にどうしたいのか、がひとつのテーマになるようだ。

ギズモをIdeal synbolは「Possibility(=可能性)」
主人公の願い次第でギズモは主人公の望まれるものに変えていく。

主人公は語りかける相手のギズモが自分と同じ世界を共有し観ていくことで
ギズモのことを主人公自身の鏡だ、と思っている。

ハーブティーで何故か酔っ払う。

感想:

ここでは人と猫の見ている世界と意識の違いのほうに内容を割いて盛り込んでいる印象である。
ギズモが気に入ったひとならまあ問題はないだろう。

ただギズモへの愛があっても、話の結末はぶっちゃけギズモとはくっつくわけではありません。

終わりはご都合主義なのかもしれんが
人がなにかと出会うことなんて全部奇跡でできてるものかもしれない。
そう考えると最後の部分は多少納得はいくかも。
選択による可能性を選んでいった先に、奇跡はたぶんある。

ただ結衣よりさらに短い…
これらのことがルート入ってから2時間かからず終わる。

猫撫FDが体験版やった感じギズモの焼き直しというか上書きっぽい気はしたので
そっちも見ておくべきなんだろうな。

以下余談。

・「天使たちが離れて天に去ったとき、
羊飼いたちは、『さあ、ベツレヘムへ行こう。
主が知らせてくださったその出来事を見ようではないか』と話し合った。」(ルカ 2:15)

クリスマスツリーのトップの星はベツレヘムの星という五芳星の形(まあ星形なわけだが)である。
ベツへレムというのはヘブライ語でベイト(パン)+レヘム(家)=「パンの家」
パンの家というのはキリストが生まれた小屋の名称のことを指す。

・4人組のアイドルというのはミニモニ。だろう。48人のおにゃんこってのはなんだ…

・Gizmo=Gismo=物、仕掛け、あるいはからくり、という意味 英語。
映画「グレムリン」のモグワイという生物についてたギズモも意味は「新製品」という意味。



七枷式子ルート

人物:

主人公の「母親」 
琴子がやってくる前とはかけはなれ学生時代に体形が戻っている。
学生時代の写真だとロリに近い。性格は非常に天然になって…というか、戻っている。
二十年前の記憶が発現しているので発言ネタが古いこともある。

植物を成長させたり遺伝子配合で全く違う生命を作り出したりさせる力を持っているようである。
なぜその力が発現されているかは式子の学生時代の夢の
大きな森の小さな家に住むこと、というのが反映された結果。
ガーデニングそのものは趣味で裏庭などで育てていたようだ。

野菜をつくるのが得意(と自称)
ただし野菜を掛け合わせる、という発想から抜け出せないため
変な野菜になってしまい食料にして食べるにはいささか難物になってしまっている。
ハーブティーなどはつくれる。

ベジタリアン的なところがあるので肉やケーキなどは食べられない。
料理や肉については電卓と結婚してからどうにかして覚え克服していったので
「現在」の式子に料理はつくれない。その根底には肉と火に対しての忌避が今も根強くある。

電卓とはお見合い結婚(政略結婚的なもの)で結婚した。
とはいえ、電卓と家族のことは愛していたつもり。
…自分のやってきたことに対しての無力を感じたのはやはり琴子が死んだとき。

家族を小さな森にたとえひとつとなり調和することを愛する。
現在の式子はいろいろ危なっかしく幼いながら理想を語るときは純粋、
ほっとけないオーラを出している人物といえる。

式子のIdeal synbolは結衣と同じ「Etarnity(永遠)」ただしそのベクトルは対極。

結衣はエントロピー0にどこまでも近づき主人公と2人だけで続ける
(そこでは七枷家、という家族でさえどこかあいまいな存在として描く)永遠を求めているのにたいし
式子の場合は家族の幸せが永遠に続き、やがて周囲を取り込み
全てがひとつの森となり分かり合える、そんな世界を求めている。

感想:

テーマは(家族=命)
この家族にて生まれた「特別な意味」を問うシナリオにもなっているようだ。

このルートが一番家族についてのありかたを模索しているような気はする。
ていうか明らかに尺がほかと違い長く丁寧に描かれている印象

後半、式子の能力が消えるくだりは意外。
このへんの展開は、たぶん原因として自分の能力の消失に囚われ
式子が主人公をきちんと観なくなったからじゃないかと思ってみたり。

ただ奇跡のところがちょっとわからないのだが…
このへんは感覚的な文章ではなくもう少し踏み込んだ説明がほしかったか。

…柚が損な役割なのはしかたないだろう。
一番相容れない存在として描かれているわけだから。

ところで、パッくんはマ○オのアレにしか見えない。著作権的にいいのかな…
♯柚ルートで出てくるミなんとかは必死に打ち消してたけど(笑

式子のエンドは結衣とは別の意味でちょっと感覚的には怖いかもしれない。




柚ルート

人物:

主人公の幼馴染の女の子。
不登校の主人公の尻をたたきながらもなんだかんだで世話を焼いてくれる存在。
唯一豹変した七枷家を外から直接干渉できる人物(らしい)。
警察官の母(蜜柑さん)と外交官の父を持つ。

彼女にとっての世界は認識が正しいことが全て。言い換えると超リアリズム思考。
今の七枷家のことが許せない。だから打ち解けることは本来なにもない。
ただし。主人公に対してははっきり好き。
そしてそうなるにはなんらかのきっかけがあることくらいは推測可能。
キャラクターとしては分かりやすい子。

好き嫌い以前に猫撫では損な役割をしょっている。
「正しい思考」を持っているからこそ起きている不可思議な事象に揺らぐ人物。
柚のIdeal synbolは「Vagueness=(曖昧、はっきりしないことという意味)」

感想:

柚ルートは柚が七枷家に押しかけて暮らす展開から始まる。
この段階で主人公が観ているのは七枷家ではあるものの、
まだ確定して誰もみていない状態ではあるだろうか。

テーマはそんな曖昧な不確定な世界でそれでも現実と向かい合って生きる、ということ。

この話は柚をみるまでが軸。
彼女を選び、観た場合は七枷家はやがて行方不明の状態となり消えることが確定する。
「Goodbye to you,and your world(さようなら あなたに、そしてあなたの世界に)」

柚よりもむしろ主人公が非常に情けなさを覚えるのだがこれもしかたなかろう。
この物語の状況を作ったのはよくも悪くも樹自身である。
柚ルートではその悪い部分をさらしている。

不満点は役割上これもしかたないんだろうけど柚に魅力はあんまりない。
ていうよりもうちょっと後日談がほしいところなので、
このへんはFDで、という感じになるんだろうな。





七枷琴子ルート

人物:主人公の「妹」 
とはいっても、特殊な病気におかされており本来の彼女は3年前に他界している。
それがきっかけで認められない主人公の心は
現実から乖離し心を閉ざしてしまう原因となり、不登校になった。

ある日地震が起き、「世界」と「世界」が重なった瞬間
本来いないはずの琴子が最初に認識された。それが物語のはじまり。

性格は不思議系。でも基本的には静かでやさしく穏やかな性格。
そしてもうひとつ、非常に哲学的かつ論理的な思考に長けている。
本の好きなところも含め考えても一番電卓の血を受け継いでいるようではある。
一家のまとめ役ともいえ、他の面々も琴子には逆らえるようにはできていない。
ゲーム好きで、ゲームをやらせたら琴子の右に出るものはいない。

兄さんとお兄ちゃんを使い分ける琴子萌え。

琴子の正体は科学者としてやっている世界での電卓が生み出した粒子的存在のひとつ、あるいは「意味」
Ideal synbolは「SENSE(=感覚、あるいはクアレとも共通)」
願いは感覚を共有すること、みんなの心に残る自分であること。

感想:TRUEシナリオ。TRUEというからには
この七枷家という舞台の仕掛けが解き明かされてる…らしい。
ただそのへんがはっきりしないのは正直琴子のルートが私には一番難解なんだよね…

そして七枷家に危機がおとずれ、重大な異変がおこるのがくだり。

…なんだけど、短いです。それから煙に巻かれたような展開というか。
琴子がかわいかったからまあいいかではあるけど…。





点数つけづらいけど81点くらい、と判断してつけた。
なんだかんだで難しかったけど面白かった、という評価になるかな。

お気に入り順

話のできに関してはどれも一概には決めにくい感じではあるのでやめとく。人物評のみ

人物順 琴子>ギズモ>式子>結衣>柚


以上感想終わり。