ErogameScape -エロゲー批評空間-

Weather reportさんのnarcissu 3rd -Die Dritte Welt-の長文感想

ユーザー
Weather report
ゲーム
narcissu 3rd -Die Dritte Welt-
ブランド
ステージ☆なな
得点
90
参照数
1408

一言コメント

PLAY時間は13時間。1500円。本編の設定を使った公式作品集的作品。他の人の考える死に関するスタンス、とはどのようなものか。それを覗くのも一興か。…全部読んだあとのおまけがすごく好き。

長文感想

蛇足とならないように祈る、とか
購入前の感想欄に書いてたけど
PLAYした後
杞憂にはなってくれたようでよかった。 





少し自分自身について
照らして整理しながら
書いてみることにする。
しばらくは飛ばして構わない。

私の場合を考えると
境遇自体には恵まれている
(それでもそりゃ生きてりゃいろいろあるわけだけども)
ほうだと思う。
立場だけ見ると
青空と雲に関して
べらべら語る
変なお兄さんには
近いかもしれない。
(作中では性格的には受け付けないタイプのひとだったしたぶん彼とは結構・・・・対極まではないが私とは反対っぽい)

ただ
余命の長さには
誰も彼も大して変わりはない(「メサイア」)とは
私にも言える。

みんな年取って死ぬか
尊厳か逃げるために死を選ぶか
なんらかの要因で
神か悪魔の元に召されるか

いずれにしろ
等しく死は
誰にでも訪れる、ということくらいは
まああるていどの
年齢生きれば
誰でも・・・・
少なくても大体の人は
たぶん
頭には留めてはいるものかと。

ただ振り返ると
生きている間に
死は考えたことくらいはあるが
結局死を考えるには
私はどうも幼稚というか、あんまり
具体的には伏せるとしても
短絡的なこと以外
これまで
考えてはいなかった気もする。
私の場合は
トシの割には
少々問題は
あるかな・・・・。

もちろん
大切な人なら一日でも一秒でも
長くは生きて欲しいものだ。

・・・・それでも、
誰でも何時かは死ぬときはある。
それを告げられたとき、実際起こったとき
私として何できるか。
今すぐ答えを持つほど
強くはないけど
少しは考えられる。
そのためのきっかけとしては
このシリーズは
実によくあてはまっていると思う。

幸い今のとこは
突然の死の病にかかったり
事故にあわん限り
私自身の死については
先のようなので
今のところは
どうやってもひとの死を考える。

できればそのときまで
親しいひととは
普段通りで接したいものなのだが
果たしてどうなるだろう。
感情を押さえ込むほうではあるけど。






ここから具体的な作品批評。

絵→この点に関しては
前のごとP氏のほうがよかった・・・・気も
しないでもない。
なんか微妙な表現だけど

つまるところ
海璃の頭がでかい。
身体がやせているから
こうなのか
少々判断にはつきにくいが
それを引いても
どうもバランスが
ちと悪い(ように見える)CGがある。

緒方氏の絵が
特に嫌いなわけではないのだが
私には
そんな印象を持ってしまった。

ナルキ3には
CGモードがないが
ある意味なくても
よかったかもしれない。

音楽、デモムービーはよかった。
ただ欲を書けばムービーは
おまけじゃなくて
タイトルになる前に組み込んでくれればよかったかもしれない。

お気に入りの話

姫子エピローグ≧メサイア>死神の花嫁>小さなイリス>>Ci~シーラスの高さへ

あと含めなかったが差分の1993も見るべき話かと思う。

以下は各話についてネタバレ混みの感想。


















(ネタバレあり)





・死神の花嫁(ごぉさん)

かつて神の手といわれながら落ちぶれた
死神といわれる医者と
天使と呼ばれた看護師のお話。

死を受け入れること、とは
思考がどんどんシンプルになる、ということ
なのかなあ、と考えてみる。

海璃の遺志からすると
その最期は幸せだった、とは信じたいわけだけど。
もしかしたら彼女にとって最期に見た風景は
英治と結婚して幸せにやってる風景なのかもしれない。
そう考える余地はあるしそれはできれば願う。

少々後半
先生が
不幸すぎるのは
なんでだろう、と感じるけど(汗

ナルキッソス本編から一番精神としては
受け継がれていると思うし。
比較的とっつきやすいと思う。

「ひまわり」でも思うが
物書きとしては
改めて上手い人である。
次も期待。

選択肢が唯一あって
久しぶりにかなり悩んだ。
最初は少々違和感あったのだが
(というのもナルキッソスってゲーム、とは違う小説形態であるべきもの、とは思ってたんで。
ひとつの主張と過程と結末でもって押し通すからこそ成り立つものもある、と思ってた)
まあそれは選んだ選択によって
物語が平凡にも劇的にもなる、ということを
表しているんだろう、と解釈。

・Ci~シーラスの高さへ(酸橙ひびきさん)

青空と雲が好きな不思議なお兄さんと
自分を演じることが日常になってしまった少女のお話。

クレジットで
その他扱いされているのが
ちょっとかわいそうだと思ったが
読み終わって
4編の中ではその他扱いされても
仕方ない面もあるかもしれない、と
思いなおした。
まだキャリア的には浅いようだし
実際作品の出来も
ほかの3方よりは
見劣りする感じもあるので。

ナルキ本編に絡んでくるのは
「病院」と「7階」という設定だけかな。
後半ひんぱんに変わる
視点変更によって
チサトとカズアキの関係を
1:1で表そうとしている、
アプローチとしてはこの中では
一番ギャルゲーにある
タイプのものに近いかな、と思う。

ただ、長さ的にはそうでもないのだが
まだもうちょい削れると思うんだよなあ。

ほかの人も書いてますが
導入部くどいです。
始まりから5章まではとにかく
あーだこーだ脱線しながら
話がろくに
進んでいかないので
途中まではちとこれはダメかな、と思った。
とりあえず私がチサトの立場だったら
どう考えているにしろ
この不思議なお兄さんはごめんもうむる。
後藤麻衣さんの声やツッコミが好きなら
薦められると思うけど。

シーラス計画というのは
結構アイデアとしては面白いと思う。
だからこそ、というか
「嘘をつかないこと」が最後の章で響く。

後半部分に関してはナルキッソスらしいところはあると思う。
ただ「日常と死生観」として考えると
この話はちょっと浅いかな、と。

別れる瞬間に
チサトは素直でいられたのか?については
もやもやした感じのものは残るけど
そんなに割り切れるもんじゃあないのもあるし。

あのエピローグが
彼女にとって
少しでも救いになれればいいと思う。

余談だけど
学名「ナルキッソス」は
総称としての呼び名なので
水仙属は70種類ある花らしい。
水仙全般としての花言葉には「自己愛」というのがあるが
ラッパズイセンの
花言葉は「あなたを待つ」とか「報われない恋」という
意味があるそうだ。

メサイア(早狩武志さん)

将来を嘱望された医者と
病末期患者の交流。

4編の中では一番気にいっている。
事務員や医者の余命当てを
2人でしてる場面には
笑ってしまったし
バイク関係のツーリングの辺りも好きだ。

拓人はいい意味で医者らしくないし
久也も本当は礼儀は正しいのだと知る。

拓人と久也の関係って
(医者と患者の関係でもあるものの)
友達でも親友でもいいけど
もうちょい格好つけた書き方するなら
Buddy(相棒)だろうか。
バイク乗りの2人なら
そっちの呼び名の方があってそうではあるし
お互いを気遣っているので
なんだかんだあってもいいコンビだった。

最後は完全に意表をつかれた。
ただそこからの話の持っていきかたは
強引ではあるがそれらをひっくるめて
よかったといえる。

千尋とセツミが唯一出てくる話。

以下林道についてのページ

中津川林道:

http://www.rindo21.com/kanto/nagano_saitama_nakatukawa.html

川上牧丘林道:

http://www.rindo21.com/kousinetu/nagano_kawakamimakioka.html

小さなイリス(片岡ともさん)

かつて皇女でありながら
孤独な、それでも生きたいと願う
「人殺し」の少女と
自分にふさわしい
死に場所をただ求め続ける
兵士のおはなし。

「ナルキッソス」本編とは
あえて離した位置から
本編の根底の部分と
リンクさせようとした作品、なんだろうな。

だからこれもナルキッソスといえば
確かにそうなのかもしれない。
ずいぶんダークサイドだが
それは中世の「死を想え」みたいな時代だしね。
だから私としては
あんまり違和感は感じなかった。

なんのために
生きたいのか?そして
どうやって
死に場所を求めるのか?
・・・・現代ともつながる話だ。

赦されるべき行為ではないが
それしか生きる道はなかった、としたなら
実に悲しい時代だ。

話自体は好きだし
ハッピーエンドは肯定するほうなんで。
でもまあ一番好きなのはおまけなんだけど。

おまけ:姫子エピローグ

姫子さんは
すごい人だな・・・・と思う。
そして最高の親友に恵まれたに違いなかった。
それは優花も同じ。



点数は90点。
考えた末に1stと2ndの中間くらいの位置にした。