最後の最後で脱力。
過去、現在、未来の各主人公を操作して謎を解くADV。ある時代の謎を解くヒントが別の時代にある事もあり、1つの時代をプレイし続けてもクリア出来ない作りになっている。謎自体はあざとい位にヒントを出してくれるので(例えばあるアイテムを入手すると、それを使う場所の背景をフラッシュバックのように表示する)基本的には詰まらないが、終盤に使う「○○の書」だけは使う場所やヒントはおろか何故そのアイテムを持っているのかすら解らない状況に置かれるので場合によっては今自分が何故詰まっているのか判らない事態に陥る恐れがある。謎の「作り方」「難度」「バランス」「解かせ方」が余りにも下手過ぎるのはライターが無能なのかスタッフ間の意思疎通が十分に行われなかったのか。本当の意味で主人公切り換えが役に立つのは終盤の極短い期間のみなのでこのシステムの必要性は皆無に等しく何故入れたのか大いに疑問が残る。
話は過去編はRPG風、現代編はスパイ(探偵?)風、未来編は荒廃したサイバーパンク風?と、ある程度作風が決まっている。全体的に血腥く画像を伴った流血場面が非常に多い。そして18禁的展開(致す、回す)を臭わせる展開も多いが、結論から言うとこの「18禁的展開を臭わせる展開」がなくてもこの物語は成立する。要するに『蛇足』以外の何物でもなく、これが原因で話が途切れ途切れになるわ折角の盛り上がりに水を差すわで非常にテンポが悪くなっている。ライターは何故こんな無駄な場面を作品に込めたのか。そういう要素を入れないと売れないと思っているのなら哀れとしか言いようがないし、単に18禁好きで我儘を通したとしたらライターとして以前に人として神経を疑う。最後の話の締め方も何処の小学生の考えたお話ですかと言いたくなるような陳腐な締め方をするため脱力感は並大抵のものではない。
登場人物は過去編は主人公より4人の神官が目立っていて印象が薄い。未来編はとにかくウケを狙おうとする作りに唖然。現代編はミスリードを誘おうとして先が読めない事と職業柄主人公が行動的なので一番活々としているが血腥さも一級品なので人によっては拒否反応が出るかも知れない。声あり作品が当たり前の時代に声もない。ただそれらを考慮に入れても全登場人物に『人(生命)』を感じさせない。ド素人のみで演じられた演劇か、はたまたプログラミングされた通りに動くロボットか。このライターは人物を描写するのが非常に下手なのかも知れない。
システムは移動に方向キーを使用するが、方角と方向キーが固定ではなく右上に表示される縮小マップの矢印の向きを基準に決められるため同じ上を押した場合でも前進する時と後退する時があり混乱を生じ易い。縮小マップを見ながら移動した方が快適にプレイ出来るので背景上の矢印は無視した方が良い。全体マップで移動場所を指定出来ればこのような混乱も少なかったと思う。環境設定は当時を考慮しても機能不足は明らかでレスポンスも若干悪い。ただメニュー等を呼び出さない通常のプレイ進行はそれ程ストレスは感じられない。
後に声が付いたDC版が、18禁化したPC版が出たが、大元の話が駄目なので恐らくそれらをプレイしても評価は変わらないだろう。