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Visiongroveさんのロスト・エコーズの長文感想

ユーザー
Visiongrove
ゲーム
ロスト・エコーズ
ブランド
petitlinge
得点
65
参照数
765

一言コメント

過去に戻って歴史改変。しかし過去での説明不足が目立ち、とにかく読んでいて疲れる文章になっている。どのヒロインも似た展開になるため飽きと疲労で全部プレイし通すのが難しい。

長文感想

祟り神化して災いを起こしかねないヒロインを救って欲しいと神様に頼まれ、その原因となる過去を改変するために過去に行ったり現代に戻ったりするシナリオ。

現代は(雛緒がアホの子過ぎる点を除けば)極々普通の学園物。

一方過去は日本の戦国時代を舞台としているためかややシリアス寄り。但し通常のサービスシーンは過去の方が圧倒的に多い。ゲーム向けに料理した戦国時代とは言え台詞回しや表現が難解で、歴史が好きな人でもない限り度々プレイの手を止めて辞書(あるいは検索)に手を伸ばす事を強いられる。更に言うなら各陣営の情勢を全て台詞や地の文で説明しているために理解が追い着かなくなる事が多く、10回20回とバックログを見返したり、(システムの制限により)予めセーブしていた場所に戻って再度読み直したりする必要に迫られる。ゲームという体裁を採っているなら歴史ドキュメンタリー番組のように視覚的に情報を補う事は十分可能なはずなのにそれをしなかったのは手抜きと言うほかない。そしてこれらが原因で文章を読むのに非常にエネルギーを要し、折角盛り上がる場面で「今日はもう疲れたから明日にしよう」と休まざろう得なくなり、話が幾度となくブツ切りになって物語への没入を著しく損ねてしまう。極論を承知で言えば「何もゲームという形を取らなくても小説で良かったのでは」とさえ思えてしまう。

また(後述の問題点はともかく)文章が丁寧で描写も細かくしている事がクライマックスからEDへの展開を冗長にしてしまい、これも「当分EDになりそうにないから明日でいいや」と展開がブツ切りになってしまう原因を生み出しED前の感動が薄れてしまう。終盤が駆け足になるのは論外だが、要点を纏めきれずに全てを説明しようとして話のテンポが悪くなっては本末転倒だ。

ゲームシステムは一般的な選択肢方式。スキップはやや遅めだが選択肢ジャンプがあるため2人目以降はそれなりにプレイ時間を短縮出来る。但し既読状態に関係なく止まる場所が数個所あるため若干使い勝手は悪い。

エンディングはトゥルー1、グッド4、ノーマル1、バッド5の11種類。エッチシーンは琥珀、雛緒、晶穂、結佳は5、卯実は4の計24種類。バッドルートの一部にもエッチシーンはあるため選択しないと全てのシーンを回収出来ない。結佳ルートは琥珀、雛緒、晶穂をクリアする事で解禁、トゥルーは更に結佳をクリアする事で解禁される。

システムの不満点や問題点。

ランダム再生のシステム音声と作中の音声が同じ項目で調整されるため片方をオフにする事が出来ない。これの何が問題かというと、シリアスな場面でセーブしようとしたら暢気な口調で「セ~ブするよ~?」みたいな事を言われて雰囲気をぶち壊しにされてしまう恐れがある。しかも狙ってやっているのかと思う程シリアスな場面で場違いなシステム音声が再生され易い。システム音声調整の項目追加が無理ならせめて調整対象を「効果音」に変えてもらいたい。

画面効果を「瞬間表示」にすると、全ての画面効果がウェイトゼロで実行されてしまう。例えば歩いている動作を再現しているゆったりとした上下動や否定を表す左右への立ち絵の動きはまるでキャラが痙攣しているかのようにガクガクと高速に動く。単純に不気味である上に目に悪い。しかもEDの画面効果までカットしてしまうためEDがほぼ一瞬で終わってしまう上にED曲も流れない。これは単純にスクリプトの手抜きなので擁護出来る所は一切ない。こんな酷いスクリプトを止める人が誰一人いなかった事に驚きを禁じ得ない。

選択肢に到達するとバックログが全てクリアされる。この手のゲームでは確実に自分の行きたいルートを選ぶために確認でバックログを参照する事が多いがこの作品ではそれが出来ない。「前の選択肢に戻る」で戻るか、予めセーブしておいたデータをロードするしか術はない。一番確認したい時に参照出来ないのでは意味がないのでクリアするタイミングを見直して欲しい。

最後に1.01適用後の誤字脱字等の問題点。

「一体何処の何をチェックしたのだ」と言いたくなる程修正されていない。誤字や過字、台詞文章と音声の不一致はまだ可愛い方で、立ち絵や顔絵の指定ミス(校内の場面なのに私服の画像等)、表情差分やイベント絵差分の指定ミス(悲痛に話す場面で満面の笑顔、眠っているという説明なのにイベント絵の目が開いている、画像自体のレイヤー重ね合わせのミス等)、果ては異なる連続した台詞文章に同じ音声を割り当てる、地の文で対象となる人物を間違える等、一度通してプレイすればすぐに気付くミスが大量に放置されている。

更なるパッチを待っていたが叶わぬ夢となった。次への改善点も明確だっただけに残念だ。