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Visiongroveさんの紅蓮華の長文感想

ユーザー
Visiongrove
ゲーム
紅蓮華
ブランド
Escu:de
得点
70
参照数
734

一言コメント

EDの余韻に浸れずただ物足りなさが漂う惜しい作品。

長文感想

自宅に届いた手紙が元でくおんと言う妖女を解放してしまった主人公涼士が彼女の力と命を共有している事に戸惑いながらも彼女と共に封印されていた異界を再び封印するべく行動を共にする。

流血表現を伴う戦闘描写もある伝奇物で文章は読み易く嫌味なキャラもいないため読感は良いが、正ルートであるくおんは余分な描写を極力省き最後まで疾走するのに対し沙織は本人の分析好きな事も相まって描写が冗長になる等メインヒロインでも密度にかなりばらつきがある。加えて過程に重きを置いて書いているためか終盤からEDまでがどのルートも駆け足で余韻に浸る事なく物語が閉じてしまい非常に物足りなさを覚える。サブヒロインはアリーセを除き所謂おまけモードのおまけシナリオ並に短く何故エッチして何故恋仲になるのか首を傾げてしまう事も。無理にサブ全員にルートを用意する位なら思い切って全て削ってその分をメイン全員の拡充に回して欲しかった。尚一部のルートは特定ルートのクリアを条件としているが制限は緩いので割と早い段階でくおんルートに進む事も出来る。バッドEDはあからさまな選択肢から分岐するため見る価値はなくサブ以上に蛇足感が強い。メインは複数EDのキャラもいるがノーマルEDは描写不足が酷くこれも物足りなさに拍車をかけている。戦闘描写はSFCレベルの拡縮回転効果しか使っていない。今のPCの性能を考えると手抜きと言われたとても致し方ない。

絵柄は全体的に可愛めだが特に違和感はない(戦闘物は凛々しい絵柄でないと駄目と言う人は合わない可能性大)。寧ろイベント絵の空間描写が弱くのっぺりしている事の方が気になる。800×600という解像度の低さはどんなに綺麗な原画を描き彩色をしてもマイナスにしか働かないのも厳しい。

音楽はイージーリスニングからシンフォニックメタルまで様々なジャンルの曲を使用しているが確りと作品に浸透していて自然に聴く事が出る。尤もノーマライズしていないのか音量にばらつきがありそれが不快感を生む原因にもなっている。

エロはメイン各3、サブ各1。メインの初回は見てるこちらが恥ずかしくなるような初々しく熱々な展開になっているが、2回目以降はキャラによっては無理矢理話の合間に押し込んだ展開から入る事もあり邪魔に思う事が多い。平等に扱わないと怒る人がいるからやむなくそうなったと思うが話のテンポを崩しているに他ならない。無理にエロゲにしないで一般作にした方が良かったのかも知れない。

フローチャートにより話が可視化されていていつでも好きな場所からやり直せる上にブロックにカーソルを合わせると粗筋とその場面がオート再生される(Ctrlスキップも有効)。尤もこの画面が必要な程分岐は多くなくあくまで便利機能の1つに留まっている。拡縮処理が雑で倍率が低いと潰れてブロック間のつながりが判らない事もある。スキップは一般的なスキップとジャンプの2つあり、前者は平均90ms位と余り速くないが後者で次の選択肢もしくは未読部分に瞬時に飛べるので余り問題にならない。一方操作面はショートカットが少なく殆どの操作をマウスで行う必要があるため快適さからは程遠い。アニメーションはクリックまたはマウスホイールで飛ばせるが無効の設定はない。

もう少しボリュームを増やして終盤をきちんと描ききったら良い作品になったと思うと非常に残念な作品。

しかし一番可愛く感じたのが外見年齢が一番年上の春名先生なのは作品的にどうなのだろうか。アリーセは終始楽しませてくれたが。