話は完結している。それに不満はない。しかしこの作品は商品として完成していない。
主人公が飛行ユニットの飛行実験中に同じように飛行ユニットを装着して墜落しそうになっていた少女を偶然助けた事で話は始まる。
話のテーマは「家族」。どのルートも基本は各ヒロインと家族が抱える問題を解決していく展開。主人公が科学馬鹿なのに無駄に心身共に耐久力が強く言動が積極的なためかなり直情的で痛快さがある。逆に言えばオブラードに包んだ表現や行間を読むようなスタイルが好きな人には合わない。また攻略順が固定されているため選択肢のミスはそのままバッドEDにつながる。
勿論Infinityシリーズを名乗るのでそれだけの話ではないが…それだけの話と言って差し支えない謎の薄さ。考察の必要も創作部分ではなく物理的科学的部分の矛盾点を批判する位しか思いつかない。正直何故シリーズを名乗ったのか苦慮する程でシリーズファンは怒りと呆れを通り越して虚無しか残らないのではないかというレベルの話になっている。抑この作品に従来のシリーズのスタッフが誰1人として関わっていない時点で推して知るべし。
そしてこの作品の最悪たる点は、一度でも通しでプレイすれば気付くバグやミスがそのまま放置されていること。誤字、脱字、脱文、声と文章のミスマッチはまだ可愛い方。本来いる場所とは全く違う場所の背景を表示する(柚子ルートのクライマックスはこれのせいで台無し)。その場にいないキャラの立ち絵を表示する(亡霊のようではっきり言って怖い)。晴れたと言っているのに背景は雨が降ったまま。コスプレ喫茶なのに立ち絵は制服のまま。立ち絵の位置が下に寄り過ぎているため背の低い柚子が生首状態。起動しなくなったスマートフォンが直した描写もないのにいつの間にか起動出来るようになっている。挙げれば切りがない程バグに包まれている。
この作品で褒められるのは声優の演技位。特にシリアスは迫真の演技。たまに悲鳴等でも抑えず頭にキーンと響く事もあるが…。
音楽はエレキギターが主役のロックが多い。初めて聴いた時は見た目と曲のミスマッチを感じたが、聴いている内に不思議と合っていると感じるようになる。曲単独で聴いたらボーカル曲も含めて決して質は悪くない。
システムは従来のサイバーフロント(5pb.と言うべきか)の恋愛ADVシステムを流用しているため必要なものは全て揃っている。スキップは一部を除き軽快で(100ms未満)、このシリーズお馴染みのショートカット機能で各ヒロインルートの冒頭とプロローグ後からプレイ可能。
この作品のプロデューサーである若林氏は発売と同時にツイッターのアカウントを非公開にした。売り逃げする気満々であるのは明らかである。更に2chスレによると修正パッチの公開予定がない事も確定。これを詐欺と言わずして何と言おうか。KOTY候補なのも頷ける。
サイバーフロントはInfinityシリーズの権利を5pb.かレジスタに譲渡して欲しい。尤もここまで貶められたシリーズの権利を今更欲しい所なんてないのかも知れないが。