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Visiongroveさんの未来ノスタルジアの長文感想

ユーザー
Visiongrove
ゲーム
未来ノスタルジア
ブランド
Purple software
得点
75
参照数
1026

一言コメント

杏奈と伊織がさりげなく呟く怖い発言に他の登場人物がズレた突っ込みをしてそれに主人公といじられ役2人が慌てるのを見て楽しむ作品。

長文感想

未来から来たと言う杏奈によって主人公の周りが少しずつ変化していく…という筋書き。

一言で指摘した通り会話の中心はズレたコメディで、これが個別ルートに入っても続くので合わないと非常に辛い。逆に言えば個別ルートに入っても他のヒロインは勿論脇役も総出でわいわい会話してくれるのでEDまでずっと楽しく読んでいられる。飽きなければ、だが。

本筋に絡まない双子は良くある話でシリアスは殆どない。対して本筋に絡む詩、伊織、杏奈は個別ルートの中盤以降でそれなりにある。特に杏奈ルートは何故彼女が未来からやって来たのかを説明するのにかなりの時間を割いているので必然的に多いが何れのルートも長く続く事はなく余り重くならないよう配慮されている。

サブキャラであるかなたと雫が良い味を出していてルートによってはいい雰囲気になる事もあり、シナリオを分岐させる事は可能だと思うがその場面のあるルートのヒロインの性格を考えると洒落にならない修羅場が形成される危険が高い。かなたは工夫次第で実現出来そうな気もするだけに残念ではある。

エロは各ヒロイン毎に3回。フェラチオを含む。おまけシナリオ等はないので全て本編のEDまでに行われる。杏奈と伊織は見事なロケットおっぱいなので刺さる人は刺さるかも知れないが全体的にエロは薄いので過大な期待は禁物。

選択肢はヒナを除き全て共通ルートのみ。ヒナのみ眼鏡の有無を決める選択肢が個別ルート序盤にある。片方を見れば選択直後の数文を除いて何れも既読になるが、もう一方の画像を埋めようとして選択肢スキップを使っても埋まらないので注意。また杏奈ルートの選択肢は初めからプレイしないと出現しない。選択肢でセーブしたデータをロードして入れないと慌てないように。

システムはとにかく痒い所に手が届く仕様。選択肢スキップ、声1.5倍速再生は十分なプレイ時間の確保が難しい人には嬉しいし、日付ジャンプはプレイの間が開いて以前見たシーンが思い出せない時にいつでも指定した日付に戻る事が出来る。モニタの機能に左右されないアスペクト比固定モードもあり、解像度は標準の1024×768、1280×960、1400×1050から選べる。これと拡縮時の補完設定を組み合わせるとグラボの性能にもよるがフルHDモニタでも綺麗な画質でプレイする事が出来る。極端に拡大された立ち絵やイベント絵は流石に補正しきれず少しジャギーが見えてしまうが。ただ項目が多過ぎる故に何処に何があるのか少し判りにくい。最初アイコンの非表示方法が判らず戸惑った。

欠点を羅列すると、4:3なのに立ち絵を無理に大きく表示しようとする場面で面積の不足を補おうと頻繁に左右にパンさせるのは目が非常に疲れる。同じ面積不足をパンの代わりにトランジションで切り換える場面もあり、こちらは更に目が疲れた。また全てのパンや立ち絵のクロスフェード、一部の花びらが舞う演出は画面効果設定や背景動画設定を無効にしても無効にならない。総じて細かい設定が出来る割に負荷の軽減化には殆ど貢献していない。C2D以降ならともかくPentium世代は厳しいかも知れない。

杏奈ルートをクリアすればプレイして良かったと思う人が多いと思うが、そこまでプレイを持続させるためのパンチが足りない感は否めない。世界滅亡のような大それた設定ではなく一個人の信念に基づく行動だから仕方がないが、もう1人シナリオの牽引役となるインパクトの強いキャラがいた方が良かったのかも知れない。それをクロに求めたのは流石に荷が重かったのだろう。