ADVにおまけで脱出ゲームを付けたような構成。脱出部分は小学生でもクリア出来るレベル、ADV部分は最後の最後まで謎が放置されるためバッドEDスパイラルに陥っても粘る根気が必要。
まず初めにこの作品は流血表現(壁一面に飛び散った血糊、血溜まりの中の死体等)があるので耐性のない人は回避。また文章でその状況を事細かに描写しているので想像力旺盛な人は気分が悪くなる恐れがあるので注意。
突然拉致されてノナリーゲームなるものをやらされる事になった主人公達を無事脱出させるのが目的。文章を読み進めるADV部分と仕掛けを解いて先に進むための脱出部分の2つで構成される。
脱出部分は謎解きに何度も失敗していると仲間がヒントをくれるのでベストEDルートの最後(ここで物を調べる時の仲間の反応は何故か変。興味のある人は同じ所を何度もしつこく調べてみるといい)を除けば時間をかければ誰でもクリア出来る難易度となっている。逆に言えば難易度は非常に低いのでプレイヤーを唸らせる謎解きを脱出部分に求めているのなら回避推奨。テンキーで数字入力する謎解きの頻度が非常に高く、プレイを進める程つまらなくなっていく。仲間のヒントを無効にする設定が欲しかったが、仮にそれがあったとしても元々の難易度の低さは変わらない。タッチ操作の中に操作性に難のあるものや、そもそもタッチペンで操作する必要のないものを無理矢理タッチ操作させているものもあり快適とは言い難い。また人が一生懸命仕掛けを解いている途中で突然仲間が蘊蓄を延々と語り始めるのが鬱陶しい。しかもその途中で重要なシナリオ分岐となる選択肢が出る事もある。謎を解く時は謎解きに集中させて欲しい。
キャラデザインは万人向けを狙ってか可もなし不可もなし。ただ八代の露出度は高め。一部立ち絵がアニメーションするが余り効果的に使われていない。背景は綺麗だが全体的に暗めなので場合によっては仕掛けを見落とす可能性も。
システムは一見快適なようで実際はそれが徒になっている。文章は一括表示出来ない上に一度読んだ上でクリアしてクリア情報をセーブするまでスキップ出来ないため同じ所を何度も調べようとした時に非常に苛々する。そしていざ文章スキップ出来るようになって方向キーによるショートカット操作を交えて使っていると文章をスキップしたり普通に読んだりするつもりが右(左)に移動したり文章履歴に入ったりしてしまう誤爆が頻発するようになる。セーブする度にゲームを終了するが訊いてくるのも鬱陶しい。
EDはどの扉を通り、どのような選択肢を選んだかで決まるため、そのどちらかに問題があると容赦なくバッドEDとなる。情報の少ないプレイ序盤は何が分岐に影響するか当然判らないため必然的にバッドEDスパイラルになり易い。自分の場合最初の6回は全てバッドEDで正直この時点で投げ出しかけた。特定のED後に見られる予告編動画と一度クリアした脱出部分をいつでもプレイ出来る「脱出の記憶」の並びは救済措置レベルのヒントなので良く見て欲しい。但しそれでもEDの見る順番によってはベストEDを見るための手順を誤解して無駄な周回プレイをしてしまう恐れがあるので注意。実際自分はそれで5回分の時間を無駄にした。
シナリオは全てのEDを見れば凄いと言えるがそれでも自分のクリア直後の感想は「意地悪な引っかけクイズが解けた後」のような素直に賞賛出来ないものだった。原因はシナリオそのものが余りにも非現実的である事と設定の後出しが多過ぎて前提条件が完全に崩壊して無意味と化している事。このため真相が明らかになっても「ふーん、あっそう」とあっさり流してしまい、クリアした気がしない。この作品から得られる「凄い」は「シナリオ終盤で前提条件(システム)を全否定してシナリオを再構成するなんて凄いね」の凄いに他ならない。おまけに故意に考察を発生させるような場面を挟んで無理矢理プレイヤーに考察を迫るような描写もあり、シナリオとしては最低最悪としか言いようがない。プレイヤーを弄ぶような物書きをするなら即刻ライターを辞めろ。二度とゲームに関わるな。
シナリオは最悪、脱出部分もつまらない。どちらの力の入れ方も中途半端でどちらを好むユーザーにも受け入れられるとは思えない。