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VisiongroveさんのI/O revision IIの長文感想

ユーザー
Visiongrove
ゲーム
I/O revision II
ブランド
アスガルド
得点
50
参照数
2144

一言コメント

物語の登場人物はライターの手の上で踊る駒に過ぎない。そこに偶然はない。

長文感想

初めに、この作品は一部のルートを除いて終盤に近づく程流血シーン(イベント絵あり)やスプラッタな文章表現が増えるので、耐性のない人や想像力旺盛な人は回避する事を推奨。ギャルゲーでもない(恋愛主体ではない)ので注意。

文章上は偶然のように書いていても白々しさしか伝わって来ない。全てが理詰めで息苦しさすら覚える。感覚的には『YU-NO』のシナリオに近いだろうか。キャラは完全に記号。ライターの思う通りに動くプログラムのような存在。故に感情移入などと言うものは湧き上がらない。

かのinfinityシリーズを書いたライターだけあって今回も小難しい理論を沢山使っているが、そのネタに新鮮味が全くない。『Ever17』、『Remember11』、『エースコンバット3』、『最果てのイマ』からの流用だけで目新しいものは皆無と言っていい。各終盤にやたらとバイオレンスシーンが多いのは田中ロミオが原案のせいだろう。尤も世のライターはネタが尽きると安易に暴力描写に走る傾向があるので必然だったのかも知れないが。しかもその描写が兵器蘊蓄中心で実際の戦闘描写は「コピペ」。嘘みたいに同じ文章を繰り返し使っている。戦闘を書く自信がないのなら潔く切り捨ててもっと別の場面に注力すべき。一部のルートで時系列に沿っていないが一番最後に出現するルートをクリアすれば時系列の悩みを一気に解消する項目がExtraに追加されるので心配は無用。

絵柄は正直少女漫画みたいな線の細い描き方で受け付けなかった。OHPの画像から受ける印象と実際のプレイ画面から受ける印象は全く異なると言っても過言ではない。しかも立ち絵のコントラストがきつ過ぎて目は疲れるし蝋人形のように表情はないしでプレイ中は殆ど文章ウィンドウしか見ていなかった。イベント絵はアップもあるので気味の悪さが益々強調されて見ていられない。

PC版が初プレイなのでPS2版との違いは良く解らないが、簡単に調べた限りでは立ち絵のないキャラへの立ち絵の追加(チキチキータ、ネルガル等)、イベント絵の追加、PS2版発売後の販促絵等の追加等。一方でPS2版ではハードで処理していた部分(挿入歌の場面等)はスペックの読めないPCの現状を考慮してか大半が動画に差し替えられている。

システムはWill製(PULLTOP等のブランドを抱えるエロゲ会社)。主な仕様は『てとてトライオン!』と殆ど変わらないのでそちらのレビューを参照。ただゲームパッドの3ボタンはメニュー呼び出しになっているし、バグは現時点で1つも確認していない。また文章スキップは一部の重い演出(PCスペックに左右される可能性あり)を除いて超高速。大体40~350ms間隔で平均でも60ms未満。一番最後のルートで誤字を1個所確認している。

フルコンプに約27時間。システムの都合上フラグ調整のために一度見たEDをもう一度見る必要もあるため根気が必要。バッドEDの中には判りにくい条件もある。ただ選択肢の数はシナリオ量の割に異常に少なく、一度クリアしたルートはショートカットが使えるので重要なのは「理系ネタに対して拒否反応を示さないか」「兵器蘊蓄に耐えられるか」に尽きる。これらをまともに読んでも一番最後のルートを理解するのは難しいと思われるが。