制作スタッフの目指したものは何だったのか。
ヒロインによってシナリオの密度(長さ、ではない)が違い過ぎる。基本的に対決、大会へ向けての準備活動が物語のメインだが、都合が良過ぎる位に少数精鋭な人材が集まっていて殆ど苦労話はない。たまに困難に突き当たってもそれはないだろう、と言いたくなるようなご都合主義であっさり解決。故にそこに人間ドラマが生まれない。5人の内取敢えず読めるレベルだったのは朋夏と会長ルートだけだった。単純にシナリオの完成度を評価するなら会長>朋夏>陽向>麻里矢>湖景だが、作風を考慮すると朋夏>陽向>麻里矢>湖景>会長と、正反対になってしまう。新規参入にありがちな「欲張り過ぎてコンセプトは不明瞭」と言えるが、大会描写のダイジェスト振りを見ると「今回はこの位でいいや」と投げやりになっている気すら窺える。きっとライターは自ら書いた教官の言葉に苦笑いを浮かべているのではないだろうか。
ヒロイン達自体に魅力はあるが、基本部活動ゲーなのでその描写に色気は殆どない。萌えを期待させる要素は皆無と言ってもいい(「可愛い」と思える要素はあるが)。この点は良くも悪くも真っ当なギャルゲーを目指しているようなので、キャラ目的で購入する人には合わないと思われる。作画に殆ど乱れがなく質が高いだけに惜しい。
音楽はメリハリのあるさっぱりとしたポップス及びダンスポップ系が多い。ただ1曲、「JOY」と言う曲だけは仰々しくて耳障りだった。
システムは吉里吉里2。ゲームパッド対応はシステムが標準で備える機能を有効にしているだけなので自由にキーカスタマイズしたい人はエンジン設定.exeからゲームパッドを無効にしてからJoyToKey等を使えば良い。解像度は1024×576の16:9。通常は左半分に立ち絵、右半分に文章、2人以上とのかけ合いは右下に小さく顔グラフィックが表示される。イベント時は一般的な作品同様画面下に文章が表示される。システム面で大きな不満はないが敢えて上げるならスキップが遅い事。大体175~300ms間隔の表示で、立ち絵が切り替わる時やSDキャラが表示される講座の場面で特に遅さが目立つ。共通シーンが比較的長いので少し苦痛だった。フォントの変更がメニューバーからしか行えないがそれ程頻繁に変更する項目ではないので許容範囲。尚標準設定ではOS標準フォントを使うようなのでXPとVistaでは使われるフォントが異なると思われる(OHPの動画レポートは恐らくVista)。それとこれは大した事ではないが、タイトルや環境設定の項目名を英語にする必要性が全く感じられない。日本語の説明は表示されるが一目で理解出来ないし処理も無駄なので止めてもらいたい。またプレイ中にボタンを連打すると画面が固まって次の瞬間ワープしたように画像が表示される事もあった。適切にキューをクリアして欲しい。
とにもかくにもシナリオが全ての良素材を駄目にしたとしか言いようがない。OHPのミニゲームの方が時間を忘れて熱中出来るなんて本末転倒だとは思わないか?