ショートケーキに砂糖を1袋振りかけたような甘い世界のファンタジー。シリアスも燃える所も一応あるが、それらがおまけに思える程甘さに満ちている。
エールというRPGで言う所の魔力やマナで満ちる世界で依頼を熟す主人公達冒険者のお話。エールによって動くオートマタ(自動人形)のミネットが流星による強大なエールによって目覚めた事で物語は動き始める。
攻略対象全員が主人公を好いていてエロ発言が出ても多少パニックになる程度で険悪な状態になる事が皆無のため終始甘い展開が続く。但し恋愛感情剥き出しで来るヒロインはいなく(リトスはそれに近いが沈着冷静なためそう感じない)さっぱりとした甘さでダレる事はないはず。しかしそれが人数分周回するとなると話は別。多分普通の人なら1~2周が限界でそれ以上は胸焼けしてプレイ意欲が失せる可能性が高い。自身もアニエスとチェルシーまではまともに話を読んでいたが残りのヒロインは惰性でクリアして正直余り記憶に残っていない。
全ての行動は選択肢を選ぶだけでRPGのような難しさはない。中盤までは「来ているクエスト(依頼)を選択→場合によっては戦闘」を繰り返す形で進む。クエストの背景画像はポリゴン表示で一部探索場所を地図や背景上から選択する場面もある。クエスト中にも選択肢があり、これによってその後出現するクエストやどのヒロインのルートになるかが決まる。ヒロイン視点の章末フリートークでは影響しないようだが選択可能なヒロインはクエストとその選択で決まる。戦闘も選択肢を選ぶのみでヒロイン達の発言や敵の動作で行動が予測可能なのでラスボス戦を除けば難しくないが負けた場合ゲームオーバーとなるものもある。その場合も戦闘頭から再開可能で選択肢に「オート」が加わる救済措置も一応ある。一度勝利した戦闘はスキップ可能。
システムはCatSystem2で解像度は800×600。Pentium4世代のCPUや内蔵GPUでのプレイは厳しい(参考までに昔体験版をCeleron2.4GHz+Intel865G、演出速度x4でプレイしても激遅かつCPU使用率常に100%)。最低でもC2D世代以降のCPUや内蔵GPUが望ましい。ワイドモニタ側でアスペクト比調整機能がなくてもゲーム側で補正する機能がある。画像演出速度等必要なものは全て揃っているが、この時点(2009年1月)では未完成な部分も一部ある。選択肢スキップはアイキャッチで必ず止まる。画像演出はボタンで飛ばせるのにアイキャッチはスキップでしか飛ばせない。ゲームパッドが突然反応しなくなったりボタン設定が自由に行えるのに4ボタンまでしか正常に反応しなかったりする。因みに5ボタン以降は自分の環境では設定したボタンを押しながら方向キー(正確にはAxis)を押すと正常に動作した。尚、地図上の選択等一部の操作はゲームパッドでは行えない。スキップ速度は立ち絵の状態により可変(100ms未満~250ms位)。若干声の遅延があるためかボタン設定でキーリピートを有効にした場合ボタンを押しっ放しにすると声は再生されないが辛うじて文章が読める速度にはなるので内容を理解しつつ飛ばしたい時に便利。
個人的に気になったのは展開の冗長さ。メイン4ルートではほぼ全員のヒロインが喋るため1つの事柄に対して中々話が進展しない。トルティア姉妹が加わるとリトスの発言性質上益々展開が冗長になり鬱陶しくて何度か丸ごと飛ばした事がある。また展開上一刻の猶予もない時に如何にも「私は格好良い台詞を言うために登場しました」的脇役が出てきて延々と己の価値観を吐き続ける事があり、ライターは自分が書いた話を本当に理解出来ているのか首を傾げる事もあった。クエストも一部ルート固定のものを除いて全ルート共通のため周回を重ねると地図で探索場所を指定するクエストが非常に面倒に感じた。敵の出ないあるクエストだけはメイン4ルートをクリアすると選択肢でスキップ出来る仕様も謎。戦闘をスキップするか否かは2周目以降環境設定で予め設定出来ると良かった。
あちこち冒険した割には作品の舞台であるエルタリアに関して殆ど判らなかったというのが正直な所。語られる話の範囲が非常に狭い(例えばクランがOasisとトルティアC以外一切出てこない、収穫祭で一般民がどんな風に楽しんでいるのか全く判らない等)ために生活感がまるで感じられないのがその原因だろう。何だか勿体ない作品である。