小さな箱庭で起きる壮大な物語
ストーリーが素晴らしかった
ミドルプライスらしく短いものではあるものの、
主題である葬送の鐘を巡るストーリーに注力されており無駄がなくすっきり読める
大雑把に分けると前半ダアトの物語、後半姫子の物語になる
特に前半、ダアトの物語が凄く好きになった
アンドロイド、宇宙開発、電脳世界
未来世界を描いたSFではよく見る単語ながら、本作での組み合わせはなかなか特殊である
人類はみな電脳世界で暮らしている、のに、外宇宙への進出はしたい
人型アンドロイドは肉体知性共に人類を超えている、のに、人類の方が優れている
部品だけ繋げると矛盾しているような設定が、歴史から経緯を説明されるとすんなり受け入れられる
割と説明パートは長い。が、何か所にも分けて入れてあるうえに、
これってこうなんじゃないの?と疑問に思ったタイミングで入るので読んでいて苦痛にならなかった
そして幽霊
SFに対して異物感の強いこの存在が、ストーリーの軸となって進む
ダアトの奉仕対象が人類ではなく幽霊になるのがとても面白いと思った
アンドロイドであるダアトが人類に奉仕するのでは予定調和すぎる
幽霊は人類の残滓であり、人類の未来の可能性であり、また現在の障害でもある
ダアトが奉仕する理由、逆に、奉仕しなくていい理由。そして奉仕したいと考える理由
全てがつまったこの幽霊だからこそ、ダアトの行動が個性として現れていたように思える
冒頭の八重ちゃんの話はアンドロイド・ダアトと幽霊の関係性が全て入っていた
この時点でダアトが大好きなキャラになってしまい、読み進めるのが楽しくて仕方なかった
そして後半
冒頭からチラ見せしていた謎が明かされていき、姫子の過去が明らかになる
ここからは一気にエンディングに駆け抜けていく
ミドルプライスで本当に正解だったと思うのが、この一気に行くところで、
何か一つでも余計なエピソードを挟んだらめちゃめちゃ興ざめしたに違いない
ラスト、姫子が二人のアンドロイドへ想いを伝えるところで凄く感動しました
とてもいい作品に出会えてよかったです