現在から見ると流石に古いか……
やや古びた感は否めませんね。絵柄もシステムも、現在ならばもう少し洗練できた事でしょう。
で、時代に関係なく評価の対象となるシナリオですが、そこそこいいです。少なくとも、長時間プレイでありながら時間を無駄にした感じは受けません。
難を言うなら、視点があまり定まってないシナリオという気がしました。視点の主=主人公、と考えると、都合3人の主人公がそれぞれの視点でストーリーを追います(と言ってしまっていいでしょう)。ところが、物語のテーマを追ってみると、主人公は主体ではなくせいぜい『重要人物』どまりなんですね。極端な話、狂言回しに近いものがあります。
AIRはいくつかの家族や時代の物語の集合として語られていますが、それぞれの物語を濃密に煮詰めた結果、主人公の立場が『余所者』以外の場所には無くなってしまった感じです。
その『余所者』感がなくなるのは最後の最後なのですが、主人公が物語の中に確固とした立ち位置を獲得したとき、プレイヤーは完全な第三者として主人公の姿を見ることになります。
物語性を妥協無く追求した結果、そのフィニッシュに主人公をも『プレイヤーの分身』ではなく『物語の中の登場人物』として扱わざるを得なかったクリエイターの葛藤が見て取れるようです。
AIRを貫くバックボーンはあくまで『物語』であって『主人公』ではない。それが、あの突き放したようなエンディングにつながっているのでしょう。