一番好みのキャラを最初に攻略するのをおすすめします+コウ√の長めの感想
自分はLivexEvilは先に熱砂に手を出しました。
前作で攻略対象だったケンショウさんか主役です。今回は彼も攻めたり受けたりします。
前作の攻略対象で攻めのみだったキャラ達にも受けルートがあります。攻略対象を受けにしたかったユーザーに優しい仕様……?
物語の本筋が全ルートに影響を与えるため、2周目以降のルートはハンコ味を感じてしまいます。
なので初見ルートで本命を選ぶのがおすすめです。
僕はコウ目的でプレイしたのでケンショウ×コウを最初にやりました。シナリオ自体は丁寧で、敵対する二人が次第に心の中では打ち解けていく展開が熱くてかなり好みでした。
ED後の外伝であるドラマCDや雑誌も買いました(笑)
点数は大分迷ったのですが、自分の中ではコウルートがかなり良かったのでちょっと高めにつけてます。
以下の長文はプレイ当時、コウ√がかなり気に入ったために書き殴った感想やら考察?やらです。
当時の原文ママで、拙い文章です。かつゲーム本編の文章の引用も含めます。
折角なのでここに供養していきます。
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●コウ・テラカド√【On Your Mark】(+ノーマルエンド)
1番目に攻略。リバ可能。頻出ワードは「身代わり」もしくは「瞳」関連の単語。
第一印象からクリア後まで一貫して一番好きなキャラ。三木さんは兄貴分がハマり役ですね。灼熱だと頼りになる年上の相棒ですが、熱砂では主人公よりも年下だからか包容力のあるツンツンツンデレに。
コウはエデマに属する潜入捜査員で元工作兵。整備工の一人としてプロメテウスの本拠地であるプロントに正面から入り込んできます。互いの素性を知りつつも素知らぬ顔で交流しますが、初めは険悪な空気でしたね。
ただ彼はお人好しで面倒見が良い性分なので、中盤で街の人々が掌返しでプロメテウスを村八分にし整備工の人々もプロントに来なくなる中、一人だけほぼ毎日通って設備を修理してくれるんですよ。
その理由は本来の任務である諜報もあれど、「テロリストは悪だ、けれどケンショウやプロメテウスは悪人ではないのではないか?」という心境の変化からで。
最初はテロリストに対し激しい嫌悪感すら抱いていたのに、風評被害で立場が悪くなりつつあるプロメテウスのメンバーを逆に心配してくれます。いやこんなん俺からの好感度も上昇ですわ。良い奴すぎる。
ケンショウとの距離感もとても良かった。敵対する立場なのでやり取りは殺伐でも、29歳と28歳で年齢の近い大人同士だからかとても落ち着いて衝突してくれるので安心感がありました。言い争いの際も基本的にどちらも感情の抑えどころを弁えているし。だからこそ終盤で激昂したケンショウが思わず本音を曝け出して以降、互いの距離が一気に縮まる過程が光りました。
以下本編から引用
▽パレード4日前
「……貴様に、分かるか。あの若い兵士を殺した男が、その身の内に巣食わせていた憎悪の醜さが、貴様に分かるか?」
殺してやる――憎しみに憑かれた餓鬼の目をしていた。
まるで突きつけられた鏡。
あの男は、俺だ。
「人を殺したい程の憎しみを抱えた事があるか?気が狂う程に、誰かを憎悪した事が?憎悪することが己の唯一の生きる道だと、そう感じた事が――貴様には、あるのか。
……貴様に、分かるはずがない」
「――それでも。
もしも誰かを、殺してやりたい程に憎んだとしても。……そんなもん……仲間を死なせていい理由には、これっぽっちもなんねぇよ……」
▽2日前
「……お前なら、どうする。」
「え……?」
「自分の中に、どんな事をしても埋めることの出来ない虚ろな穴が空いていて――それを隠す術が、その穴を空けた相手を憎む事以外に見出だせないとしたら……
そこに向かう以外に生きるべき意味も分からず……かといって、相手をこの世界にのうのうと逃したまま、自ら命を断つことも出来ず……
他人を巻き沿いにするようなやり方で、復讐の道を進む方法でしか、生きる術が見つけられないとしたら……お前は、どうする……」
「……」
「お前の言うように。そんなものは、他人を踏みつけにしていい理由にはならないのだろう。だが――……」
――だが。だからといって、他に取るべき方法もわからない。
この土壇場に来て、俺はプロメテウスのメンバーたちを囮として使うことに迷いを感じ始めている。
しかし――一方で、己の抱える憎しみも、虚ろな穴も、消える事なくこの身の内にあるのだ。
進むことも、戻ることも出来ない。他に選ぶべき道は、濃い霧に隠されて見えない。
――どうすれば良いのか。分からない。
暗闇の淵をあてなく彷徨い続けるような絶望に、魂を喰らわれそうになる。
そこから逃れ出るためには。
「……弱さだと謗られようが……それを選ぶしか、俺には出来ない……」
――結局。これまで己が踏んできた道を、今更償う事も出来なければ、この先の道を変える事も、やはり、出来はしないのだ。
この虚ろを抱えている限り。憎しみが、それを埋める限り。そして――俺がその憎しみに、こうして縋りついている限り。
▽1日前
「……アンタ、顔に出ないから分かりづらいけど……実は相当、負けず嫌い――だろ」
返す言葉が出てこずに、眉を寄せて答える。テラカドが、ふと、浮かべた苦笑を和らげた。
「どうやら、単純なことまでわざわざ複雑に考えちまう性格らしいな。性質が悪ぃのは、そんな性格の癖に、肝心なことに関しては絶望的に足りてねぇって事だ。……つまり、直訳すればこういう事、なんだろ?」
テラカドの顔から笑みが消える。誤魔化しのない真っ直ぐな視線に正面から見詰められて、息の詰まるような感覚があった。
「――助けてくれ
……なぁ。俺は、間違ってるか?」
その一言が。すとん、と。俺の中にぽっかりと空いた、何もない穴に落ちてくる。
言葉を失った俺に、テラカドが複雑な表情を浮かべる。それは、呆れているようにも――そしてひどく、悲しげにも、見えた。
引き込まれるように、見詰め返してしまう。
「その一言が言えてればアンタ―― ――お前、こんな所まで来なくて済んだのかもしれないのにな。……ウライ」
(引用ここまで)
特に「助けてくれ」の下りは作中で一、二を争う程に好きな名場面。この一言は本当に凄いな。
僕はここのシーンを、ケンショウの虚無に流れ込んで溝を埋めたというよりも、奇跡のような確率で型がピッタリ嵌まって完成したと解釈しています。「埋める」と「嵌まる」じゃニュアンスが全然違うと思う。
ケンショウは僕からしても「端から見れば訳が分からない奴。でも実際は、何でもかんでも一人で抱え込む度に矛盾や葛藤が痛くて痛くて仕方がない癖に、自分も周りも欺くことでその痛みを殺してきた、孤独でいることで達観しようとしている男」です。
要するに心身ともに傷だらけの癖に人に寄りかかるのが苦手なんですよ、この強面は。共犯者のヤエタナに対してすら信用はしていても信頼には至らない、ある種のビジネスライクみたいな共生関係ですし。
そんな狡くて臆病な彼だから、コウの真っ直ぐさや清冽さを見せつけられる度に自分の内に燻る罪悪感、劣等感と言った隠してきた弱さを嫌という程に自覚してしまう。
コウという男はケンショウが持ちえない輝きの塊のような奴です。彼からぶつけられる言葉のひとつひとつが耳にこびりついて離れない。
非情であれ冷酷であれと己に言い聞かせて生きてきたケンショウの決意が、突然現れたひとりの男に根底から揺さぶられるんです。
コウにとってもケンショウは真意を掴めない奴で、上の会話(終盤手前)に至るまで「一体何考えているんだよ」「お前には関係ない」の一点張りが続きます。
頭では立場や状況を理解しているのに互いのことを放っておけず、摩擦を起こしながらも一歩一歩着実に絆を深めていく。本編開始前は接点のない赤の他人だったけれど、何もかもがあまりにも違いすぎるコウだからこそ、ケンショウの虚無に嵌まる”足りない欠片”になりえたんじゃないかと僕は思っています。
若干余談。
初見をコウ√にして良かったと思う理由が、僕自身が「ケンショウ、本当のところ、お前自身はそこんとこどう思っているの?」と感じた疑問を、その場でコウが冷静かつ直球で問い質してくれたおかげで、ケンショウの偽りのない真意をむき出しの感情面から知れたからで。
ケンショウとコウの両者の視点に感情移入しつつ作中の目まぐるしい展開について行くことができたので、読み手からしても臨場感があったんです。話に没入できたのもこれが大きかったんじゃないかな。
話の全容もケンショウの人となりも初見ですんなりと把握できて、他ルート攻略時の思考の助けにもなってくれました。
以下はエンディングについて。BADの方から先に触れます。墓地で言い争う最中敵であるケンショウを狙撃から庇うという結末は、本編中盤で”ケンショウを庇って銃殺された一般兵”と”ケンショウに対する憎悪故に事を起こした気狂いの兵士”を巡って「身代わりについて」大きな衝突をした彼らへの皮肉が効いてますね。このエンディングに関してはユウシBADと若干コピペになっているのが残念ではありますが、「身代わり」というキーワードの落とし込み方という点では好きです。コウは最期に何を伝えたかったのだろうか。
個人的には、誰とも深い絆を結ばずに革命を成功させたノーマルENDの対極に位置するのがコウGOODENDかと。ノーマルENDと個別GOODの分岐点は「当初の計画通りプロメテウスメンバーを犠牲にするか否か」「憎悪に身を任せてサキムラを射殺するか否か」ですが、個別ルートではコウGOODのみ、ノーマルと同じくケンショウが軍に復帰します。ただしケンショウの在り方が真逆なんですよ。
ノーマルENDのケンショウは、犠牲を厭わずに走り続けて復讐を遂げてしまったことで、憎しみの輪廻から逃れられなくなってしまう。一線を越えて、戻れない所まで歪んでしまった。そんな拷問に似た痛みすらいつしか暗い喜悦へと変わっていくのでしょう、あのサキムラのように。物語前半でケンショウが零した「憎しみに憑かれた人間というのは、醜いものですね」という台詞の重さをここで痛感しました。
一方でコウGOODのケンショウは、自分が犯してきた罪や切り捨ててきたものたちへの贖罪を胸に、懸命に前を進む決意をします。そしてサキムラの自害の一報を受けて唯一エピローグでサキムラに対しての心境を吐露します。「自らの抱える闇の中に逃げることしか出来なかった。あの男を導き支える手は、最期まで与えられなかった。――助けを求められる、手は。あの男は、俺だ。今、俺の背中を支える存在に、出会う事の出来なかった俺の姿だ。」と、憎悪の対象だったあのサキムラに対して悲しみを覚えるんです。
両者を比べると、二人のケンショウは同じ立場に落ち着いていても、そこから先は天地ほど差がありますね。
コウGOODを迎えたケンショウが、自分の罪の重さや得る分だけ失う恐怖を抱きつつも真っ当な人間として歩む道を選べるのは、コウが側に居てくれるからで。「休暇が取れたら行きたい場所(故郷のカイエン)があるから付き合え」というケンショウの言い回しに「付き合えじゃなくて、付き合ってくれだろ」「こう言えばいい。”一緒に行こう”」と返すコウのなんと頼もしいことか!ケンショウもそんなコウの瞳の中に答えを得ていますしね。雑誌掲載の後日談でも垣間見ることができますが、コウの眼差しこそがケンショウに変化をもたらす道導なんですよ。ここから先も対等な存在として隣に立って二人で生きていくんだろうな、すっかりケンショウ×コウ固定派で落ち着きました。
と、ここまで語っておいて、最後にこんな話をするのも酷いものですが。
「シナリオの文章に適した差分が無い。そこは入れろよ」と不満を漏らしていたシーンがあります。
コウ√での情事シーンの話です。始発に乗らなきゃいけないっつってんのにモーテルに無理矢理連れ込んで、自分が攻める方を選ぶと「胸の奥深い場所から、衝動が突き上げた。」「――奪いたい、という凶暴な欲へと変わってゆく」と、抵抗するコウを縛り上げてR-18に突入するシーンの話です。ケンショウ、君は割と獣の衝動の如く発情するなあだとか、始発の時間が迫ってるっつってんだろ!だとか色々思いましたがそこは置いといて。
↓このシーン。
その目を覗き込んだ瞬間――
俺は、知った。
奪うのではない。
むしろ、奪われたのは――己だ。
俺も……。いや違うそうじゃない。
ここのスチルに目を開いた差分は入れて欲しかったというだけの話です。丁度メッセージウィンドウに顔が隠れているとはいえ、ケンショウからコウに向けては目に関する描写が多いですからね。細けえなって言われそうですが、エロゲ畑は差分が多いので僕は気になったかな。
直前のキスシーンでの金茶色の瞳はとても綺麗でしたってところでコウ√感想のオチをつけます。