本当にすばらしい作品だった。
世界設定や登場人物、またその声、音楽シナリオ、どれをとっても超一流の出来だった。
であるがゆえに不満点が気になってしまう。
一つはかなり言われているようだが、ラストの流れだ。
別に綺麗なハッピーエンドがよかったといっているのではなく、そこに至るまでの展開がそれまでに較べると幾分劣っていたように思う。
ほかの方のレビューを見てみると、様々な指摘があり、納得させられるものも多いのだが、私が思う一番の問題は演出力にあったのではないかと思う。
例えば牢獄の反乱で事態は非常に大きく動いているにもかかわらず、それがあまり伝わっておらず、対岸から傍観しているような感覚がある。
カイムの立ち居地を考えると事実それに近いのかもしれないが、そのせいで盛り上がりに欠けてしまっている。
また最後の場面では背景も動かず、BGMも長くかかりっぱなしで、さらに展開が予想できるがゆえにテンポが悪く感じてしまった。
もう一つは、原画家が戦闘描写を書きなれていなさ過ぎること。
カイムとルキウスが切り結ぶシーンも、せっかくCGを使っているにもかかわらず、不自然な姿勢と勢いのなさで、逆に気分の高揚を妨げてしまっている。
序盤のフィオネがラングを組み伏せるシーンにしてもただの馬乗りになってしまっているし……。
向いていないのか単に経験不足なのかはわからないが、オーガストの過去作に較べて、今作が非常に嗜好にあっていた身としては、今後もこのような作品を作ってもらいたいと思うのだが、その場合はもう少し迫力のある絵を描いてもらえると嬉しく思う。