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Tyrantさんの最果てのイマ フルボイス版の長文感想

ユーザー
Tyrant
ゲーム
最果てのイマ フルボイス版
ブランド
XUSE
得点
84
参照数
818

一言コメント

久しぶりにかなり長い感想と相成りました。過去最長かも・・・。 斎「ぴこーん・・・。」 採 用 。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

さーて・・・感想長くなるぞぉ。

これは否定的な感想が多く出るのも納得ですわ・・・。

私なんて、Chapter毎に自分なりの考察を一々メモって、参照してました。
普通にやったら、一周で理解することなんてまず無理です。




□■ 一人目 ■□

最初は、単に時間軸の跳躍能力、だと予想。
これは大ハズレ。


□■ 三人目以降 ■□

"演算"という単語が出てきたので、以下を予想。

"リンク"や高度な演算能力、観測点の消失の際に出るエラー、
"過負荷による閲覧不可能"というメッセージなどから、
数ある記号文字を高速でパターン配列し、アドレスとして入力。
片っ端から入力したアドレスに飛んでHPの有無を確認し、閲覧する。(なければ未使用の白黒領域へ飛ぶ)

もっと分かりやすく言うと、量子論のお話で、
ありとあらゆる並行世界(可能性)を、その高度演算能力を用いて予想(予知含)し、
それを脳裏に投影、閲覧する能力だ、と解釈してた。

イマとの邂逅は、本来使われる予定のない文字記号の混入によって、
"可能性にすら含まれなかった世界"に接続した結果だと踏んでた。
後付するところの、再現性のないバグというもの。

これまた大ハズレ・・・。


ここでお手上げ。降参しました。
戦争編へ突入。



□■ 戦争編 ■□


作品に対する評価がうなぎのぼりに。


とんでもない妄想力、想像力、応用力だ。
これ構想何年?と問わずにはいられない。

大抵の作品はですね、つつけば崩れるんですよ。


妄想だけで固めたような作品はとりあえず語るに値しないとして、
こういった、"現実味"も確りと加えた作品というのは、
しょうがないと言えばしょうがないんですが、
どこかに綻びがあって、そこを引っ張れば簡単に崩れ落ちる。

本作においては、それがない、とは言いませんが、
極めて少なくしてある、と言えると思います。


要するに論理武装してるわけです、それも徹底的に。
ま、端的に言って、ロミオさんは変態ってことですね。(ぉぃ


普通に考えたら馬っ鹿馬鹿しい!と切り捨てるようなことでも、
かなり独創的ではありますが、確りとした考察がされていて、
それがプレイヤーに示されています。

たまに脱線してオナニーしてるような考察も見られましたが(十指に満たず
まぁ、ここまで我慢してプレイしてきたプレイヤーなら大丈夫でしょう。



作品全体にライターの手が隙間なく伸びている、と錯覚するほどに、
本作に置いては、隙がない。

作品の悪いとこつつくの大好きな私ですが、
この作品だけはなかなか苦労しました。


物語の深みを増す方法は、意外と単純・・・だけど難解。

その物語の過去、歴史の深度。

その当時を生きたキャラクターの設定、記録、があれば尚良し。
記録については、温度のある記録の方が理解しやすく親しみやすい。

"当時を生きた、人の手によるもの"っていう温度。
これは割りと容易い。


対して、歴史の設定はクセモノ。

設定自体は、非常に簡単。
誰にでもできる。

が、これを違和感なく物語に絡めようと思ったら、
途端難易度が上がる。

歴史が長編であればあるほど、当然深みが増す可能性は上がる。
しかしそれに伴い、当然シナリオに絡めなければならないところが増える。

これはもう、とにかく難しい。
下手したら、シナリオ破綻。リスクが高すぎる。

・・・が、これもやってやれないことはない。


物書きとしての才能のある、なし、を分けるのは、
さらにここに、伏線を回収させる、という作業が加わったとき。

これはもう、才能ないと、ほとんど不可能。
出来たとしても、うならせるような作品は滅多に出てこない。

物語の深み、知識量、
作中に引きずりこむその質の良いテキストと、
伏線の量、その回収の仕方。

このライターは、どれをとっても物書きとして秀才、
それ以上の人物だと思える。

天才、は言いすぎだと思うけどね。



不満・・・として気になった点は、二つ。


● 一つ目 ●

ネットワーク知識関係。

これは・・・苦手な人からしたら、異国語じゃないかね・・・。

多分、これ理解できないって人は、ググった程度で触れられてる内容じゃ
調べても結局理解できないんじゃないだろうか・・・。

単語の意味としての解説と、それに連なるロミオ氏の考察はあったけど、
"それが現実世界に置いて、どういったものだったのか"という詳細は、
結局解説されてなかった。

超常的な能力の結集なんだ!みたいな強引な進め方だった・・・。
まぁ、要するに説明してるようで説明してないと。


WinnyとかShareとかファイル共有ソフトの仕組みをある程度理解してると、
この辺の理解度が深まる。

というか、そういうの苦手な人は、
この辺でギブアップするんじゃないだろうか・・・。
と思える程度には触れてある。

これ分からないと、どういう仕組みで作動している能力か、世界か、が分からない。
この辺はもうちょっと配慮が欲しかったところ。


まぁ、あんまりよく分からなくても、
Chapter-革命 で物語概要を簡単に纏めてくれるリンクがあるので、
あんまり悩まずにやっても大丈夫かと思うけど。



● 二つ目。●

これだけは声高に言っておきたい。


忍が人類の生殺与奪を受け入れるくだり、
葛藤から抜け出すベッドでの抱擁シーンですが、
なんで忍が最後に拠り所にしたのが、千鳥なの?

何故よりによってこいつなのか?
忍が十一年を持って得てきたものは、彼女だったか?
他になかったか?

正直、お前すっこんでろよ?って思いましたよ・・・。

作者が、このキャラに同情的だ、というのは大いに伝わってきましたが、
同情の余地が、一体何処にあるのか、
私には最後までわかりませんでした。

だって、状況が許さなかったとはいえ、全部自業自得じゃん。



■ 総合評価。 ■

これは・・・評価が難しすぎる。

結局、よく分からない矛盾も残されているし、(想像によって補完
普通に難解すぎるシナリオだし、で、
ただスムーズに世界に没頭して作品を楽しみたい人には、
絶対的に向かない。

難解な数学問題を解くと、それだけで脳汁出るような人には向いてるかも。

普通にプレイしたんじゃ、一周で全部理解するとか、
ほとんど無理だし、だのに目茶時間かかるしで、もう・・・。

プレイするなら、メモ取りながらプレイするのをオススメします。

まぁ、一応、
私が過去にプレイした作品との相互点数調整のため、と、
難解ではあるけれど、それなりには楽しめた、ということもあって
この点数にしておきますが、
正直、点数をつけた今になっても、この点数でいいのかどうか迷ってます。


結局、最初から最後まで悩みっぱなしだな・・・。