『輝光翼戦記 天空のユミナ』の外伝とでも言うべき続編。前作が大好きだったユーザ ーであれば間違いなく楽しめると思います。ストーリーおよび戦闘パートはどちらも面白 かったのですが、残念に感じた部分も多く繰り返し遊ぶほどではありませんでした。// ……ところで、ベリダディア編はまだですか?
1. ゲームデザインについて
1.1. 熱中できたけど、いまひとつ物足りない戦闘システム
5つの属性を導入してロールを廃止するなど、前作から戦闘システムを一新しました。
プレイ当初は、敵のスキルと虹法結界を予め調べいろいろ考える事も多く、5つ属性の組
み合わせの最適解を見つけることに四苦八苦していました。ところが、敵の属性色とオー
ダースキル属性がほぼイコールであることに気付き、3体の敵に弱点を突かれない事だけ
に絞ってパーティを選ぶだけにとどめると、スムーズにプレイできるようになりました。
ダメージ効率を大きな矢印で示してくれるため、対戦キャラクターの配置を直感的に選び
易くとても良かったです。
いくつかのチートスキルが……
コロナが中盤以降で習得する「どらごにっく・ぶれす!!」や「龍魂解放」が最大のバ
ランスブレイカーでした。虹法結界を無条件で突き破るのは、もはや戦闘システムを根本
から否定しているに他なりません。これらを封印し、スキルの組み合わせを熟考した戦略
性の高いプレイも、十分に可能ではあります。しかし、彼女のスキルを使わない積極的な
理由(特典)もないため、通常戦闘ではリアクションスキルを回復以外使わず、ボスモン
スターでMPを一気に解放することが常套手段となってしまいました。
ターン制限が欲しい
時間をかけてフィールドスキルで立て直しを図ったり、MPを貯めて強力なスキルで一掃
したりすれば誰でもクリアできてしまうところが、かなり勿体なく感じました。19ある戦
闘マップの中で、ターン制限が設定されたフィールドは彗星騒ぎの『天空からの災厄』の
みでした。単純に12ターンの時間制限を課すだけではなく、
・プレイヤーユニットを移動させないとマップの続きが表示されない(索敵マップ)
・ボスモンスターの配置も分からず、実は2体いる。
といった状況は純粋に面白く、最も緊張感を持ってプレイできたマップでした。
(多くのユーザーに遊んでもらうため、)難易度の観点からは多くのマップにターン制
限を設けるのは望ましくないのかもしれません。しかしながら、せめて『永遠のアセリア
』の頃のようなクリアランクやターンボーナスを実装して欲しかったと思います。
結局のところ……
新しいものを作ることは大変素晴らしいのですが、残念ながら戦闘パートは『ユミナ』
を超えることは出来ませんでした。このルールが決してつまらないわけではありませんが、
敵味方でオーディエンスを共有するシステムがあまりにも素晴らしかったため、一段落ち
る印象が強く残りました。
1.2. 1周目でおなかいっぱいと言うよりも……
エンディングを向かえると、クリアデータを引き継いでブーストモードが遊べるように
なります。しかしながら、敵ユニットのレベルが上がるだけで、エクストラステージのよ
うな追加要素もスコアアタックもありません。ほぼ一本道であり、1周目のプレイで全て
のイベントを通過しているため、やるべき事もなくこれ以上遊ぶ意欲が沸きませんでした。
1.3. まさか「灰かぶり姫じゃなくても」が聴けるとは
前作では戦闘BGMに良曲が多数あったように、その長所は今作でも健在でした。また、
ユミナの歌がフィールドスキルとして実装されたため、「灰かぶり姫じゃなくても」など
数曲がBGMとして流れ、とても懐かしかったです。新曲の「ワンダートキメキ☆システム」
も良い曲でした。
1.4. 素晴らしいSD絵に魅了され
前作に引き続き、こもわた遙華氏の描くSD絵が、この作品をいっそう魅力あるものにし
ていました。SD絵が激しく動く戦闘シーンはカメラワークを含めてとても素晴らしかった
です。一方で、通常グラフィックについてはもう少し頑張って欲しいところです。表情差
分を会話ウィンドウだけではなく、立ち絵自体にも適用することを切望いたします。なお、
今回もCGモードでイベント絵ごとにショートメッセージが聞けるのは嬉しいですね。
2. ストーリーおよびキャラクターについて
2.1. 絆を信じる物語
ループを繰り返すなかで徐々に真夜や能力といった秘密が明らかになっていくのは純粋
に楽しかったです。また単純なループではなく、コロナの力が拡散したことで様々な変化
が起きるところも面白かったです。世界が滅ぶ危機でありながら、綺麗事が不愉快になら
ない緩さをもったよいお話でした。あえて苦言を呈するならば、恋愛方面でもご都合主義
が過ぎたことでしょうか。
どうして好きになったのか分からない
恋愛もとい好きになるきっかけの描写が極端に弱く、えっちシーンへの導入もきわめて
唐突でした。サブヒロインについては、いち早くイベントが発生する兵藤かなめの時点で
諦めればいいのでしょう。たとえそうだとしても、メインヒロインについてはもっと描い
て欲しかったです。特に、コロナがどうしてあれほどにまで統果や刻乃に懐いていたかに
ついては、刷り込み以上のものが提示されず残念でした。
2.2. 主要キャラクターについていろいろと
小田桐統果
厨二病が抜けきらない本作の主人公。友達がいない自虐ネタを繰り広げたり、ヒロイン
達(主にミュリアル)に事実をねじ曲げられ必死にツッコミを入れたりする日常は、過不
及なく楽しむことが出来ました。
彼については仲間のことを真剣に考える優しさや、1人の女性を愛するべきという信条
にかなり好感を持っていました。ところが、最終ループでまさかのハーレムエンドを迎え、
少なからず心にわだかまりが残ります。彼の異性からの好かれ具合は、何が「友達が少な
い」だよと言いたくなるレベルです。
なお、彼が前世の記憶を僅かながら夢として引き継いでいることについては、もう少し
説明して欲しかったように思います。彼も「見切り」など多くのチートスキルを有してい
るのですから、きっと何かあるのでしょう。
天津刻乃
誰にも知れず1人で滅びの刻をループしていた刻乃。統果を助けた翌日に教室へ迎えに
来たときの落胆ぶりなど、彼女の心情を想像すると心に来るものがあります。急に統果を
龍護寺に迎えたり彼のことを好きになったりするのも、彼女にとっては短い時間ではなか
ったからでした。彼の前では顔を赤く染める刻乃が可愛かったですね。
コロナ
シュタッと笑顔で手を挙げたり、「みゃ~」と鳴いたりするコロナがとても可愛かった
です。その割には、龍人ということで虹法結界を問答無用で破壊し尽くすとんでもないキ
ャラクターでした。そんなコロナが大好きだったため、龍の力が拡散して大人しくなって
しまう彼女には、早く元気になって欲しい気持ちでいっぱいでした。
本作は「絆のシミュレーション」と銘打っているように、コロナが統果や刻乃達との絆
を深めて正しく育つことにより、世界の滅びは回避されるというお話でした。第2ループ
にて、世界がこれ以上魔人に襲われないようにするために自殺してしまうエピソードは、
(やや稚拙な趣はありますが)一気に悲しみに襲われましたね。早期から学園に通い諦め
ていた学園祭にも参加するように、ループごとに一歩ずつ学園生活(情操教育?)も進ん
でいたのは楽しかったです。
ミュリアル
自称ただの恋する乙女こと、6人の子育てに失敗したミュリアル。7人目の龍人であるコ
ロナを抱えて、好きだった人の生まれ変わりである統果の元にやって来ました。彼女の自
由さ、あるいは場の空気をわざと破壊尽くす様は凄まじかったですね。自堕落な生活を送
っていた彼女が、コロナの暴走に備えであることを隠しつつ教師として赴任するなど、意
外な場面もありました。
論説部のみなさん
残念な弓那、おふざけの藍、必死にツッコム歩武、苛立つ雲母……。いちいち漫才を挟
み、まったくお話が進まない論説部のみなさんは前作そのままですね。まさに、こことい
ったタイミングで登場し、物語終盤を見事に盛り上げてくれました。ただ、『コロナ』と
いうよりも『ユミナ 外伝』といって差し支えがないくらいの活躍でした。前作の世界観
を理解していないと「わけがわからないよ」となる場面も散見されましたが、おおむね上
手く接続していたと思います。
3.1. 心にとどめておきたい言葉
人間、生きていれば何度も嫌なことに出会うもんだ。
俺にできるのは、自分が嫌だと感じたことを、
せめて他の人にしないくらいだ
―――小田桐 統果
世の中に、仕方のない事なんて何一つない。
諦めたやつが、自分に言い訳するために仕方はなかったことにするんだ
―――小田桐 統果
みんなが幸せなら、ご都合主義でいいんだ。
後はそのために何をするかってことでな
―――小田桐 統果