愛すべき「普通」の人間たち ネタバレ大
粗はある。間違いなく。
綾菜の耳を当てもなく受けあう主人公は圧倒的に無責任だ。部長は(完全にとまでは言わないが)無駄死にだ。
主人公名変更自体はまあいいが、音声は不自然にとび、デフォルト名ですら収録されてない。そもそも古いからシステムは・・・
しかしそんなことはさしたる問題ではない。真の価値は日常にこそある。
これはいくらでもありそうで実はなかなかない、本当にそこで暮らしたい世界。
「普通」の人たち
ごくごく普通の女の子―記号的属性など何もない―綾菜。
若干ボーイッシュ―まったく不自然でないレベルの―美香。
妹―兄べったりでなく周りを見て行動できる―絵理。
少々おっとり―歪なまでの天然ボケなどではない―千秋。
ちょっと現実離れしているが決しておかしくないし、そばにいても不快でない人たち
行動が読めない―電波でも不思議でもなく本当のわがまま―めぐみ。
たまに地が出てたまに深いことを言うマセガキのせな。
地味で苦労人な部長の純。
典型的バカ悪友の良太。
親バカかつほんのちょっと言動が豪快な親父二人。
そうした面々が織り成す、探せば本当にどこかにありそうな楽しい生活。
ゲームという、サファリパークの猛獣のように生身で触れたくない人間ばかりになりがちな世界の中で、ふれあいコーナーの小動物を見ているような安心感がここにある。
キャラ造形の「オリジナリティ」が素晴らしい。
せなや絵理、純に良太に親父二人はお約束的ではあるが、その他はとても珍しい。
綾菜の特徴といえば優等生ぐらい。
天才科学者だとか全国トップの学力だとかでなく、あくまでクラスの優等生。もちろん委員長でもないし、性格もごくごく普通の本当にいい子。
耳の病気は個別シナリオの問題であって日常生活にはなんら影響はない。
何もないということがこんなにも奇異に映るこの業界で、ここまで普通の女の子を送り出した英断はどれだけ賞賛しても足りない。
一方めぐみのキャラたるや他に類を見ない独創性だ。先が読めない。
電波だとか不思議だとかの逃げ道を作らず、ただのきまぐれでわがまま。アイドルのたまごとしてよくありそうで、しかもそれ以上の理由付けがないという稀有な存在。
そのわがままぶりに(良太などはファンになるが)作中でしっかり嫌われるし、私も一言だけどうしても許しがたい発言がある。
その発言は嫉妬からくる自然なものだし、そうしてちゃんとヒロインを憎まれるように作れることもなかなかない。
美香と千秋も、キャラ付け自体はそこまで珍しくもないが、余分なものをゴテゴテと付けない勇気は評価されるべきだ。
残念なのは麻衣。典型的ドジっ娘で一途けなげな後輩。
後輩好きの私としては一番好きなキャラだし、いても決して不快になるわけでもないのだが、いかんせんこの作品では記号的すぎる。
無理やり話に出されてないし、他キャラとの絡みも自然だが、やはり浮いている感は否めない。
家庭版追加キャラがこんなにありきたりなのは、やはりスタッフの意図と私の見たものが違うってことなんだろうかなぁ・・・
シナリオ展開は綾菜を除いてみんな生活していて普通に直面する問題であることもよい。
あくまで日常生活に徹するその姿勢に脱帽する。
OP・EDは旧版含めて傑作揃い。どれもこれも好きだが、
麻衣EDテーマのみ歌詞にオヤジギャグじみた部分があり(ちなみに桑島由一氏作詞)、シナリオ上その歌詞は麻衣が作った(しかも半分ラブレター兼用)ということになってるのが辛い。ここでも麻衣シナリオ担当(だと思う)桑原文彦氏との連携が不十分だったんでないかと邪推してしまう。
原画も好きでこれで片倉真二氏のファンになった。
私はこの作品が大好きで、PS2版をやって、エロを見たくないからやってないけどPC版を2種類とも買って、本体もないのにDC版まで買ったくらい。