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TIGERさんの世界でいちばんNG(ダメ)な恋の長文感想

ユーザー
TIGER
ゲーム
世界でいちばんNG(ダメ)な恋
ブランド
HERMIT
得点
93
参照数
962

一言コメント

『世界でいちばんNGな恋』――この題名、正しくその内容を端的に表現していると言える。この作品には4つの恋があり、愛がある。ただ、それらにはすべて欠落している何かがあるのだ。重く辛いそんな恋を、数々の名作を生み出してきた丸戸氏が、丁寧に、且つ、優しく、書き上げる。そして、『暗』と『明』を交互に繋ぐことで、見事にこの欠落という点を補うことに成功した。

長文感想

最初から、年下の少女に頭が上がらなくて。
ずっと、大人の僕が面倒ばかりかけてしまって。

時には怒りを買い、呆れられ、それでも見捨てられず、
叱ってくれて、励ましてくれて、ずっと待っててくれて。

何度も謝って、何度も恐縮して、何度も泣きそうになったけど、
そのたびに、笑われて、背中を叩かれて、もらい泣きされて。

               【世界でいちばんNGな恋[◇◇ルート最終回]より抜選】



そう、……これは一人の駄目なリストラ男と……

             責任感溢れる幼き少女の物語。


きっとそれは、

読めば心が温かくなる、

そんな物語になっているはず――。





                ◆              ◇





"恋"とは盲目のもの。




たとえそれが、世間一般では禁忌とされていたとしても、

最も愛されたいという欲望が沸き起こってしまっても、

恋することを知らない初初しさだったとしても、

愛するが故の苦渋の決断だったとしても、




きっとそれは、等しく恋なのであり、愛なのであると思う。





この作品には4つの恋があり、愛がある。





ただ、他の作品達と少し違うのは……


この恋……すべて何かが欠落しているのである。





       『世界でいちばんNGな恋』





この題名、それを端的に示していると言える。






恋の欠落…。



不思議と胸に刺さるものを感じるのは何故だろう。

どこかしら、不安が生まれてしまうのは何故だろう。




答えは明白だ。





恋の欠落…

それは乃ち、幸せが実らないことと同義している。





恋や愛に欠落を持ちながらして、

永い時を以て、幸せを勝ち取ることなど不可能だ。





それがゲーム内でなかろうと、


終わり方が一時の幸せであろうと、





何処かで必ず挫折する……それは自明の理である。







では、この作品はどうなのであろうか?






私ははっきりと断言出来る。



彼女たちの恋……愛は、"幸せ"という実に成就したことだろう、と。








全ての立役者は、ライター丸戸氏によるものだ。


『暗』と『明』を交互に繋ぐことで、見事にこの欠落という点を補うことに成功した。

重く苦しい場面でも、それ自体が、幸せのための伏線であったりもする。









 理「どん底まで落ち込んだら… 最後に…希望が残ってた」
 
                  【世界でいちばんNGな恋[最終回]より抜選】






きっと丸戸氏だからこそ、

この『NGな恋』を幸せに出来るのだと思う。


見事にライターの術中に嵌ってしまった、としか言い様がないものだ。






                ◆              ◇



『美都子』


『麻実』





彼女たちの恋を、そして愛を……。





二人ともに共通して同じものがあるように、譲れないものもある…。




似ているからこそ、


分かってしまうからこそ、






そう……だから『NGな恋』なのだ。












 美都子「うるさいなぁうるさいなぁうるさいなぁ!

     五年後だって愛してるよ! 100年後だって愛してるよ!

     だから今でもいいじゃん! 好きなんだから仕方ないじゃん!」


                 【世界でいちばんNGな恋[◇◇ルート最終回]より抜選】














 麻実「一生モノの恋なんて信じて、

       それで結局壊れちゃったら… 

           どれだけ悲しいか、わかる?」


                 【世界でいちばんNGな恋[◇◇ルート最終回]より抜選】









苦しかった。


彼女たちの想いが、画面越しにまでも伝わってきた。





辛くて、もう止めたくて、だけど心は思い通りにいかなくて、




何度も恋を諦めようと、

相手の本当の幸せを思おうと、






だけど……恋してしまう、愛してしまう……。







きっとそれは仕方がないことなのだと思う。






理由なんていらない……そんなもの後からでも付け足すことが出来る。





だからこそ、二人の恋の行く末を目撃して欲しい。

もしかしたら、心打たれ、涙してしまうかもしれない。

ここまで言うのは過剰だろう、と思うかもしれない。





けれど……











今年一番の出来には間違いない……それは私なりの事実なのである。



-REVIEW END-




時の降る街。】【http://blue2matiger.blog96.fc2.com/
体験版レビューなどもしてるんで是非。