『世界でいちばんNGな恋』――この題名、正しくその内容を端的に表現していると言える。この作品には4つの恋があり、愛がある。ただ、それらにはすべて欠落している何かがあるのだ。重く辛いそんな恋を、数々の名作を生み出してきた丸戸氏が、丁寧に、且つ、優しく、書き上げる。そして、『暗』と『明』を交互に繋ぐことで、見事にこの欠落という点を補うことに成功した。
最初から、年下の少女に頭が上がらなくて。
ずっと、大人の僕が面倒ばかりかけてしまって。
時には怒りを買い、呆れられ、それでも見捨てられず、
叱ってくれて、励ましてくれて、ずっと待っててくれて。
何度も謝って、何度も恐縮して、何度も泣きそうになったけど、
そのたびに、笑われて、背中を叩かれて、もらい泣きされて。
【世界でいちばんNGな恋[◇◇ルート最終回]より抜選】
そう、……これは一人の駄目なリストラ男と……
責任感溢れる幼き少女の物語。
きっとそれは、
読めば心が温かくなる、
そんな物語になっているはず――。
◆ ◇
"恋"とは盲目のもの。
たとえそれが、世間一般では禁忌とされていたとしても、
最も愛されたいという欲望が沸き起こってしまっても、
恋することを知らない初初しさだったとしても、
愛するが故の苦渋の決断だったとしても、
きっとそれは、等しく恋なのであり、愛なのであると思う。
この作品には4つの恋があり、愛がある。
ただ、他の作品達と少し違うのは……
この恋……すべて何かが欠落しているのである。
『世界でいちばんNGな恋』
この題名、それを端的に示していると言える。
恋の欠落…。
不思議と胸に刺さるものを感じるのは何故だろう。
どこかしら、不安が生まれてしまうのは何故だろう。
答えは明白だ。
恋の欠落…
それは乃ち、幸せが実らないことと同義している。
恋や愛に欠落を持ちながらして、
永い時を以て、幸せを勝ち取ることなど不可能だ。
それがゲーム内でなかろうと、
終わり方が一時の幸せであろうと、
何処かで必ず挫折する……それは自明の理である。
では、この作品はどうなのであろうか?
私ははっきりと断言出来る。
彼女たちの恋……愛は、"幸せ"という実に成就したことだろう、と。
全ての立役者は、ライター丸戸氏によるものだ。
『暗』と『明』を交互に繋ぐことで、見事にこの欠落という点を補うことに成功した。
重く苦しい場面でも、それ自体が、幸せのための伏線であったりもする。
理「どん底まで落ち込んだら… 最後に…希望が残ってた」
【世界でいちばんNGな恋[最終回]より抜選】
きっと丸戸氏だからこそ、
この『NGな恋』を幸せに出来るのだと思う。
見事にライターの術中に嵌ってしまった、としか言い様がないものだ。
◆ ◇
『美都子』
『麻実』
彼女たちの恋を、そして愛を……。
二人ともに共通して同じものがあるように、譲れないものもある…。
似ているからこそ、
分かってしまうからこそ、
そう……だから『NGな恋』なのだ。
美都子「うるさいなぁうるさいなぁうるさいなぁ!
五年後だって愛してるよ! 100年後だって愛してるよ!
だから今でもいいじゃん! 好きなんだから仕方ないじゃん!」
【世界でいちばんNGな恋[◇◇ルート最終回]より抜選】
麻実「一生モノの恋なんて信じて、
それで結局壊れちゃったら…
どれだけ悲しいか、わかる?」
【世界でいちばんNGな恋[◇◇ルート最終回]より抜選】
苦しかった。
彼女たちの想いが、画面越しにまでも伝わってきた。
辛くて、もう止めたくて、だけど心は思い通りにいかなくて、
何度も恋を諦めようと、
相手の本当の幸せを思おうと、
だけど……恋してしまう、愛してしまう……。
きっとそれは仕方がないことなのだと思う。
理由なんていらない……そんなもの後からでも付け足すことが出来る。
だからこそ、二人の恋の行く末を目撃して欲しい。
もしかしたら、心打たれ、涙してしまうかもしれない。
ここまで言うのは過剰だろう、と思うかもしれない。
けれど……
今年一番の出来には間違いない……それは私なりの事実なのである。
-REVIEW END-
時の降る街。】【http://blue2matiger.blog96.fc2.com/
体験版レビューなどもしてるんで是非。