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TDRDさんのSWAN SONGの長文感想

ユーザー
TDRD
ゲーム
SWAN SONG
ブランド
Le.Chocolat
得点
97
参照数
831

一言コメント

僕たちは何があっても決して負けたりはしないって(号泣) あろえについての考えなど少し追記しました

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

初めて瀬戸口作品をプレイしました。信者にならざるを得ない。
文章センスが半端じゃないですね。媒体変わっても追いかけようと思える唯一のライターかもしれません。
筆力・センス・ユーモア共に備わっていて、かつ作品の根底に流れるものがとても好みです。


以下追記

皆大体同じだろうと具体的な感想を書いてなかったのですが、捉え方が違う方もたくさんいたので自分の感想も書いておこうかなと思います。

このゲームのキャッチコピーは「そのとき人は絶望に試される」なのですが、まさにこの話は絶望に直面したとき人はその絶望とどう向き合うかを書いています。それは大勢にとって大地震によるものですが、司は事故で右手の自由を失った瞬間から、この絶望と戦っています。

最後の教会であろえが見つかったとき、彼女はキリスト像を組み直していました。
ひばりはあろえについて、あろえは"なかま"がわからないのでは、という話をしていました。たしか犬とか猫とかそういう風に個々のものを属性で括って考えることができない。だから、頭の中が整理できずにぐちゃぐちゃで、おはじきを並べるなどものを整列させたり繰り返し同じことをしていると落ち着くのではないか。的な話だったかと思います。
つまり、あろえが壊れたものを組み直す行為は、頭の中のぐちゃぐちゃな世界に対抗して行っていることであり、生きるための戦いになります。諦めているなら、なにもしなければ良いのだから、あろえは戦いを選んでいるのです。
だから、司はこの像を素晴らしいと言ったのではないでしょうか。あろえは震災より根本的な問題で、ずっと1人で世界と戦っています。組み上がった像はその証です。

僕たちは何があっても 決して負けたりはしない

司にとってあろえは戦友です。あろえは決して突然流暢に喋ってコミュニケーションを取れるようにはならないし、司の手も元に戻ったりしません。でも、それでもあろえは像を組み立てるし、司はピアノがあればいいのにと言います。抗い続けること、諦めないこと、願うことはどんな絶望の淵でもできる。その意思だけは神様にも奪えない。
司は最後まで柚香を説得します。像を指して、どんなに間違えたって、取り返しがつかなくたって、生きることは素晴らしいと言います。
プレイ当時はここまで頭で言語化できてなかったと思いますが、このあたりはずっと号泣しながらプレイしてました。司は本気ですべての人の人生を肯定してるし、立ち上がることにエールを送っていました。司はすべての人間に期待していて、それが本当に眩しかった。
きっと柚香は司の言ってることが最後までわからなかったと思いますが、すべての人生は素晴らしい、生きろ、ということを司が本気で言ってたことだけは認めて、そして立ち上がって生きてくれればと思います。