正しく「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」
田舎町の甘美でノスタルジックなアンビエンスと、インセスト・タブーや部落差別等の、主人公に降りかかる不条理のグロテスクの同居が素晴らしい切なさを齎しており、非常に良かった。特に、桜Badはその極致であり、2人が桜の国に行ってしまったという結末は、神聖と陰鬱が掻き混ぜられた歪な美しさを放っており、ここ数年で1番心が揺さぶられた。可憐√も桜√も、不条理の解決は全くされず(だから不条理なのだが)、何とも言えない後味の悪さが絶妙である。その2つを踏まえた紅葉√は主人公の不条理の肯定とも言えるような内容でこちらも非常に良く、心地よいカタルシスの解放が味わえた。散髪のシーンは必見である。簡潔に言えば激甘。この時代のソフト故、ボイス無しであるがそれが逆に想像の余地を残しており、またその想像の営みも文章全体の瑞々しさにより満足に行うことが出来る。