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Suckerさんの長靴をはいたデコの長文感想

ユーザー
Sucker
ゲーム
長靴をはいたデコ
ブランド
LOST SCRIPT
得点
80
参照数
1518

一言コメント

人を選ぶ。感動よりユーモアを優先できないと合わないかも。坂とか。しかし大真面目に受け取ることも出来る。以下深読み

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

代喪木編の人物の名前がM×Sから採られてることと、代喪木編で出来た時間の経過しないマップ移動やシナリオの繰り返しがホスト編では出来ないこと、つまり代喪木編が循環するのにホスト編は直進しかしないことが、代喪木編が虚構だということを暗示している。また、ゲームブック風のシステムがこれを表すために一役買っている。代喪木編では何回も何回も同じパラグラフを体験させられるが、ホスト編は一度見たら跳ばせる、録画であって記憶であって回想である。

しかし、ホスト編も最後にホスト坂を出すことで結局車田作品のパロディ=虚構でしかないということをはっきりさせている。また、私たちは新しいセーブデータで何もアイテムを持たない状態から「長靴をはいたデコ」そのものの体験を繰り返すことが出来る。

このゲームの主題は劇中で聖夜が言ったように、虚構の世界の体験からでも人は成長できるのか、ということだが、この重複した繰り返し構造が、その主題に私たち自身を取り込もうとしている。

代喪木編は聖夜の頭の中のゲーム、ホスト編はパロディの継ぎ接ぎで出来た私たちのゲーム。

聖夜は虚構から成長の切欠を掴んだ。翻って私たちは?

いくつもいくつも、何度も何度もゲームを体験して、螺線から螺旋へ、私たちは階梯を上っているだろうか?