(感想再投稿)地味ですが、キャラ萌えゲームの1つの理想型では?
(前アカウント紛失により、2012年08月29日に投稿した感想の再投稿です)
ハニカム文庫シリーズの2作目です。ちなみに自分はこのシリーズは初めてでした。
ライターの保住圭さんはカップルが成立した後のいわゆる「イチャラブ」描写に定評のある人ですが、今作でもデートや初体験に至るまでのもどかしさ等がふんだんに描かれ、その長所が存分に発揮されていると思います。
のばらと聖の2人は家庭にややシリアスな設定を抱えており、恐らく普通のゲームならシナリオの終盤にこれが山として置かれるのではないかと思います。しかしあえてスルーして2人の描写に全力を注いでいることに好印象を持ちました。
そうしたカップル描写に重点を置きながら、各シナリオで攻略中のヒロイン以外のキャラがしっかりと話の本筋に絡んでくるのがよかったです。友人たちの中でひと組のカップルが成立したら、残された人はどうなるのか? という問題が、軽快ながらもなかなかしっかりと描かれていて感心しました。
このゲームのジャンル名は「うらやましいADV」ですが、ここにはプレイヤーが主人公とヒロインのカップルがいちゃつくのを見たときの「うらやましい」と、作中のキャラが同カップルを見たときの「うらやましい」という、二つの「うらやましい」がかかっているのですね。また「うらやましい」という感情そのものに対する考察のようなものも語られており、このテーマ設定と作中での実際の処理の仕方は巧みだと思います。
ただ、付き合うまでの過程がやや性急に感じたのは残念なところ(特に志乃)。ミドルプライスゆえ仕方ない部分かなとも思いますが……
ミヤスリサさんの原画は可愛らしく、グラフィックもきれいです。特にのばらのキャラデザインは、作中の主人公の言葉を借りると「『女の子』と『女』が同居している」もので魅力的でした。
忘れてはいけないのがHシーンの質の高さです。回数的には特筆して多いわけではありませんが、3人のヒロインごとのセクシャルな傾向というものがしっかりと考えられており、主人公が積極的なのもあって、並みの純愛ゲームのようにありきたりではない、とても濃いものに仕上がっています。
BGMは軽快で聞きやすいものが多いです。OPとEDが音楽モードに入っていないのが残念でした。システム面に大きな不満はありませんが、右下のセーブ・ロード・バックログのアイコンが似ていてちょっと見分けにくいです。
大傑作とか、すごいシナリオというわけではありませんが、キャラ萌えゲームとしての完成度は非常に高いレベルにあると思います。