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SiamShadeさんのフレラバ ~Friend to Lover~の長文感想

ユーザー
SiamShade
ゲーム
フレラバ ~Friend to Lover~
ブランド
SMEE
得点
93
参照数
1963

一言コメント

あっちが花穂ゲーなら、こっちは理奈ゲー?前作の期待が少ない人ほど楽しめる。

長文感想

○システムの話
・システムにクセがある。
最近のものとは違い、かったるい。
選択肢の数が、たぶん今まで遊んだゲームの中で一番多い。
もし続編なり、ファンディスクを作るのなら、選択肢の数と重要度を見直してほしい。
もしくは、FF12のガンビットみたいなものをつけてほしい。

かったるい対策として、
http://goo.gl/7JYJE
ネタバレはないので、こっちのインタビュー記事を先に読んでからプレイする事をオススメしたい。
ゲームコンセプトとプレイ方法が分かるので、遊びやすくなる。


実は個別ルートのイチャラブ度はラブラブルより高め。
同棲ラブラブルと同じくらいで、結婚が視野に……
主人公のおかん、キラーパスばかりでキャラ立ちまくり。
色々な場面でヒロインズの親が出てくるのだが、どいつもこいつもキャラが立っている。
かつてこんなに親が出てくるギャルゲーブランドがあっただろうか?
いいぞもっともっとやれ

そういえば、オーガストと同じ土台を使ったらしいが、MacTypeで文字化けしないのはありがたい。
かゆいところに手が届くまではいかないが、土台としてはこれで十分すぎる。


○キャラの話
・理奈ルートが一番楽しい。というか新しい。二人称は「あんた」、新鮮。

・絵面として、キャラクターをキッチリ4分割にしているのは、あんまり得策だとは思えない。
初期状態だと正面を向いていない岬が気になるが……

作りやすさという点では、メインキャラを立てない方がいいのかもしれないけど、遊びやすさという点ではメインキャラが立っていた方が遊びやすい。
ときメモですらメインキャラ立ってますし。どうせ面白ければ、サブでもなんでも全員やるし。
友達がテーマだと、岬とゆずゆが一段落ちる。
なんでもいいけど、ヒット作をみればだいたい表ヒロインと裏ヒロインがいる。
ヒット作のヒロインズは3人が多い。魔法少女とか軽音の方法だと主人公込みで5人。戦隊物形式。

4で割り切れるという絵面も好ましくない。(国旗で考えるとわかりやすいかも、印象に残りづらい)
はじめに北に行ってもいいし、南に行ってもいいし、東に行っても、西に行っても構わないと言われると困る。
とりえあず東に向かえとか言われた方が楽。
しかし、キャラクターの性格付けにはこの4分割が非常に有効機能している。行動原理が4人とも全く違う。
(プレイヤーがあんまり気にするところではないんだけどね)

・ついでにHシーンいらないから、綾部まひろと主人公おかんも攻略させてほしい。


○音楽の話
・前作の音楽の使い回しには、賛成。
やりすぎても困るが、こういう手抜きはもっとやっても良い。
SMEEのこういう合理的判断はとても頭がきれると思う。
版権問題も回避できるので、実はゲームらしい手法だとも思う。
・今回はサザエさんみたいな日常曲が一番良かった。

○絵の話
・好きな絵は、陽茉莉と岬の部屋。
生活感がでていて上手い。マンガ棚の位置とかがリアル。


※ 以下しばらく苦文がつづく ※

服装のデザインは女性がやったのだろうか?余分なデコレーションが目立つ。
(首元にアクセントを付けたがるのは女絵のクセ。男のキャラデザインと女のキャラデザインでVゾーンの処理が全く違う)

私服のセンスが全員同じなので、差別化には大失敗している。
ラウンドネックとかフリルとか膨らんだスリーブとかを多用しすぎ。
ぶっちゃけみなセンスが悪い。特に岬。あの3段止め金具はありえない。
全員右にならえで乳を協調した服ばっかし。そのわりに色気が無い。(正しくは乳しか女の色気を表現できていない)
夏が舞台なのに、Tシャツ姿が出てこない。流行傾向にあるレディースのポロシャツとかも出せばいいのに。
普段Tシャツしか着ないやつが、デートの時にドレスアップしてきたらギャップに萌えるだろう。

シルエット表現もワンパターンで上手くない。一人か二人くらいタイトシルエットをいれると際立つんだが…
(ラブラブルは花穂と奈々子がタイトシルエットで、他がルーズシルエットでそれなりにバランスが良かった。今作はルーズシルエットばっかし)
腰リボンとかも男じゃまずやらない。乳袋はあえてふれないでおこう。
しかし、なぜか腰回りだけは容赦なく絞る。
ワンピース系ばかりで、ツーピース構造は出てこない。謎?
どちらかと言えば樋上いたる系だが、中途半端感が否めない。ガッツが足りない!
(他が高いだけに)こういう部分のリアリティは不足している。
リアルかファンタジーかどっちかやりきった方が良い。
http://goo.gl/ksc8Q
まだここにいれてもらえるようなレベルには達していない。
(それにしても、オーガストの評価が高いなぁ。シルエット変態的に上手いからなぁ)
女物の下着とか、女物の靴とか、ガンプラとか男のほうが圧倒的に丁寧で緻密だからなぁ…

キャラに性格付けをする点ではとても凝っているのに、キャラごとの衣服にこだわりが感じられない点は残念。
例えば、見栄っ張りでめんどくさがり屋がブランドものをとか、長身でスタイルが良いが実は少女趣味とか、性格から服装こだわると萌えるのに
好みの色とか。

髪型はアクセサリー過剰なのはあまり好きではないが、毛先の処理が上手い。女の感性全開でナチュラル。
エロゲ特有の不自然な髪型も少ない。プラスチックみたいな髪型とか出てこない。髪の軽さも細さもうまく表現されている。
また岬の黒髪ロングの左右非対称カットは素晴らしい。こんな手があったのかと歓喜。
大変素晴らしいアイディアなので、そのうち誰かがパクるだろう。
全体的に髪が柔らかく描けている。

どうも今回は犬とか猫などの愛玩動物がモチーフのようなキャラデザイン。
野性味が不足しているので、Get wild and tough するといいかもしれない。

まあもはや、SMEEのゲームをキャラデザで選ぶ人はいないだろう。
次回作のキャラデザが福本伸行で、ヒロイン全員が美心みたいになっても買う。
かまいたちの夜みたいな影だけになっても買う。

さんざん服飾に不満を書き散らしたが、顔に表情をつけるのはとても上手い。バリエーション豊か。
驚き顔だけでも3種類くらいあるし、不安の顔や疑い顔なんかも別々にある。
SMEEはイベント画より立ち画のほうがいい。


さらにカバンの話。
オリジナルのカバンを描くのはどう考えても大変。出てこなくても大して困らない。
あの京アニですら学生カバン以外はめったに登場しない。
立ち画限定ならなんとかなるかもしれない。
(調べてみたら全キャラカバンを持っているが、言われないと気づかない。ゆずゆと理奈のハンドバックなんかはちょうどテキストウィンドウで隠れてる)
片腕がふさがっているというシチュエーションが萌えではある。

もっと蛇足。
チャリも難しすぎるんで、チャリ好き以外は描くのやめとけ。女にはあの複雑な構造を模写するのは無理。
例えば、理奈のチャリにはブレーキワイヤーはあるけど、ブレーキレバーがない。
ハブも変だし、スポークの編み方も摩訶不思議。どうやって走るのその乗り物?
サドルの位置もありえない位置ですけど、未来の乗り物ですか?
チャリがうまく描けてるのは、氷菓・アニメ版のシュタゲ・かもめチャンスとか。(どれもチャリ好きの職人がいたのだろう)
エロゲでやるのは自作行為!?
パンチラのシーンがいるんなら、2枚に分けとくほうがうまくいく。
ところでHOOKって自転車職人はいないし、パンツ職人もいない。おっぱい星人はいる。
このライターさんの事だから、パンチラそのものを描きたいのではなく、パンチラ後のリアクションを描きたいのだと思う。


ちなみに、画面切り替わる時に上がってくるアイキャッチみたいなのだけど、
rina mochiduki じゃなくて、rina mochizuki じゃないのか?
(こういうボケは別にいくらやっても構わないんだが、開発中に誰かツッコめ)


○2面性の話
・ラブラブルの時もそうだったが、早瀬ゆうさんはキャラクターの2面性を描くのがとても上手。
理奈の2面性がとても上手に演出されている。
おもわず「あるある」と頷く場面も出てくる。
絶対生物花穂とも違い、うまく描けてる。(類似点は探せば色々)
ちなみにどちらもコーチングの才能がある。

ヒロインが2面性キャラで、主人公はそれを手玉に取る構図が面白いし、業界的にも珍しい。
(主人公自身が2面性キャラ・ヒロインが2面性キャラで主人公が振り回される。この二つがほとんど)
主人公が理奈の2面性を洞察するセリフもすばらしい。
完全にライターの力量。

宅本うとさんが超2面性キャラなので、2面性のあるキャラの気持ちがわかるのかと勘ぐってしまう。
次回作は人間の2面性の描写が上手な事を活かして、土橋真二郎先生のような作品を作って頂けないものだろうか?OP-TICKET辺り。

ついでに沢渡岬は完全に宅本さんの趣味。柳瀬さつきとほとんど同一キャラ。富野や虚淵もよくこういうキャラを入れてくる。
理奈と正反対の生命力あふれるたくましいキャラ。若干美化傾向。
実はライターの早瀬さんは、このタイプのキャラを描くのが上手ではない。と感じる。
主人公の先行やおもりが上手く働かないし、反発もしない。そして命の危険に関わることがない限り基本的にニブイ。
ロリコン的な素質や、丈夫でタフな女を描くのが向いてないのかもしれない。
狙って描くのが上手いのは丸戸史明先生。なぜか主役におくことはないが、必要以上にキャラが立つ。


○物語の話
・個別ルートの終わりのほうがイイハナシで終わる。
とってつけたような展開でもなく、地味に伏線も効いてる。と思った。
ひたすらイチャついてるだけと見せかけても締めるところは締める。
いいセンスだと思う。


○イケメンの話
・例のごとく、主人公は超イケメン。
ここぞというときのフラグ建築には定評がある。
さらに磨きがかかったかもしれない。そげぶ。安心して進められる。
ホントの所、SMEEの顔はこのイケメン主人公だと思う。
(説得力のあるイケメン主人公ってムズカシイ)

・あと、須賀先桃がどうみてもイケメン。
しかし、1エピソード挟むだけで残念な人に早変わりしてしまった。
このあたりは、荒木飛呂彦級のセンス。

○感想
別に欠点を解消したからといって名作が生まれるわけではないので、SMEEはこのまま自由な発想でゲームを作り続けて欲しい。
ここは精度を高めるやり方より、自分たちが面白いと思ったやり方をマイペースにやり続ける方法の方が向いてる。
むしろ、叩かれても飽きられてもひたすらやりたい事をやり続けて欲しい。ジョジョや秋本治や本宮ひろ志のような感じ。
システム面で突っ込まれるのはもはやお約束。
ギャルゲーの文法に則ったまま、他社の誰もやらないような独自の手法で話が進められる。
黒澤明や手塚治虫もこういう独自の手法多く生み出した。小津安二郎や鳥山明のような緻密な手法ではない。

蛇足だが、SMEEのゲームはオーガストのゲームと正反対の仕上がり。
前に自分が書いた感想見て思った。

SMEEのゲームはボリュームを多く感じないのだが、中身が濃い。しかもやってるときはそのことに気がつかない。
あんまりこういうゲームを作れるところはない。

SMEE限定の褒め言葉だが、あいかわらず完クリしても達成感がない。
個人的にはインストール直後におまけがフルオープンでも気にならない。
クリア後のお楽しみ感もオーガストとは正反対。
お互い持ち味なのでどっちもいい。

*****追記*****
例の大量の選択肢の数だが、よくよく考えるとすごい。
あれだけの会話量を作ったのは素直に感嘆。
エロゲー・ギャルゲー数々あるけど、あれほどのバラエティに富んだ会話量を埋め込んだゲームは他にない。
(しかもほとんどゲーム進行に影響しない!要するにあってもなくなってもゲームの評価には影響しない)
特にオチやヤマがあるわけではないけど、圧倒的なボリュームである。まるでこち亀。
あんまりゲームとは関係ないところだけど、素晴らしい才能である。労力のムダ使い、ドン半金ドブとも言うけど・・・


いつか、SMEEの全シリーズのキャラが一つの街に集合するゲームを作ってほしい。できれば声優が生きているうちに。
仮にごちゃ混ぜオールスターものをやってもここはブレることはないだろう。