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SakuRambo_sonさんの約束の夏、まほろばの夢の長文感想

ユーザー
SakuRambo_son
ゲーム
約束の夏、まほろばの夢
ブランド
ういんどみる
得点
53
参照数
412

一言コメント

最高のヒロインに最低のシナリオ。書けもしない三角関係でヒロインを苦しめたライターは許されない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

キャラクターがぶっとんでいて日常シーンでの会話が楽しいのは大きな長所だが、お調子者のりんかをシリアスシーンでもお調子者のまま振る舞わせるのは下の下の策。
登場人物が頭のネジは外れつつも、全員善人であることがなんとも優等生的でつまらない。少なからずシリアスなシーンがあるシナリオでキャラクターの全員が全員他人のことを第一に考えるような善人だと、理想がすぎるというか。フィクションだから理想的であればいいというものでもないんだなと思わされた。

一人だけデレっデレの渚沙が圧倒的にかわいい。アホの子なのもポイント高い。後述するが、他ルートでもいい娘でかわいい。しかも体力のなさがギャグとしてもおもしろく、かわいい。
りんかは容姿から勝ち確かと思ったが、真剣な場面でもお調子者で他ルートではいらん娘で、あまり好きになれなかった。ギャグもできるメインヒロイン自体は高評価になりがちなのだし、事実共通ルートなどでのギャグ、特に巨乳ネタや美少女ネタなんかは好きだったのだが、ギャグしかできなかったのが敗因か。このルートで能力のことが明かされるのでどう考えてもルートブロックは必要だったと思う。前半は三角関係の話だったが、それは渚沙ルートで最初から最後まで取り扱っているテーマなので、こっちは巫女関係の話だけでよかったと思う。
陽鞠は並。おバカ。キャラクターとしてはおもしろいが、ヒロインとしての魅力にはならなかった。個別ルートのシナリオもこれまた並。
星里奈は見た目も大したことないのに受けの悪いクール系暴力ヒロインでは勝ち目は無かった。個別ルートもずっとこの関係のままでいたいから付き合わないというラブコメにおいて最もめんどくさくイライラする内容だったようなのでスキップさせてもらった。
歩さんとのシーンがないのは完全に失策。
いい子ちゃんで常識人的なツッコミしかできない主人公はつまらない。ノリのよさと現実味のある優しさがあればよかった。

りんかルートと渚沙ルートでどちらも三角関係が拗れる場面があり、それぞれルートの前半と後半で問題になる。
りんかルート後半は巫女や能力に関することでゲーム全体で最も重要なことなので、完全に三角関係は蛇足。ただし、巫女の目的が「友達を作りたい」というくだらないものであったこと、結局りんかがあの性格で何故友達が少なかったのか理由づけが為されていなかったことなどから、前半が蛇足になっても問題ないほど後半も微妙。
渚沙ルートでは前半の渚沙のアプローチがかわいすぎるために、後半の展開がよろしくないのが非常に残念。ただの萌えゲーなのに三角関係などわざわざ持ち込んで、それでいて萌えゲーであることを捨てずに軽めの三角関係にした結果、中途半端な姿勢が最低のシナリオを作り上げた。

渚沙ルート後半では、りんかが「涼太に告白して振られる」といういらんことをしようとしたのが全ての始まりであり、これさえ無ければ話は拗れなかった。これに対し、りんかルート前半では、渚沙が「涼太に告白して振られ」ようとした結果、三角関係についてはあっさり解決する。この違いはなんなのか?それはヒロインの行動にある。

渚沙ルートでのりんかは、告白をしようとはしたもののそれを渚沙にはっきりと伝えず、告白をするのかしないのかや振られるつもりだということを常にふざけた態度ではぐらかすばかりだった。告白して振られようと思ってる、などと伝えるのは恥ずかしかったというのも理解はできるが、終始ふざけた態度で明言を避けるものだからこちらとしては真面目に話せと言いたくなる。結果として渚沙はりんかの考えを知ることもなく暴走するはめに……完全に被害者である。渚沙かわいそう、ライター許さねぇ。
渚沙はかわいくて一途で健気で、これ以上ないヒロイン。それなのに別ルートヒロインであるりんかがいらんことをし、主人公は全く渚沙の気持ちを解さず一方的に優しさを押し付ける。
渚沙の目の前で振られて二人をくっつけようとかいらんこと以外の何物でもない。そんなことしなけりゃずっとなかよくやってけたんだぞ。

りんかルートでの渚沙は、はじめ身を引こうとするも気持ちが抑えられず、結局告白することに。りんかのように恥ずかしがったりせず始めから告白をして振られるつもりだと明言しているため、なんの誤解もないまますぐに問題は解決する。恋愛に対して臆病なのに、やるときはやれるいい娘。ほんとなんだったんだ渚沙ルートは。

ほんと、攻略ヒロインとは別のヒロインがいらんことするせいで攻略ヒロインとの仲がギクシャクするとかやめてくれんかな。三角関係のまま話は進まないし、かといって三角関係そのものを楽しめるほどドロドロしないし。
りんかに悪意がないってのがいかんよな。善意を否定することになるとは思わなかったけど、ことシナリオに関していえば、善意が結果的に事態を悪くするよりは初めから悪意を持って寝取りにきてくれた方がすっきりする。よかれと思って裏目にでるとか、胸糞悪いんだよ。
この手の萌えゲーにありがちなどうしてもメインキャラを悪者にしない風潮、見直すべきだと思う。そもそも萌えゲーに質の低いシリアスを入れなければいいんだけど。

それから渚沙ルートにおける主人公、渚沙の気持ちわかっていながらなんで度々りんかと二人で行動するん?渚沙のために、とか言いながら何も見えていない。
これがイベントシーンにも出てくるのだから致命的。渚沙の気持ちよくしてあげたいという気持ちを悉く無下にし続けるくせに、「渚沙にも気持ちよくなってもらいたい」という優しさをアピールし続ける。しかしそれは優しさに見せかけたエゴ、ずっと渚沙は尽くしたがっていたのに本編で尽くさせてもらえたの半シーンだけとか優しさとは程遠い。せっかくの最かわヒロインとのHシーンがこの体たらくなんだから萎えるってもん。

渚沙ルートは、りんか・主人公共に自分自身は(おそらくライターも)良かれと思ってやっていることが完全に渚沙の気持ちを無視した厚意の押し付けで、当然それは裏目に出て結果的に渚沙だけひたすらに追い込まれていく、という非常にかわいそうなルート。二人が、「渚沙はこうしてほしいはずだ」ではなく「渚沙はどうしてほしいんだろう?」という考えに至れれば回避できた悲劇。ライターが目先の優しさアピールに釣られて考えることを怠ったためにこのような事態になった。
シリアスを書く前提でシナリオ書いたんだろう、シナリオを書く中でそれをシリアスにすればこんなことにはならなかった。
ルート序盤は主人公にアプローチする渚沙がかわいくて仕方なかったのに、最終的にほぼスキップすることになったのは、どこからどう見てもライターの実力、あるいは考えの不足、渚沙をこんな目に遭わせたライターは決して許されない。

Hシーンは概ね良好。Hシーン前半の汚れが後半になると何故かきれいさっぱりなくなってしまうようなことがなかったのが個人的に高評価。
ただし、渚沙ルートで主人公に奉仕しようとする渚沙を主人公が頑なに拒み、一緒になどとのたまい続けて渚沙の気持ちをふいにしたことは許せない。
ヒロインとしてかわいかったのは圧倒的に渚沙だが、性に貪欲でエロかったのはりんか。主人公が大人しく渚沙に責められていればよかったのに……。

キャラ萌え、ギャグはいいがシリアスはさっぱりな萌えゲー。萌えゲーにおけるシリアスが如何に不要かを改めて知らしめてくれた一作。
いや、ちゃんとシリアスも盛り上がって納得できるようなものならいいんだけどね?原画に支えられてなんとかなったが、絵が良くなかったら絶対やらない。
渚沙はかわいすぎたしライターに酷い仕打ちされながらもほんとよくがんばった。