ErogameScape -エロゲー批評空間-

SakuRambo_sonさんのキミの瞳にヒットミーの長文感想

ユーザー
SakuRambo_son
ゲーム
キミの瞳にヒットミー
ブランド
戯画
得点
98
参照数
718

一言コメント

「やりたいこと」にひたむきな、明るく楽しい青春ゲー。笑って萌えられるドタバタコメディの至高。シェア部のみんなと、「楽しい」をシェアしよう。

長文感想

個性的なキャラクターたちによるぬるいドタバタコメディ。

変人ヒロインモノの多くは、主人公がひたすらツッこむばかりで無個性なマジメちゃんになりがち。しかしヒットミーはヒロインの中に一人塚端みこアポカリプスというごくごく「普通」なヒロインがいる。この塚端のおかげで主人公はツっこむだけでなく時にボケにも回ることができ、おもしろいキャラクターの一人として盛り上げてくれる。
ボケにボケをかぶせるし魔王様にも合わせていけるし、かと思えばいきなり黙ってみたり塚端と二人でツッコミに回ってみたり、「白い惑星」というとっておきのネタまで持っていてとにかく笑いへの対応力が高い。そのノリの良さゆえかメガネなのに周りに相当好かれているようで、中学時代には一人籠っている図書館に毎日友だちが押しかけるほどである。
察しの良さや程よいスケベさも十分で、全エロゲの主人公を担当してほしいぐらいの良委員長である。さすがメガネ。

もちろんヒロインも皆魅力的。

お笑い部・瞳はボケるときの沢澤砂羽さんの怪演が光る。ギャグやらせたらこの方の右に出る人はいないからな。相方として組みたいヒロイン。
個別ルートは薄めだけど。

素敵発見部改めポエム部の詩菜ちゃんはほわほわしててかわいい。
すべてを包み込んでくれそうな大きなおっぱいを持つだけあって包容力は伊達ではなく、膝枕してくれたり授乳手コキしてくれたりと母性溢れる天然娘である。ママになってほしいヒロイン。おっぱいはどうして、あそこまで人の心を掴むんだろう……
個別ルートは可もなく不可もない出来。主人公の文学部設定が一番役立っているのはこのルートかもしれない。

世界征服部の魔王様はその一際ぶっ飛んだ言動と実は登場人物の中で一番いい子なところとのギャップがおもしろい。
開幕直後にいきなり読み手をぐいっと引き込んでくる魔王力はさすが。
魔王城では大魔王の娘としての家庭的な側面も見ることができる。娘に欲しいヒロイン。
魔王であることに悩む個別のテーマ自体は悪くないものの、魔王をバカにされるという全体を通して唯一気分の悪いシーンがあるのが。



青春部・塚端は他3人と比べてシナリオの力の入り具合がまるで違う。まず個別の話数から違うし。
この作品の「本命」とも言える正妻キャラクター。
軽口を叩きながらもお互いを理解し合っている主人公との距離感は夫婦のそれであり、嫁にしたいヒロイン。

何年も前から主人公に憧れており、共通ルートの選択分岐などで思わせぶりな言動がちらほら出てくる。塚端の想いを知った後で2周目共通をプレイすると、その振る舞い一つ一つがまた違って見えて切なくなる。
あのとき手を伸ばせなかったけど何年も想い続けて、今では近くに立っていられるけどそれでももう一歩が踏み出せなくて、そんな意地っ張りで臆病な塚端が勇気を振り絞って気持ちを伝えてくるシーンには強く胸を打たれる。まさに青春。

普段はシェア部の濃いメンツに振り回されてばかりないじられ役の塚端であるが、青春を謳歌しようと踏み出した彼女の勇気は後輩たちにも伝わっており、同じく夢を追いかけて青春する彼女らに本心では慕われている。主人公の合格や後輩たちの幸せを一人で毎日祈る塚端の優しさが、周りから信頼される理由なのだろう。
人気者の委員長章に憧れた委員長塚端が、思い切って高校デビューしみんなに好かれる人間になれたんだと思うと、グッとくるものがある。

塚端が掲げた「青春部」という部活名は、ヒロインたちがやりたいことに全力になって突き進んでいくという青春まっしぐらな本作を象徴する言葉であり、彼女のストーリーこそヒットミーの真髄といえる。



サブヒロインの歩鳥ちゃんも塚端のように主人公と夫婦のような距離感で接してくる。塚端がどちらかというと主人公にいじられがちな嫁なのに対して、歩鳥ちゃんは主人公をいじってくる嫁。
塚端同様嫁にしたいぐらいめちゃくちゃかわいいのだが、PC版では何故か攻略できないバグがあるのでHシーンなしのCS版で我慢するしかない。





OP・ED・BGMは良曲揃い。どれも作品の楽しい雰囲気にぴったり合っている。
タイトル画面でも流れるBGMは聴くだけで元気になってくるし、瞳のマヌケなBGMは聴くだけで笑えてくる。





ドタバタコメディに笑いながら、青春を感じることのできる名作キャラゲー。
ヒロインズ&主人公でワイワイドタバタするのが楽しい作品であり、個別ルートでも他ヒロインがちゃんと出てくるので分岐後に楽しさが激減するようなこともない。
キャラ紹介、状況説明などが自然に会話中に織り込まれており、ギャグの流れを阻害せずテンポが良いのも楽しさを引き出しているポイント。
たくさんの「楽しい」をシェアしてくれる作品だった。





せーのっ、

君の瞳に〜、
ヒットミー!!!!!