「忠義」の物語
「忠義」を主軸にしたブレないストーリーが非常に良い。
主と臣下という関係性を大事にしており、クライマックスでも朱璃にしっかりと皇帝としての務めを果たさせた点が素晴らしい。
並の作品なら朱璃が国よりも愛情を優先し、ほんでもって愛情で奇跡なんぞを起こして大いにしらけさせてくれるのだが、この作品では皇帝として国を守ることを選択してくれる。ここまで国のために戦い続けてきたからこそ結末はこうでなくてはならない。
ただ、三種の神器関連はミツルギ以外のインパクトが弱く感じた。(ミツルギが強すぎて)
本編はほぼシリアスで通し、コメディやエロは余談に回しているのでテンポや緊張感を損なわない。
ルート分岐は途中下車式であり、個別ルートはメインルートからほんの少し分岐するのみでメインルートと分岐ルートの展開に大きな差がないこともあり「プレイヤーの選択で結果が変わる」ADVの良さには欠けていた部分もある。分岐後も本当に途中下車といった感じですぐ終わってしまい、実質メインルートが個別のような内容だから個別が短いというわけでもないのだが、短く感じてしまう人も多いだろう。
また、戦闘描写はlightなどのアクションADVを得意とするブランドと比較するとかなり薄い。悪くはないのだが、あっさり決着がつくように感じる場面は少なくない。
逆に他のブランドより遥かに優れている点は演出面。剣劇や爆発などのアニメーションに加え、立ち絵と背景を巧く利用した演出などが非常に多い。
大手でもここまで演出力の高いブランドはほぼ見たことがない。未プレイだがminoriあたりなら対抗できそうだろうか、思い当たるのはそのぐらいである。
世界観設定も秀逸。
刀で戦う「武人」たちが物語の中心であり、皇帝の存在や服装・街並みなども含めとても現代的ではない(歴史には詳しくないが明治辺りに近いのだろうか)のだが、共和国側の武器はマシンガンに爆撃機に完全に現代で、他にも車はもちろんテレビに携帯電話、果てはゲームまで、技術水準はまるで現代と変わらない。そんなちぐはぐなはずの世界観を見事に違和感なく一つに纏めている。
キャラクターもサブキャラクターに至るまで魅力的なものが揃う。
特に高潔に生きるエルザがかっこいい。
むっつりな奏海もHシーンのシチュエーションに魅力的なものが多く良い。ブラコンもキモいところまでには至らずいい塩梅。
サブヒロインにも余談でHシーンが用意してあり、睦美さんの母性を堪能できる。
敵キャラクターは小物などではなくどれも底知れなさがあり、一筋縄ではいかないため主人公側のかっこよさが際立つ。
そして何より魅力的なのが主人公の宗仁。
主への忠義にまっすぐなところが見ていて気持ちよく、ピンチに陥ったときは非常に頼もしい。
不器用な生き方など愛すべきところもある。
戦闘力が高く豆腐ギャグでも活躍できる性格のいい主人公、嫌いになるはずがない。
キャラクターそのものが魅力的なだけでなく、終盤に非戦闘員も含めほぼ全てのキャラクターにしっかり重要な出番があることなどからも、キャラクターを大切にしていることがよく窺える。
唯一店長のうなじだけはよくわからなかったが。
HCGはとても美しいが差分は少なめでテキストとの齟齬が発生していることも。
オーガストのエロゲを作る力が抜きん出ていることを実感できる傑作だった。
こんなに高い力持ってるんだからパッケージエロゲ もまた作ってください。