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SakuRambo_sonさんのすきま桜とうその都会の長文感想

ユーザー
SakuRambo_son
ゲーム
すきま桜とうその都会
ブランド
propeller
得点
85
参照数
166

一言コメント

やさしい「うそ」の物語

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

鈴ルートを除いては、キャラクター達による楽しい掛け合いの目立つ平和な日常シーンが主で、キービジュアルなどから受ける儚い印象よりはもっと笑いに寄った作品だった。プロローグ超えてからとかほんとくだらない会話ばっかで進むからね。それが心地良いんだけど。
そんな中にもいろいろと伏線が張られて、各ルートで回収しつつヒロインたちが何かを見つけて進んでいくのはシナリオゲーとしても読み応えがある。

そういったギャグやシリアスを支えているのは魅力的なキャラクターたちで、やさしいうそつきたちはみんなあたたかく、何気ない日常を見てるだけでも込み上げてくるものがある。彼ら彼女らの「うそ」に触れたときも、その重さに心を揺さぶられる。
が、政宗はじめ掘り下げが不十分なキャラクターが多いのも事実で、どれも明確にこういう「うそ」だ、というようなことが少なく、なんとなく匂わせるぐらいではっきりとさせないことも多い。

問題となるのはやっぱり鈴ルート終盤の急展開。鈴との廃墟生活はともかく、「奴ら」だのが出てきて唐突にメカバトルが始まってしまうのはさすがについていけない。
桜野についてもいっそ都会のすきまにある不思議な世界で終わらせてしまえばよかったのに、一度滅亡した人類の最後の希望である鈴の「内なる宇宙」から生まれた、みたいな超設定では反応に困る。いや、ほんとに人類滅亡は唐突すぎると思うんだ。
終盤で今までの物語を覆す超展開になるのは終バに通ずるものがある。

また、そういった世界の成り立ちについても、キャラクターの抱えているもの、心情などについても、比喩的で迂遠な表現を用いて名言を避けるきらいがあり、これを完成された状態でこちらに供給してほしい自分にはあまり嬉しくないところでもあった。

楽曲が強すぎで、OPED共に聴くだけで感動できるレベルなのでみんな聴こう。

咲良ルートは周りのみんなのあたたかさが心に沁みる良いルートだし、他の日常風景も楽しく非常に心地良い作品。
超展開は擁護しづらいが、それを除けばいい作品であることは間違いないだろう。